第206話
3人でシャンギーラ語を勉強しながら町から町へと旅をしてようやく港町についた。
ここからシャンギーラ行きの船が出ているという。
町の市場では、海街で売っている醤油や味噌、米も売っている。
もうシャンギーラはすぐそこだ。
夜、宿で久しぶりに
「イヴ
久しぶり。元気ですか。
今はどこを旅しているのでしょうか。
実は私も今、旅をしています。
覚えていますか。ドレイト領の孤児院にいたネイトを。
彼も一緒です。私の専属護衛になったんです。
明日はシャンギーラという国へ行く予定です。
旅をしているとイヴとアイリーンと旅していた時を思い出します。
懐かしくなってつい手紙を出してしまいました。
イヴの探し物が見つかりますように テルー」
イヴは、帝都に私を送り届けてすぐに何か探し物があると言って旅に出た。
離れがたかった私はすぐに
これがあれば、いつまでも繋がっていられるような気がして。
けれど実際に手紙を出したのは数えるほどしかない。
どう手紙を書いたらいいか悩んでいるうちに、1日、1日と時が過ぎていた。
帝都からシャンギーラへの旅の間に何度も以前の旅の事を思い出したので、旅の間に一通送ろうと決めていた。
明日はシャンギーラにわたる。つまり、この旅も一段落する。
だからその前に……と手紙を書いたのだ。
イヴは手紙に気が付くだろうか。
ずっと手紙を送っていなかったから、気が付くのは随分先かもしれないなと思いながらベッドにもぐりこんだ。
翌日は晴れだった。
シャンギーラにわたる船に乗せてもらい、大陸を離れる。
ドレイト領に帰省する時も船には乗ったが、シャンギーラ行きの船は随分揺れた。
酔ってぐったりしている私とアグネスを見て、船に乗せてくれた船乗りたちは笑いながら、メンタの葉をくれた。
船酔いにいいらしい。
メンタの葉を嚙む。口の中がすぅーっと爽やかになり、すっきり気持ちがいい。
「いっぱい話したり歌ったりするといいんだ」というアドバイスの後、船乗りの一人がお決まりらしい歌を口ずさむ。
ワンフレ―ズ口ずさんだだけで、他の船乗りたちもどんどん加わって、皆手を動かし、仕事をしながら大熱唱していた。
何度も何度も歌うので私たちもすっかり覚えてしまい、シャンギーラに到着するころには、船乗りたちと一緒に歌えるほど。
そして、本当にいつの間にか船酔いもなくなっていた。
陽気な船乗りたちに感謝して、下船する。
固い大地が懐かしい。
「テルー!」
聞きなれた声が耳に届いた。
声のした方に目を向ける。
「イヴ! シャンギーラにいたんですか?」
あまりの懐かしさに、私は人目も気にせず抱きついた。
「大きくなったわねぇ。昨日手紙を見てびっくりしたわ~」
イヴは抱きつく私の肩をポンとたたき、私の後ろにいるネイトとアグネスに目を向けた。
ネイトのことは先に手紙で話していたので、あの時のと感慨深そうにみつめ、アグネスには、はじめましてと挨拶をする。
とりあえず宿へということで、イヴの案内で港から続く大通りを突き進む。
シャンギーラの町は、建物の種類こそ違えど、雰囲気は海街をそのまま大きくしたようだった。
海街でよく見たとおり、通りに出された机には色とりどりの布が所狭しとおいてあるし、アンナさんの米屋のように、店先に大きな甕を置いている店も多い。
歩きながら話すのは、当然ながらこれまでのことだ。
ナリス学園に通い始めたこと、シャンギーラ出身のナオという友達ができたこと、海街に行ったこと、お店をようやく開店できたこと……。
イヴは、うんうんと頷き、時折「えー!」とか「すごいわねー!」と相槌を打ちながら私の話を聞いてくれる。
「で、それで? 旅に出たのは理由があるの?」
一通り聞いたイヴから質問が来る。
「竜が来たんです」
「竜……ですって?」
イヴの目が見開かれた。
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