第163話
ルークやザックのことを頭の中でぐるぐると考えつつ、毎日の予定をこなす。
メリンダが毎日スケジュールを管理してくれているのがありがたかった。
メリンダがいなかったら、今の私に出来ることはないというのにずっとずっとスキル狩りについて思い悩んでいたことだろう。
たまには悩んだっていい。だけど、悩みから這い上がれなくなったらだめだ。
動き続けることで何か答えが出ないかと私はいつも以上に真剣に取り組んだ。
そしてあっという間に3日が経ち、名残惜しくもドレイト領を後にした。
王都についたというので、私はワクワクしながら馬車の外を眺める。
初めての王都。
きっと華やかで楽しげなのだろうという私の予想は完全に外れてしまった。
道行く人の顔に笑顔はなく、なんだか全体的にどんよりとした感じがした。
兄様によると、今はまだ反乱後の騒めきが落ち着いていないのだとか。
特に王都の民は反乱を目の当たりにしたし、スキル狩りの被害者も群を抜いて多い。
だからこそ皆それぞれ思うことがあり、今はスキル平等をうたう派閥、スキル狩りはやりすぎとしながらもスキルに優劣があるとする派閥で火花が散っているらしい。
それは国政に携わる貴族間のみならず、王都に住む平民たちも同様だ。
意見のすれ違いから乱闘騒ぎになることも多く、今王都は少し荒れている。
そんな話を聞きながらタウンハウスへ向かうと、やはり父様から王都ではなるべく屋敷内で過ごすよう言われた。
王都に来て、二日。
家の中で過ごしているので私の毎日は変わらない。
流石に訓練所はないので、庭をネイトと一緒に走り、テカペルの練習をし、シャンギーラの本を読む。
もちろんスキルアップも頭の片隅で考えている。
そんな毎日が様変わりしたのは、一人の来客からだった。
「ヴィヴィアン先生! お久しぶりです」
やってきたのはドレイト領にいた頃ダンスを教えてくれていたヴィヴィアン先生だった。
なんと先生はルカの靴の大ファンであり、今や売れっ子のダンサーだった。
ダンスパーティで踊る社交ダンスから旅芸人が踊るような創作ダンスまで。
彼女のダンスのファンは多い。
そんな幅広いダンスをするのに欠かせないのが、足にピッタリの靴なのだと先生の方が私よりも余程熱く語ってくれた。
「テルミス様は今もダンスの練習されていますか?」
雑談の延長で聞かれたのは、私のダンスの進捗。
「しばらくは練習できていなかったのですが、最近また練習しています。靴の宣伝のため、クラティエ帝国でテカペルという難易度の高いダンスを踊ることになりまして」
そう言うと、先生もテカペルをご存じのようで深く頷いている。
「あの靴の良さを宣伝するのにテカペルはいい案ですね。しかし……テルミス様、難しくありませんか」
難しいと答える私に少し見せてみてという流れになり、そして……。
「ダメですわ! そんな足元ばかり見るダンスがありますか! テンポもまだ遅い。わかりました。私が明日からしっかりコーチします」
私のダンスの何かが先生のやる気に火をつけて、翌日から午前中みっちりヴィヴィアン先生の熱血指導が始まったのだった。
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