第144話
「えっ? アルフレッド兄様、また討伐ですか?」
みんなでご飯を食べながら、兄様と来週の予定を話している。
先週、討伐から帰ってきたばかりだというのに、また来週から遠征だという。
「いや、今回は訓練だよ。魔物討伐の指揮の練習」
「指揮ですか? 兄様すごい!」
「アルフレッドは人気も高いし、年始の武道会は凄そうですねぇ」
バイロンさんが言う年始の武道会というのは、年始にある騎士団の腕を競う大会だ。
一般公開しているので、多くの人が見物にかけつける。
人気の騎士への声援もすごく、帝都名物の祭となっている。
ちなみに去年は、トリフォニアの反乱があったので兄様を含め多くの騎士が出場出来なかった為、例年と違う結果になり、それはそれですごい盛り上がりを見せてらしい。
優勝すれば一つ願いを述べることができるので、過去には身分違いの恋の成就を願った騎士もおり、優勝者が何を願うのかも注目の的だ。
「兄様武道会出場するんですか? なら、応援行きますね」
今まで武道会に興味がなく観戦したことなど無かったが、兄様が出場するなら別だ。次の武道会は絶対見に行こう。
「あぁ。是非見に来てくれ」
そう言って笑うアルフレッド兄様は、本当に武道会を楽しみにしているようだ。
騎士の仕事や大会の話をする時の兄様は、本当に生き生きしていて騎士の仕事が好きなんだなとわかる。
「テルミスは最近どうだ? ダンスの練習が始まったのだろう?」
「はい。テカペルを習っているのですが、なかなか難しいです」
テカペルとはクラティア帝国の前身ナリス王国から続く伝統のダンスだ。
トリフォニアで習ったダンスのようにパートナーと向き合いながら、ゆったりとした音楽にのって踊るダンスが帝国でも主流ではあるが、テカペルも根強い人気がある。
テカペルの特徴はそのテンポの速さとダイナミックな動きにある。
基本的にはパートナーと横並びになって、同じ振り付けを踊るのだが、この時の振りが足がもつれそうになる程早い。
そしてダンス中盤からは男性の手を取って女性が左から右、右から左とクルクルターンしながら移動したりする。
足にピッタリの靴をアピールするには絶好のダンスだが、運動音痴の私にはハードルの高いダンスだ。
「テカペルは速いからな。よし、この後少し練習に付き合うよ」
アルフレッド兄様は騎士団の寮に住んでいる。
だから我が家に来るのは基本的に週末だ。
だけどこの日練習に付き合ってくれた兄様は、私のダンスレベルに危機感を抱いたのかこの日から遠征のない日は平日も我が家に来てくれるようになった。
毎日夕食後にアルフレッド兄様とテカペルの練習。
もちろん身体強化を使いながらだが、リズム感がないからか足の動きに全くついていけない。
身体強化しているのに……。
身体強化しても、体の使い方がわかっていないと意味ないのだと実感した。
ちなみにこの兄様との練習には、なぜか観衆がいる。
私のドレスを作ってくれるはずのアーロンさんの助手ベティちゃんだ。
すごい眼力で私とアルフレッド兄様の動きを観察し、時折私たちの動きをノートに描写し、自分も動きを真似している。
パッと見た感じ私より上手そうだが、あれだけ熱心に観察しているということはアーロンさんドレスを作ってくれる気になったのだろうか。
ダンスの練習に、シャンギーラ語、スキルアップに商会の仕事などやることはたくさんで、私の日々はあっという間に過ぎ去っていく。
季節はいつの間にか夏へと変わっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます