第99話
パーティ会場では、もうみんな飲み物片手に楽しんでいた。
私が最後だったからか、私が到着後すぐにイライアス皇子が何やら挨拶をし、パーティが始まる。
「テルー!遅かったわね」
「最後だったのよ」
「どうりでね。
はい。ぶどうのジュースよ。
貴女はアルコール飲まないのでしょう?」
「うん。ありがとう。
ナオのはシャンパン?」
「そう。でもなんで?
なんで20までなの?」
前世の慣習をなんとなく守ってるだけなんだけど…それに子供の飲酒は体に良くない。
「身体が出来上がる前にお酒を飲むと体に毒なのよ。
以前そう書いてある本を読んで、そのままそれを守ってるの。」
「なるほどね…
じゃあ私もぶどうジュースにしようかしら。
シャンパンもワインも好きって訳でもないし」
「ふふふ。それがいいと思うわ。
はい。どうぞ。」
「じゃあ改めて、「試験お疲れ様!」」
「ウィスコット先生の試験思ってたより難しかったわ。」
「本当に!ちょっと魔力込めただけで天井まで行ってしまうし。
動かすだけでも、結構疲れたわ」
「最後の輪なんて本当穴が小さくて、何度も輪の前で上にあげたり、右に寄せたり…微調整が大変だった。」
「テルーあの最後の輪も通れたの?
すごいわね!
私も頑張ったけれどそこまで全然辿りつかなかったわ。」
「ありがとう。
通らなきゃ行けないと思って頑張ったの。
おかげで結構疲れたけどね。」
「ふふ。じゃあ頑張ったご褒美に甘いもの食べに行きましょ」
「うん!」
フルーツやクッキー、パウンドケーキが並ぶ。
ここにプリンがあったらなぁ。
「おい。
お前また貧乏平民のくせに目立つ成績取ったんじゃないだろうな」
「デニスさん。
いつもご忠告ありがとうございます。
でも、もう大丈夫です。
誰に何を言われても、私はちゃんとここを卒業しようと思います。」
「!!」
「で、そっちはどうなの?
テルーばかりじゃないわよ。
貴方も最近先生方からの評価がいいじゃない!
もうできない人のふりをするの…やめたの?」
「なっ!…はぁぁぁぁ。
だってかっこ悪いだろ。
こんなちっこいのが、嫌味を言われてもめげずに正々堂々頑張ってるのに、他の貴族の子に目をつけられたくないからって適当にできないふりしてるなんて。
だから、今回の試験はちゃんと本気で受けたよ。
君たちももちろん本気で受けたんだろ?
きっとみんな揃ってCクラス卒業だな。
その…いろいろ嫌なこと言って悪かったな。」
「いえ、実はナオと仲良くなってすぐに、ナオがデニスさんも私の心配して忠告しているのでは?と教えてくれてたんです。
それに、デニスさんは貧乏平民のくせにとは言ってましたが、偽聖女とは一度も言わなかった。
だから、私もデニスさんは勝手にいい人なのかと思っていました。」
「はぁぁぁぁ。なんだ知ってたのか。
かっこ悪いな。俺。
そうだったんだ…そんな前から。
本当にごめん。」
「貴方の態度わかりやすいのよ。
言いたくないですって感じで。」
「はい。本当すみませんでした。」
「あの、その、もう大丈夫です。
私は大丈夫ですから。
謝らないでください。
これからは仲良くしてくださいますか?」
「!もちろんだ。
ありがとう。
あまり大きな声では言えないけれど…Cクラスに君たち以外で仲良くしたい人がいなくて。
だから俺の方こそ仲良くしてくれると嬉しい。」
そう言えば、昔ナオも言ってたな。
私以外に仲良くしたい人がこのクラスにいないって。
その後試験がどうだったとか、建国祭で屋台を出すとか、そういうとりとめのない話を3人でしていると閉会宣言がされた。
こういうパーティの場に平民が長く残っていても変に絡まれるだけだと、閉会してすぐに私たちは帰路に就いた。
「それじゃあまたね」と挨拶をして。
いいな。「また」だって。
最初はどうなることかと思ったけれど、友達もできて、案外楽しい学園ライフだ。
学校に通うように勧めてくれたオスニエル殿下とアイリーンには感謝しないと。
家に戻った。
「テルーちゃん。おかえり。
試験お疲れさま。
で、お疲れのところ悪いんだけど、ニールが来てるよ。」
「バイロンさん。ただいま。
え?ニールさん!?」
急いで応接間に行くと、ニールさんともう1人。
「ニールさんお待たせして…」
え?なんで?どうしてここにいるの?
