第30話
翌日は初のダンスレッスン。
ちょっと楽しみだったのは、お兄様も一緒だということ。
高位貴族は幼い頃からみっちり仕込まれ、その後も錆びつかないよう定期的にレッスンを受けるらしいが田舎の男爵家などはデビュタント1、2年前に習得するのが一般的。
恥にならないレベルで踊れたらOKなのだ。
だから私もお店を始めようとしなければお兄様と同じ10歳…もしくは11歳で習えばよかった。
それが3年も早まって正直大変だけど、お兄様と一緒なのは嬉しい。
まずは姿勢の矯正が入り、基本のステップを習って、お兄様と向き合ってステップを踏む。
まだまだダンスというには程遠いが、それでも難しい。
「テルミス様!笑顔です。
下を向かずに。よく音楽を聴いてくださいまし!
ワン、ツー、スリー。ワン、ツー、スリー!」
「マリウス様はステップお上手です!
あとはもっと肩の力を抜いて、歩幅はもっと狭く。
テルミス様をよく見て。それとなく観察してください。
歩幅が大きいとテルミス様が振り回されるようになってしまいますわ!
よく観察して、お相手が踊りやすくリードするのも紳士の仕事ですわよ。
あと笑顔!余裕を見せてレディに安心感を与えてください!」
お兄様は普段から剣の訓練をしていたり、乗馬をしていたり何かと身体を動かしているからなのか、小さい時はアルフレッド兄様とよく庭で走り回って遊んでいたからかコツを掴むのが早い。
リズム感も良さそうだ。
その証拠に私もお兄様も初めてのダンスだと言うのに、お兄様は細かな注意しかされないが、私は基礎的なリズムを注意され続けている。
走り始めたの数日前からだもんね。
それまで、本ばかり読んでたんだもの。
仕方ない…よね!?
仕方ないよと言ってもらえたところで、ダンスしなくてもいいことにはならないんだけど…
より一層頑張るしかないわけだけども…
とほほー。
「テルミス大丈夫か?」
レッスンが終わる頃、私はもう一歩も動けないほど疲れていた。
「だい…はぁはぁ…じょうぶ…はっはぁ、はぁー。ふー。
ちょっと…ふー…疲れただけ。
はーふー。お兄様はダンスもお上手そうですわね!
私が足を引っ張ってしまって…」
「テルミスはダンス以前に体力の無さが課題だな。
まぁ、7歳だし仕方ないことだよ。
テルミスは本当によく頑張ってる。」
そう言ってお兄様は一瞬顔を顰めたかと思うと、頭をぽんぽんと叩いて行った。
**********
「いっ!いたっ!」
久しぶりのヒールにやられた。
久しぶり…というか前世ぶりか。
大体…サイズは合っているけれど、ワイズが全くあってない。
だから足が前滑りして、つま先が圧迫されるし、踵はぶかぶかになるのだ。
今はメリンダが踵や小指の付け根部分にできた靴擦れを処置してくれている。
ちゃんとワイズのあった靴を買わなきゃ……
ワイズの概念って…この世界あるのかな?
靴探し難航しそうだなぁ…はぁ。
ダンスを終えてヘロヘロながら、魔法を練習するため訓練所へ。
まずは土の魔法陣を思いのままに操れることを目指してみようと思う。
まずは土壁。
高さを意識して腰高になるようイメージして作る。
できた!
次は自分の背丈くらいに…できた!
おぉ。意外と簡単にできるのね。
楽しい♪
そして、作った土壁を崩して整地も…できた。
そのあと自分を囲むように円状の土壁を作ったり、訓練所にあった木の周りに土壁を作ったりした。
できたけど、他者の周り…すなわち今回だと木の周りに魔法を展開するのはちょっと難しかった。
隣に立っていればなんとかできた。
けれど自分の周りに壁を作る時と違い、円の中心に木はなかった。
自分の周りに土壁を作った時は、円の中心が自分だったんだけどな。
これは私と木が離れれば離れるほど難しく、1メートルほど離れると円内にすら入らなくなった。
そして比較的近くにいても、目を瞑るとやっぱりできない。
距離のある対象物に魔法を飛ばすってなかなか難しいだろうけど、使えたら便利よね。
それに結局魔法は、魔力操作とイメージが大事なのだと体感した。
遠くの木まで上手く魔法が発動しないのは、遠くへ魔力を飛ばしたことがなく、かつ木までどれだけの距離なのかしっかりイメージできてなかったからだ。
他の場所に魔法を飛ばす練習は今後もやっていこう。
その後はいろんな形に変えられるのかと土壁の厚さを色々と変えてみたり、球体を作ってみたり、星形のオブジェを作ろうと挑戦してみたりした。
土壁の厚さは問題なかったが、球体は泥団子レベルからバスケットボールレベルまでできた。
星形は…うん。まだ要練習だ。
そうこうしていたらゼポット様が通りかかった。
世間話ついでに魔法陣での魔法を披露すると、ゼポット様は魔法陣を凝視した。
「昔このマークに似たのを見たことがあった。
なんのマークじゃろうと思っておったが…そうか、魔法陣だったんか。」
「魔法陣を見たことあるのですか?珍しいですよね!?
魔法陣は今からうんと昔に廃れたと本で読みましたが。」
「爺さんがいつもネックレスをつけておったのじゃ。
デザインは無骨で、石自体もあまり研磨されておらず、キラキラしとらんかった。
その石に刻印されとったんじゃ。
爺さんも形見じゃと言って首から下げとっただけじゃから、それが魔法陣とはわからんかっただろうのぉ」
魔法陣付きアクセサリー…
それならいつも身につけられて、いつでも魔法を発動できる。
考えたことなかった。盲点!
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