第19話 【閑話】アルフレッド視点
ククッ。
「ん?どうした?」
「いや面白いなと思って」
「!いくらアルフレッドでもテルミスはやらないよ」
「大丈夫。まだそういう気持ちじゃないから」
「まだって…おい!」
パーティの時に久しぶりに会った友人の妹は、6歳なのにまるで同い年かと錯覚するくらい落ち着いていた。
たった3年でこんなにも成長するんだな。人って。
学園の話題からスキルの話題に変わった時も。
最初からいい反応はないとわかっていたのだろう。
少し目を下げたが、それはほんの一瞬。
不遇なスキルでも何か役立てることがないか模索しているという。
イヴァンが嫌味を言いにきた時だって、俺もマリウスも眉間に皺寄せて、明らかに不愉快とわかる顔で臨戦態勢だったのに、
庇おうとした俺たちを制すかのようにサッと前に出て、自分で受け答えしたんだ。
しかも、嫌味に反応して怒るでもなく、ひどいとなじるでもなく、冷静に正論を。
8つも上の男から嫌味を言われたら、普通泣くか逃げるかだと思うんだけど…強いんだな。
逆にイヴァンは8つも下の女の子に迎撃され恥をかいてた。
パーティが終わって、その翌日からマリウスと訓練漬けの日々が始まった。
強い妹のことなんて全く心配してなかった。
俺の中ではもう終わった話だったのだ。
でも数日経って、マリウスが妹が心配だと言う。
食事量も口数も減り、以前は勉強したり孤児院に行っていたらしいが、全く何もしなくなり、ボーッと本を読むだけになっているらしい。
今は王都での社交シーズンのため両親もおらず、心配だという。
あの子が!?あんなに強いのに…そう思ってハッとした。
強く見えても、まだ6歳だった。
初めての社交だった。
きっと悪意ある視線に晒されたのも初めてだろうに…
いつのまにか自分と同レベルで考えてしまっていた。
まだ庇護されるべき年齢だったのに、何をしているんだ。自分は。
「今日の訓練はこのくらいにしないか?
落ち込んでいるなら気晴らしに3人で遠乗りに行こう」と言ったのは今朝のこと。
それはいいと2人で屋敷に戻ると何やら騒がしい。
「サリー様一緒に頑張りましょう!
ムカつく理不尽を打ち倒してやるのです。
私のパティシエになってください!」
「え?お嬢様??ぱてぃしえ?って…え?」
「お菓子作り専門の料理人のことですわ!
うんとおいしいお菓子のお店を作りましょう!
女性だからなんなのです!女性でもできるってこと見せてやりましょう!」
「やります!いや、やらせてください!」
あれ?落ち込んでいるんじゃ?
落ち込んでいると聞いてた妹は完全復活していた。
お菓子職人に熱烈アピールしているみたいだ。
ふふっ。
不思議と心配して損した!とは思わなかった。
楽しそうでよかったとは思ったけど。
差し入れてもらったプリンは美味しかった。
初めて食べる食感で驚いた。
これからお店を作りたいのだという。
こんなに美味しく珍しいお菓子なら売れるだろう。
嫌味を言われて、悪意に晒され、落ち込んでいたと思ったら、事業に着手して復活した。
面白い。
面白いけど…本当に6歳か?
「テルミスはやらんぞ」と睨む彼女の本当の兄であり、僕の親友は本当にめんどくさい。
お嫁に行く時はどうなることやら。
「だから、可愛いけれど流石に6歳の女の子に恋しないから!妹みたいに思ってるって言ってるだろう!」
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