第155話

メリンダが呼びに来て、昼食を食べ、自室で午後は何をしようかと考える。

メリンダと一緒に考えた予定では午後は自由時間なのだ。

孤児院にも行きたいし、うーん。


コンコン。

ノックの音が聞こえ、ドアを開けるとマリウス兄様が立っていた。

「兄様! どうされたんですか」

「今は自由時間だろう? 庭の散歩行かないか?」

お庭! そういえば訓練所に行く時チラリと見えたのだけど、なんだか庭が様変わりしていた。

急いで訓練所に向かってたから、ちゃんと見てなかったんだ。

「是非! 行きたいです」


マリウス兄様とお庭に出ると以前とは全く違う庭に合うことになった。

以前はくねくねとした小道の先に池があり、東屋があったけれど、今は広々とした大きな道に、広いアーチがずらっと並んでいた。

「わぁ!」

白いブーゲンビリアがアーチに沿って咲き、上から白い花が垂れているし、道の両端、アーチの中央に置かれた大きな植木鉢にも黄色やピンク、白の花がこれでもかと咲き誇っている。

吸い込まれるように、アーチの中に歩を進めて行く。

上を見ても、下を見ても、前も後ろも花の咲き乱れる幻想的な空間だ。


「すごい……。前のお庭も自然な感じで好きだったけど、このお庭もとても綺麗」

「気に入った?」

「うん! とっても」


遠くにジョセフがみえた。

「ジョセフー! すごく素敵なお庭ね」

そう言うと、ジョセフは心底安心したように笑った。


皆で夕食を食べた後は、部屋でシャンギーラ語の勉強だ。

思いついて「シャンギーラ」で本を探してみる。

私がテキストとして使っているナオの作ったナリス語ガイドブックもあるし、辞書も見つけた。

他にも何冊も何冊も見つけ、驚いた。

こんなにたくさんシャンギーラ関連の本があったのだろうか。

最近は読める本がたくさんあって、その全てを追えていないから、最初からこれだけあったけれど見つけられていなかったのか、最近増えたのかわからない。

まだ全てを覚えたわけではないものの、ガイドブックは一通り読んだので、別の本を読んでみることにする。

タイトルを紙に写し、辞書を引きながら意味を調べる。

歴史など社会学関連の本は、単語が難しい。

ナリス語を勉強した後も、社会学に出てくる単語は難しかったもの。

だから社会学関連の本を避け、簡単そうな本を探して行く。


すると1冊神話の本を見つけた。神話なら分かるのではないだろうか。

トリフォニア王国もクラティエ帝国も元は同じトリム王国から別れている。

だからなのかトリフォニア王国もクラティエ帝国も神話や宗教は同じだ。

捉え方は若干違いがあるような気がするが……。

クラティエ帝国は年越しの際に、神の好物を飾るなど、神そのものを重視する習慣がある。一方のトリフォニア王国ではそういう習慣はない。代わりに神話上、神が与えたとされるスキルを重視する傾向だ。

聖魔法を使う聖女や四大魔法が有用で良いスキル。それ以外、とりわけライブラリアンは悪いスキル。

そういう見方が顕著なのがトリフォニア王国だ。

だから……だから、スキル狩りが起きちゃったんだよなぁ……。


シャンギーラはトリム王国ではなかったけれど、近隣国なので神話も似ているかもしれない。

そう思い、神話を見つけた時に、次に読む本は神話にしようと決めた。

まぁ、以前ナオが黒猫様が出てくると言っていたので興味があったというのもあるのだけど。


ペラリ。ページを捲る。

うっ! 辞書。神話もわからない単語多かった!

どれくらい自分の実力と離れているか知りたくて、しっかり訳せずペラペラとめくっていく。

よかった。児童書のようだ。

途中で出てきた黒猫の挿絵でホッと胸を撫で下ろす。

単語的にはわからないものもチラホラあったけれど、児童書なら文量は多くないはずだ。

よし、頑張るぞ。


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