「アルフレッド…兄様?本物?」
「え?お兄様ってどういうこと?」
「ニールちょっと黙ってて。
久しぶり。
テルミス大きくなったね。」
「え?えええええ?
どうして、兄様がこちらに?
え?ニールさんと知り合い?
兄様もなんだか…私なんかよりもずっとずっと大きくなりましたね。」
兄様は最後に会ったときより目に見えて大きくなった。
10cm…いや20cmくらい背が伸びたのではないだろうか?
顔つきも何か…引き締まって、すっかり大人だ。
「あぁ、ニールとは一応友達なんだ。
身長もここ2年位で急に伸びてきたんだよ。
成長期ってやつかな。
そうそう。マリウスも結構大きくなってるぞ。」
「一応ってひどいなぁ~。」
「まぁあとでおいおい話すよ。
それにしてもよかった。
元気そうで。
マリウスから話は聞いてたんだけど、やっぱり聞くのと目にするのじゃ全然違う。
本当によかった。
学校はどうだ?」
「だいぶ慣れましたわ。
今まで結構勉強してきたと思ってたんですけど、学校にはまだ知らないことも沢山あって、友達もできて、今は学園に通えて本当に良かったと思っています。
来月末の建国祭は、友達と屋台も出すんですよ!
今はその準備を頑張ってるところなんです。」
「それは面白そうだな。
屋台と言うなら、食べものか?
テルミスは意外に食べ物への情熱が強いからな。」
「お兄様!もうっ食いしん坊みたいじゃないですか。」
「あ!その屋台の話、バイロンから聞いたよ?
名前は、花あられにしたんだって?
バイロンが食べだしたら止まらなくなるなんて言ってたから、僕も気になってたんだよね~。」
「あ、じゃあ試食します?
今度瓶に入れてお届けしましょうか。」
「本当!?嬉しいなぁ~。
じゃあ図々しいけど3つお願いできるかな?
殿下とアイリーン嬢にもつい話しちゃって…二人とも興味津々なんだよ~」
「そうなんですか?
あ、じゃあすぐ作れますから、今日持って行かれます?」
「いいの?
じゃあさ!今日この後テルーちゃんも一緒にアイリーン嬢のところに行く予定なんだけど、その時にテルーちゃんからのお土産ってことで渡しちゃいなよ。
お客も来てるからちょっと多めだと嬉しい。」
「え?アイリーンに会えるんですか?
是非差し入れさせてください!!
じゃあ、良かったらうちに上がって待たれませんか?
うちなら、料理しながらおしゃべりが出来るの。ふふふ。」
「じゃあお邪魔しよ「いや、ここで待ってるから作っておいで。」」
「兄様?」
久しぶりに会ったのに…もっと話したかったな。
家まで来てくれたら料理しながらでも話せたのに。
「あ~。そうだね。
あっちの話し合いももうすぐ終わるだろうし、長居せず向かわないと。
ここで待ってるから、花あられの準備と悪いけどこれに着替えてきてくれる?」
「…そうですね。
急いで作ってきます!」
家に戻って、普通のお餅、エビのお餅、海苔のお餅をありったけ切る。
良かった。
この前お餅買い足しておいてよかった。
油を温めて、一気に揚げる。
先日買ってきた目の細かい網の上に乗せ塩をかける。
冷ましている間に、ガサゴソ戸棚をあさる。
確かこの辺に…あった!
見つけた大きな瓶に一応
その後空調の魔法陣を付与して湿度を調整。
しけったら美味しくないものね!
揚げ物して、ちょっと油っぽくなった自分にも
これって…メイドの服かしら?
でも、なんで?
冷ました花あられを瓶に詰めてポシェットへ。
よし!よくわからないけど、これで完璧。
「お待たせしました。」
「それじゃ、行こうか。」
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