第21話
むむむ。どうしたものか…
女性だからという理由で料理人になれないサリー様を見て、その理不尽さに腹が立って、その勢いで「パティシエになりましょう」なんて言ったけれど…お店出すって何したらいいのかしら?
いやその前に、プレゼン内容を考えなきゃだ。
お父様とお母様に後見人をお願いしないと。
マリウス兄様に言われて気づいたの。
お父様かお母様が後見人になってくれないと、いくらお店出したくても、無理だって。
そうだった。まだ6歳だった。
ううう。後先考えてなさすぎて、無知すぎて、ただ勢いだけでサリー様を巻き込んでしまって…
自分の馬鹿さ加減に泣きたい。
でももう巻き込んじゃったもの。なんとかベストは尽くさないと…
プリンは、この世界にない食感よね。
全く新しいスイーツだから、新し物好きは、珍しいもの好きは必ず食いつく。
マリウス兄様、アルフレッド兄様、ラッシュもサリー様もメリンダもみんな美味しいと好評だった。
売れる気がする。
でもサリー様以外にまだパティシエはいないし、最初からたくさん人を雇って、たくさんお金かけて、ダメだったら笑えない。
ミニマルスタートで行こう。
新しいもの、珍しいものが大好きなのは貴族、流行に敏感でお金があるのも貴族。
ふふふふふふふ。
貴族向けに毎日数量限定販売。
価格は高めでどうかしら?
となれば、お店は王都に出したいわ。
でも、わたしが王都に住むの許可してもらえるかしら?
あと王都の店舗って家賃どれくらいなのかしら?
待て待て、そもそも王都の高級お菓子っていくらくらいなのかしら?
出店前のリサーチが全然できないーーー!
計画立てれない!
プレゼンできない!
誰か…王都事情を教えて…
コンコン。
「テルミス。入ってもいいか。」
マリウス兄様!よかった!
マリウス兄様に相談してみよう〜
「マリウス兄様どうぞ。」
「お茶でもしないかと思ってね。」
1週間ほど前、アルフレッド兄様は王都へ戻って行った。
アルフレッド兄様が戻ってしまわれて物寂しいのか、時間ができたのか、勉強の合間にマリウス兄様はよく遊びに来るようになった。
今年の夏頃からマリウス兄様の勉強、訓練はますますハードになっていて、あまり会えてなかったから嬉しい。
「マリウス兄様は王都へ行ったことありますか?」
「ない。
だが再来年から学園だからな、来年の冬の社交の時には連れて行ってもらいたいと思っている。
先にちょっと下見しておきたいからな。
テルミスは王都に興味があるのか?」
「違うのです。いや、違わないか。
お父様、お母様にお菓子屋さんの後見人になっていただくにあたり、出店計画をまとめたいと思っているのです。
プリンは今までにない食感ですので、希少性が高く、高値をつけても買ってもらえると思うのです。
そうすると、主な顧客は裕福な商店や貴族になります。
やはり富裕層が多いのは、王都ですし、王都で出店した方がいいかなと思うのですが、王都に行ったことすらないので、どれくらいが妥当な価格なのか、どれくらいの家賃が発生するのか、どんなデザインが流行っているのか…わからないので、計画立てられないのです。
計画が立てられなければ、後見人をお願いできませんし…はぁ。
何も考えなしにサリー様の人生を巻き込んでしまったと自分の馬鹿さ加減にガッカリしてたところです。」
目を見開くマリウス兄様…
「あの…マリウス兄様?」
「あ…あぁ。
そういうことは、俺もわからないな。
兄なのに役に立たなくてごめんな。
でもテルミス…俺もお前もまだ子供だ。
完璧な計画でなくてもいいと思うよ。」
「どういうことですか?」
「今テルミスは一生懸命、どうやったら売れるのか考えたんだろ?
計画を立てるにあたり、何が足りないかもわかったな。
じゃあそのまま父様に相談してみればいい。
父様なら毎年王都に行っているし、そこで貴族の館で出されるものだって食べている。
テルミスが今知りたいと思っていることは、知ってるはずだよ。
計画だって、今テルミスは王都が最善だと思っているみたいだけど、もしかしたら違う方法もあるかもしれない。
そこまで考えてあるなら、まずは相談した方が絶対いい。
信頼できる大人には頼るべきだよ。」
「マリウス兄様…。
本当にそうですね。
信頼できるマリウス兄様に相談してよかった!
マリウス兄様に相談してなければ、私ずっとウダウダ考えてるだけになっていたもの。
ありがとう!お兄様!」
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