第28話

少し休憩を挟んで、次は勉強の時間。

去年は文字を読むことと算術ばかりしてたけれど今年は地理、歴史を中心に学ぶつもりだ。

というのも、今年から始まったマナー講義の目標のせいである。

今年の年間目標は、服飾関係のマナー事項(パートナーと色味を合わせる、パーティ毎にどれくらいの肌の露出が許されているかとかそういう基本的なこと以外にもどの色が自分には似合うのか、ドレスや髪型のデザインによってどのような印象を残すかなどと言った自己プロデュース力、そして宝石の目利きも含まれる)を覚えることと貴族年鑑を元に国内の貴族の情報を頭に入れるというのがあるのだ。

護身術の時は、これくらい簡単なのでは?と侮ってしまったけれど、マナーに関してはスパルタでは?と思わざるを得ない。

服飾関係のマナー講義に関しては、何をどうやって学べばいいのか皆目わからないので週1のレッスンでなんとかものにするしかないが、貴族の情報を頭に入れることは自主学習でもできるはずだ。

あらかた覚えていれば、週1のレッスン時に貴族関係の勉強に割く時間を短縮して、その分ドレスの話ができるはず。

ドレス関連は本当に自信がないのでなるべくそっちに時間を割きたいのだ。

さて、貴族の大半は昔から脈々と血筋を守ってきた家であるし、有力貴族の多くは領地を持っている。

ということで、いつかは手をつけなければ…と思っていた地理と歴史を学びつつ、貴族の名前を覚えようという魂胆なのだ。

ウォーミングアップがてら算術ドリルを15分ほど解いて、さて今日は地理からだ!

トリフォニア王国は大陸の半島にあるどちらかと言えば小さな国だ。

半島の中心部に王都があり、王都西側は北からベッケンス伯爵領、マイリス伯爵領と中領地が続き、マイリス伯爵領以南の半島の先端部分はウルマニア公爵領となっている。

王都北は、大陸側に控えるレペレンス王国との国境を守るのはメンティア侯爵領とヴィローザ侯爵領だ。

王都東部はというと、半島と大陸との境から半島先端にあるウルマニア公爵領までの海岸沿いを全てベントゥラ辺境伯爵が担っている。

領土の広さで言えば一番の広さだが、大国クラティエ帝国と山や海を隔てて接するこの地を守れるのは、辺境伯くらいなのだとか。

海では艦隊を率いて、山では騎馬隊を巧みに使い領地を守っている。

この広大な辺境伯爵領と王都の間にあるのが、有象無象の男爵領郡である。

もちろんここドレイト男爵領もその一つ。

王都には近いが、山が多いことと、圧倒的に領土が狭いのでどの男爵領も突出して栄えてはいない。

王都から近いが田舎の領地なのだ。

ベッケンス伯爵…マイリス伯爵…

借りた地図を見ながらまずは領地持ち貴族を覚えようと思ったが、会ったこともない人を覚えるのは難しい。

うーむ。

これは覚えるまで何度も見直した方が…!!!

そうだわ!次の刺繍は地図を刺してみましょう!

毎日図案を刺していたら嫌でも頭に入るはず。

そうなれば、今日は下絵作りね!

何を覚えたらいいかしら?

マナーの一環で貴族名を覚えると言っても、きっとただ名前だけ覚えればいいわけではないはず。

地図上には領地名、領境を入れるのはもちろんとして…山や川も入れましょうか。

うんうん。いい感じ。

特産品も入れようかと思ったけれど、それなら薬草分布も入れたいし…と情報過多になりそうだったので自重した。

それに大作すぎるとなかなか作り終わらないし。

実際に針を進めるのは明日から。

今日は大きな下絵と貴族年鑑を参照しながら、まずは公爵、侯爵の名前を覚えることにした。

…多すぎない?

覚えられるかしら?

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