第198話
魔法を使うために必要なのは、3ステップ。
魔力を感知し、魔力をコントロールし、イメージによって魔法を発現させる。
ならば、きっとできる。
そう信じて、ネイトとアグネスが買ってきたクアルソに魔力を込める。
イメージしているのは前世の携帯電話。
着信したら光って、相手も魔力を通せば通話できる……。そんな感じにできないかなと思いながら、付与をした。
ユリウスさんが作った魔導具をユリウスさんとあーでもない、こーでもないと議論しながら改善したからだろうか、それとも
私はいつの間にか付与の腕がまた上がったようだ。
クアルソは問題なく声を転移させる魔導具になった。
去年の夏は、トリフォニア王国の茶会に参加する時にマリウス兄様に受信、私は送信専用の通話の魔導具を作ったが、今回は双方向だ。
イメージ通り着信時には光るし、魔力を通すことで通話が可能になる。
ただ、帝都とシャンギーラの距離でも可能かはわからないけれど。
「すごいですね……。これってもっと作れるんですか?」
ルカがそう言うので、もう一つ作ってみた。
問題なく、私と通話できた。
私以外の誰か同士で話すようにするのはまだどうすればいいかわからないけれど、私となら何個でも通話がつなげそうだ。
多分、魔法陣ではなく私の感覚……私のスキルによって付与しているから私としか繋がらないのだろう。
本当は魔法陣で書けるようになればいいんだけれど、どこにも載っていないのだから仕方ない。
予想通り私のスキルが本を読めることと、転移、空間魔法だったとしたら、魔法陣がなくてもできるのでは? と思ってやってみたらできたというわけだ。
結局私と
まずネイトが欲しいと言い始め「私だって欲しいです」とアグネスも乗ってきた。
「サリーも欲しがるだろうな」とルカが言うのでサリーの分も作り、「ベティちゃん一人持ってなかったら悲しむのでは?」とアグネスが言うので結局専属5人全員分を作ったのだ。
残り二つはユリウスさん、アルフレッド様だ。
この二人の分はルカのアドバイスだ。
「ユリウスさんもアルフレッド様もとても尽力いただきました。帝都のことを聞くならこの二人が良いと思います。二人ともお嬢様が本を読むことだけでないことをよく知ってらっしゃいますしね」
私は魔力切れで倒れていたから話を聞いただけだが、私がここまで逃げられているのも、ルカと合流できたのも二人のおかげだ。
異論はない。
アグネスやネイトも「アルフレッド様にも……」と言っていたので、満場一致だ。
念のため
「はい、これ。サリーとベティ、ルカの分ね」
手渡したのは、三つのがま口の小物入れ。
空間魔法付きだ。
こちらも自分のポシェットを参考に、イメージしながら付与をしたら、容量は少ないながらも作れた。容量は馬車半分くらい。旅に必要なものを入れるには十分だと思う。
難なくできるようになったことを考えると、やはり転移と空間魔法もライブラリアンのスキルなのではないだろうか。
翌日は、アグネスに買ってきてもらったブローチに付与する。
これは絶対絶対必要だと思って作ったのは、空調の魔法陣。
もう何度も何度も使ってきた魔法陣だから手慣れたものだ。魔法陣なしで作れた。
ブローチでローブの前を止めれば、ローブの中は快適だ。
「わぁ、暖かい!」
早速アグネスが着て、歓声を上げる。
「お嬢様……本当に旅慣れて……というか旅を楽しんで……。いや良いことなんですが」
嬉々として旅に必要な装備を準備する私を見てルカが呆れたように言った。
アグネスはできたばかりのローブを着て、また買い出しに行った。
帰ってきたアグネスは紫と緑の紐を買ってきたようで、紫色の紐で
「上手ね」
「お嬢様は知りませんか。これはミサンガっていうんですよ。平民だと紐だけで作ります。貴族はこのように宝石を編みこんだりします。糸が切れると願いが叶うという願掛けのブレスレットです。でも、最近私は違うのではないかと思っているんです。これはきっと切れない方がいいんですよ」
切れたら願いが叶うのに、切れない方がいいってどういうことだろう。
「願いを込めて、編むだけで願いが叶うなんてことないじゃないですか。願いを叶えるためにはかなえようと行動しないとどうしようもない。だから、これは願いを忘れない為の物。これを見るたびに頑張ろうと思う為のものだと思うのです」
だから切れない方がいいのだとアグネスは言う。
願いと自分がまだ途切れていない証拠だから。諦めていない証拠だから。
そんなミサンガに
「それにこれは身につけて、すぐに連絡が取れるようにしておかないと意味がないと思いまして」
アグネスのロマンティックな解説に少し照れながら、それならばより一層切れない方がいいなと思って、アグネスが編んだ
アグネスの買ってきた紐は普通の紐だ。
適切な素材ではないから最高品質と言うわけではないけれど、これで多少攻撃されても弾いてくれるはずだ。
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