第33話

新スケジュールが始まって、ほぼ毎日魔法陣を使って魔法を練習してきた。

訓練場で土壁をつくったり、的に向かって水を放水したりした。(まだ当たらないか、的周辺が水だらけになった。)

1日だけだが部屋で魔法の本を読みつつ魔力操作だけの日もあった。

そうやって5日間やってきて思ったのは、イメージ力、集中力が大事なのはもちろんだが、自分の魔力を素早く、スムーズに、そして正確に扱えることが大事だということ。

実は、的とする木の周囲に土壁を巡らせるのは思いのほか難しかったので、翌日は部屋の中で魔力操作ばかりしていたのだ。

そのさらに翌日はかなりスムーズに土壁ができた。

やっぱり魔力操作の訓練は大事だ。

魔法を勉強し始めた去年からずっとやっている魔力操作。

だからだいぶスムーズに扱えると思っていたのだが、今までやっていたのは、自分の体を魔力巡回すること、自身を包むように球状に魔力を整え、その大きさを出来る限り大きくしたり、意図する大きさにとどめたり、それを一定時間維持しようとしたり、何かしながら(主に読書をしながら)でもできるようにしたり・・・

あ、あと逆に体の中心にある魔力の源のような球体に押し込めようとしてみたりもしたね。

これは、なかなか難しかったから完璧にできるようになるまで時間がかかったし、できるようになってしばらく続けていると、器が少し大きくなったような気がしたので、魔法の訓練をするとき以外はずっと押し込めたままにしている。

つまり、体の中を魔力巡回と魔力を押し込めること以外は、自分を覆う球体状の魔力を大きくしたり小さくしたりしていただけなのだ。

何かの形を作ろうとしたこともないし、何かに向かって魔力を放出させたこともない。

これからの魔力操作は、そういう細かな点を鍛えていかないと、実際に魔法を発現させても使えないだろう。

はぁ〜。やっぱり1年以上魔力感知、操作の訓練を重ねても、まだまだできないことばかりなのは、やはり…このスキルが魔法に向いていないからではないだろうか…はぁ。

マリウス兄さまが魔法で苦労しているところなんて見たことないもの。

お兄様は何でもできるからすごいなぁ。

羨まし…い

・・・

やめやめ!ぐちぐち言っても仕方ない。

本を読むしか能がないライブラリアンが、魔法陣のおかげとは言え魔法が使えるんだもの!

1歩前進、2歩前進と思わなきゃね。

よし、じゃあ今日の訓練始めよう。

まずは…球状ではなく、手からだけ魔力を放出できるようにしてみよう。

いつものように魔力を開放する。

そして球状に広がっていく魔力を自分の体の内側に押し込めていく。

あ、手の魔力も閉じ込めてしまった。

むむむ。

手首から先だけドアを開けるように、ゆっくりゆっくり開放していく。

じわ、じわじわっと手の表面に魔力が揺らめく。

やった!

もう少し多く。

もう少し多く。

よし。

あっちの壁に向かって、行ってー!!!

手から壁に向かって魔力が放たれる。

が、もう少しのところで汗が流れる。

一瞬意識がそっちに持っていかれる。

体表を出ないように全身にぐっと詰め込まれた魔力が一気に離散する。

ふー、はー、ふー、ふー。はぁっはぁ。

壁には届かなかったけど、できた。

前世で言う〇めはめ波みたいね。ふふふ。

その後2,3回やってみて、私の魔力はほぼすっからかんになった。

チャイを飲み、ベッドに転がる。

少し回復したところで、軽く魔力循環をし、スキルを使って本を読む。

これは魔法の訓練を始めた時からの習慣だ。

夢中になって魔力切れギリギリまで訓練して、チャイとほんの少しの休息で少し魔力を回復させたら、ベッドで横になってゴロゴロだらだらしながら魔法の本を読む。

本を読む前に魔力循環をするのは、その方がなんだかすっきりするからだ。

魔力感知が出来るようになって、完璧に魔力が無くなるまで訓練することはなくなったためか、訓練で魔力操作が上達したためか、魔力の回復スピードが上がったような気がする。

魔力不足で寝込むこともなくなり、思う存分本も読め、いいことづくめ。

これだけでも魔法の勉強してよかったなと思う。

ふと手元に出した本に目を落とす。

「え!!」

手元の本が大きくなっていた。

今までは文庫サイズの本だったが、単行本ほどの大きさにスキルアップしていた。

当然読める本もまた増えた。

最初は10冊しか読めない簡素なノート程度だったのに。

少しは成長してるのかな?ふふふふふふふ。

地理の勉強を始めたからか、地図や山、川に関する本、さらには土壌や天候についての本も追加されていた。

魔法関連の本も今まで魔法陣について書かれた本は基本の1冊しかなかったが、『初級土魔法!』とか『暮らしが変わる!生活魔法』とか魔法陣の載ってる本が増えた。

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