第27話
ゼポット様との初めての護身術訓練は、精神的にも体力的にもかなりきつかった。
何度も人生最大の恐怖を味わったのだ。
疲れてしまっても仕方ないと思う。
むしろ寝込まなかった私を褒めたい。
疲れ切った私は、ランチを部屋で食べることにした。
心と体が疲れすぎて食欲は湧かない。
温かなスープと少しのパンしか喉を通らなかった。
食事が終わる頃マリウス兄様がきた。
「今日から護身術だろう?
どうだったかい?」
「全然ダメでしたわ。
怖くて動けなかったのです。」
話しながらレベル5の殺気を思い出してしまい、びくりと震える。
マリウス兄様は一瞬苦悩の表情を浮かべたが、私のそばに寄って安心させるように背中を撫でてくれる。
「テルミスはよく頑張っているな。
必要なこととはいえ、怖かったろう。
よく頑張ったな」
マリウス兄様に背中をなでられ、頑張ったと褒められたのは、未だ恐怖が残っていた私の心にストンと落ちてきて、心が温かくなった。
その後マリウス兄様の家庭教師の方が来られ、マリウス兄様は心配そうにしながら戻って行った。
さて、元気が少し出た私は魔法の訓練だ。
怖かったからと言って、初日からスケジュールを崩すと私の性格上どんどん甘えや怠け癖が出てしまうのだ。
前回は風の基礎魔法陣を発動させてみた。
ただのそよ風だった。
そのあと何度も流す魔力量を変えてみて、ただ風を起こすという基礎魔法はある程度モノにしたと思う。
次は水かな?と私はまた寸分の狂いなく描けるように水の基礎魔法陣を描く練習をする。
書いて、書いて、12枚目で満足できる仕上がりになった。
さぁ、やってみましょうと思ったけれど、ここは私の部屋。
ずぶ濡れになるのは困る…
メリンダが訓練所が空いているか見てきてくれる。
その間、私は地と火の基礎魔法陣を書く練習だ。
空いていたので、水、地、火の魔法陣を持って訓練所へ。
まずは地をしてみよう。
少しだけ魔力を流す。
「
土がぽこっと盛り上がる。
少し多めに流す。
「
自分の前に土の山ができる。
おぉ!できた!
せっかく土の山ができたから、山に向かって火を出してみる。
「
でたー!
水も出してみる。
「
でたー!
けれども…単に土が盛り上がる、火が出る、水が出るじゃ使い勝手悪いんだよなぁ。
ちゃんと意図した分量で意図した場所に意図したように発動出来なきゃ意味ないよね。
例えばこの土の山を元に戻すにはどうしたらいいのかしら?
水を水圧強めで出したり、霧雨のように出したりするにはどうしたらいいのかしら?
例えば悪い奴に追われてる時だって、相手と私の間に火の境界線を引ければ逃げられるのに。
うーむ。
魔法の発動は3ステップだった。
1.魔力感知
2.魔力コントロール
3.イメージによる魔法の発現
イメージによる魔法の発現…?イメージしたらいいのか?
魔法陣を使った魔法でも一緒かしら?
失敗してもあまり被害のなさそうな地の魔法陣でやってみる。
「
作った土の山が元の整地になるようイメージしながらゆっくり魔力を流す。
ズボ、ズ、ズボボボ!
土の山は少しずつ沈んで整地になっていく。
やった!と思ったら集中が途切れたことで、最後は爆発するように弾けた。
残ってる土が残りわずかだったから、危なくはなかったけれど、全身砂まみれになってしまった。
魔力ももうほとんどない。
今日はこれで終わろう。湯浴みしよう。
ふー。
でも魔法が使えるようになった!1歩前進!
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