第171話【閑話】マリウス視点
馬車の中でネイトに話を聞いたところ、馬車乗り場でのいざこざはきっとテルミスを狙ったものだろうということだった。
ネイトが話さなかったので、僕も深くは問いかけず、静かにしているが怖がっているだろうテルミスをフォローする。
館に着き、テルミスを部屋にやる。
「まずは、ドレスを脱いで、今日の疲れをとっておいで。父様も帰ってきたら相談をしよう。今日は大変だったからね。あとで紅茶を持っていくよう言づけておくよ」
テルミスが部屋に戻り、僕も部屋に戻る。
さっとタイを緩め、ネイトを部屋に招く。
「で、詳しい話を」
「陛下と話されている途中で、テルミスお嬢様に話しかけた人がいたと思うのですが」
「あぁ、スキル狩り後に新たにトリフォニアに来た司教だ。トリフォニアに来る前はレペレンスにいたと聞いたが」
ネイトは身体強化を使って、遠くの人の声も聞こえる。
流石にすべての声を拾うことはできないので、テルミスの声を追い、何か異変があった時にすぐに気付けるようにしていたらしい。
「司教……ですか。だとすれば、ドレイトの教会から出て行った早馬は彼の所に行った可能性があります」
「何を聞いたんだ?」
ネイトは眉間にしわを寄せ、ぐっと拳を握りしめる。
「司教は、『報告にあった通りだった。本当にライブラリアンがいたとはな』と言っていました」
ドレイト領でもテルミスがスキル鑑定具で本を顕在させてから、目の色が変わったと聞いた。
普通ライブラリアンと聞いて、思うのは無能だということ。ただそれだけのはず。
無能なら嫌がらせなどがあったとしても、わざわざ手をかけようとも、欲しがろうともしないはず。
ならば、教会にとってライブラリアンは何か意味があるのか?
「そして言ったんです。『ライブラリアン。人の世にいてはならざる者』と」
「どういう意味だ! なんでそんなこと言われなくちゃならない!」
「わかりませんよ! でも聞こえたんです。俺もうあいつに怖い思いしてほしくない。だから早くこの国から出たいんだ」
ついカッとなって、声を荒げてしまった。
ネイトも反射的に昔の言葉遣いに戻って怒鳴り返してくる。
それでハッとした。ネイトの握りしめた拳から血が出ているのを。
「悪かった。テルミスにもう怖い思いをしてほしくないのは僕も一緒だ」
そういった時、カチャリとドアが開いた。
「そうですよ。そんな大声上げたらテルミスに聞こえます」
入ってきたのは、後から帰ってきた父様と母様だった。
父様たちに簡単に説明した後、母様はテルミスの様子を見に行き、父様と僕は今後の相談をする。
「話は分かった。私は今から陛下にお目通り願う。テルミスは今夜にでも帝国に立った方がいいだろう。マリウス、お前はどうする?」
「僕は……テルミスと行きます。良いでしょうか?」
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