第63話 【閑話】マリウス視点
テルーからメッセージボックスをもらって2ヶ月。
僕は週に1度はメッセージを送ってる。
まだ返事は一度もない。
本当に送れているのだろうか?
確かめる術はないから、今日もまたテルーに手紙を書く。
箱にメッセージを入れようとして、いつもとの違いに気づく。
箱の中に紙が入っていたのだ!
返事?!
『マリウス兄様
久しぶりです。
イヴも私も元気です。
たくさん手紙を送ってくださってありがとう。
なかなか返事を書けなくてごめんなさい。
寂しくなってしまいそうで、なかなか箱を開ける勇気がなかったの。
でもこれからはちゃんと定期的に手紙を送るね!
もっとたくさん話したいことがあるの。』
あぁ。よかった。
手紙送れてたんだ。元気なのか。
それにしても名前がイヴリン姉様からイヴになっている。
仲良くやってるみたいだ。
さぁ、もっと首を長くしている父様と母様に手紙が来たと知らせないとな。
手紙を持って部屋を出ようとすると、箱が光った気がした。
すぐに箱に戻り、確認してみると…2通目がきていた。
『少し前、初めてモースリーを倒しました。
と言っても、倒した直後に私も眠ってしまいましたが…
マリウス兄様と攻撃を当てる練習してたおかげです。
イヴは有名な冒険者と聞いていましたが、本当にびっくりするほど強いのです。
あっという間に倒してしまうのだから、きっとマリウス兄様もみたらびっくりしますよ!』
モースリー?!
モースリーと言えば鱗粉に眠らせる成分があり、それで敵を眠らせ、他の魔物が眠った敵を食べ、その残りの死体に卵を産みつける…そんな魔物じゃなかったか?
まだ魔物と戦ったことがない僕も、魔物の知識だけならあるのだ。
モースリー相手に眠ってるじゃないか!大丈夫なのか?
いや、手紙が来ているから大丈夫だったのだろう。
返信がないと心配していたが…手紙が来たら来たで心配しかないな。
夕食後の父様と母様を誘い、お茶を飲む。
「今日やっとテルミスから手紙がきたよ。」
「まぁ!よかった!無事だったのね!
なんと言ってるの?」
まずは父様に手紙を見せる。
「なに!?モースリーだと!
まだテルミスは子どもだというのに、危ない!
手紙が来たということはイヴリンさんが守ってくれたか。
よかった。頼んで正解だった…
それにしてもイヴ…とは、随分仲良くなったようだな…」
「あらまぁ!ふふふ。よかった。
なんだか楽しそうにやってるじゃない?」
「出発して2ヶ月…もう少ししたらウォービーズも時折現れる時期だ。
気をつけるように言わねば。」
さらさらと手紙を書く父様。
きっと手紙を書くだろうと思っていたから、メッセージボックスも持ってきてある。
その箱が…また光った。
「今光ったわね?手紙が来たってこと?」
箱を開けると3通目だった。
少し小さめの文字で綴ってある。
裏にもびっしりだ。
『今日はイヴが狩ってきてくれたお肉の香草焼きとトマトのスープを食べました。
イヴはお料理が苦手なようで、私がお料理当番なのです!
少し前にナランハがなっている木を見つけ、たくさん収穫したのでナランハジャムを作ったのですが、食後にこのジャムをお湯にとかしたり、紅茶に入れて飲むのが最近の楽しみです。
誕生日のお祝いカードありがとう。
とても嬉しかったです。
出発して新しい環境に必死ですっかり忘れていました。
誕生日と知ったイヴが明日お祝いしてくれるようです。
あとアルフレッド兄様にもらったクロスアーマーにアラクネの糸で結界魔法陣を刺繍しました。
昨日やっと出来上がったのですよ。
これでモースリーも怖くありません!
アルフレッド兄様に改めてお礼を伝えてくださると嬉しいです。
また連絡します。
お身体に気をつけて。
テルミス』
「テルミスはいつの間に料理ができるようになったのだ?
屋敷ではしてなかっただろう?
いやまて、結界…
結界って聖女…?え?
なぁ、マティス…お前結界張れるか?」
「いえ…私程度の聖魔法使いでは結界は…無理ですわ。
それこそ聖女様クラスにならないと…」
……
「マリウス…お前は少しテルミスに魔法習っていたな。
俺にも少し教えてくれないか。」
「父様に僕が!?」
「そう驚くことないだろう?
魔法のセンスは俺よりお前の方がいいし、俺は魔法陣を使う魔法の使い方を知らないからな。
よくわからんが、テルミスを見ていると魔法陣を使う魔法の方ができることが広がる気がする。
俺の方で魔法陣に関する書物がないか調べておこう。」
この日はウォービーズに気をつけること、魔物の特性を学ぶこと、早速こっちでもナランハを取り寄せてジャムを紅茶に入れて楽しんでいることを手紙に書いた。
それにしても…僕はこのカード1枚送るだけでとっても疲れるのだが…時間差があったとはいえ今日は3枚届いたな。
僕だって頑張れば2枚は送れるが…3枚はできるか自信がない。
またテルミス魔力量増えたんじゃないか?
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