第218話
来た時と同じ船に乗り、来た時と同じようにメンタの葉を嚙み、歌を歌いながらシャンギーラを離れる。
それからは転移などは使わず、けれど一つの町に長居することもなく、町から町へと渡り歩いて帝都を目指す。
以前『ゴラーの物語』を読んだあの村にも寄った。
以前よりもずっとちゃんと家が建ち、畑があり、人々の顔に笑顔があった。
私たちが来たのを見ると、村の人たちはみんな駆け寄って歓迎してくれた。
今回は長居は出来ないけれど、二日だけ留まり、またみんなで本を読んだ。
読んだのは、『カラヴィン山脈縦断記』。
私もイヴとこのカラヴィン山脈を旅したことがあるのだと話すと、村のみんなから質問が飛ぶ。
「さっき読んでくれた天から垂らされた1本の糸っていう滝は見たことある?」
「虹の谷は?」
私とイヴも懐かしくなって、「滝は1本の糸って感じじゃなかったわよね」とか「虹の谷は私は行ったことないわ。だからいつか行ってみたいのよね」などと話は盛り上がる。
前回の旅では一緒に行かなかった専属たちもこの話は、面白そうに聞いていた。
二日経って、村を後にする。
今回はあまり手伝えなかったのに、前回同様村人みんなで私たちを見送ってくれた。
それからまた一日、また一日と帝都に向かって帰っていく。
道中はユリウスさんに言われた通り、
一度パラリと読んだことのある『魔物図鑑』にはやはり竜なんて魔物は載っていなかった。
教会はまだすべては読めていないが、各地の司教様が書いたと思われる日誌が見つかったので、今は暇暇にそれを読んでいる。
とりあえずその量が膨大なので、読むだけで随分と時間がかかりそうだ。
途中寄った町は行きと同様暗かった。
けれど、行きとは違うこともあった。
行きは何かくれと馬車を追いかけてきた子供たちがいたが、今回は追いかけられなかった。
行きと同様町はまだ暗く荒れていたが、子供たちは走り回って遊んでいた。
どの町も相変わらず暗くて、相変わらず活気がない。
でも走り回って遊ぶ子供たちを見て、少し、ほんの少しだけ前進しているような気がした。
「そもそも魔物って何なのかしら」
交代で見張りをしている時にぽつりとつぶやく。
魔物について調べると言っても、『魔物図鑑』で魔物の種類を調べるか、魔物の倒し方が載っている本を読むか、魔物を倒した時の体験記を読むか……それくらいしかなく、竜と魔物の関係を調べたい私には関係のない本ばかりが並んでいた。
「なんでしょうね。瘴気が多いところには魔物も多いそうですけど」
一緒に見張りをしているルカが答える。
瘴気か。
瘴気に関する本あるかな?
瘴気に関して調べたことはなかったなと思い、ライブラリアンの本を開き、瘴気をイメージする。
ペラペラペラとページがめくれ、文字が浮かぶ。
浮かんだタイトルはこの二つ。
『瘴気』『聖女マリアベル』
『聖女マリアベル』は読んだことがある。
マリアベル様は瘴気の多い場所を浄化したから、きっとそのエピソードがあるから載っているのだろう。
もう一つの『瘴気』という本は読んだことがない。
まずは、これから。
これから何か糸口が見つけられればいいなと思う。
◆作者からのお知らせ◆
いつもハートや星、応援コメントありがとうございます。
現在ライブラリアン3巻書籍化作業のラストスパートを迎えております。
なるべく間に合わせようと頑張っておりますが、現在ストックもないので、明日からお休みもしくは、毎日予約投稿している18時06分に間に合わない日があるかもしれません。
毎日楽しみにしてくださっている方には申し訳ありません。
私も書きたい気持ちはあるので、なるべく毎日できるよう頑張ります!
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