第11話

今日から魔法の本を読みます。

王立魔法学校では攻撃魔法ができないと単位が足りないらしいし、この本を読んだところでライブラリアンの私には実践できることなんてないかも…と半ば諦めの境地で読み始めた。

えーっとなになに。

「魔法を習得するには、大きく3つのステップがあります。

まずは自分の魔力を感知すること。

それがスタートラインです。

次にコントロールすること。

自分の魔力を体に巡らせたり、ある一定の範囲まで魔力をカバーしたり、放出させたり。

自身の魔力を自在に動かせるようになりましょう。

最後は、その自在に動かせる魔力を形にするイメージです。

より早く、より鮮明にイメージすることで洗練されていきます。」とな。

スキルのスの字も出なかった。よかった。

これなら私もできるかも。

まずは魔力感知。

「静かに集中し、神経を研ぎ澄ませてみましょう。

感知しやすい方法はひとそれぞれ違います。

他者の魔法を観察することで感知できるようになるものもいれば、厳しい肉体的な修行を経て感知できるものもいます。

ここでは一般的な呼吸法を試してみましょう。」

本に書かれている通りにリラックスした体勢で座り、鼻から吸って口から吐く。

口から吐く時は少しずつゆっくり長く吐く。そして吐ききる。

すーはーーー。すーはーーー。

この時何も考えない、呼吸に集中することが大事とな。

すーはーーー。すーはーーー。

かれこれ30分ほどやってるけど、さっぱりわからない。

もうちょっと続きも読んでみよう。

「魔力とは、身体の芯から発せられる生命エネルギーのようなものです。

それゆえにあまりに大きな魔力を前にすると、相手が何もしなくても畏怖の念を感じ、反対に魔力が限りなく少ないものや意図的に魔力を抑えている場合は存在が希薄に感じられるものです。

呼吸法で魔力感知できない場合は、体の一部に魔力を集中させてみましょう。

魔力の源から離れた場所に魔力を集中させることで、魔力の有無の差が分かりやすくなります。

最初は分からなくて構いません。

手のひらに意識を集中してみてください。

じんわり温かな感触がありませんか?

それが分かれば、もう一度呼吸法をして体の奥底からその暖かな感触を探ってみましょう。」

手のひらに集中…集中…

ぐぐぐ…ぐぐぐ…

もわもわ〜あ、少しあたたかい…

っ!

やっと暖かな感触を得られたかと思ったところで、私の視界はブラックアウトした。

またやってしまった!


目が覚めた。

うぅー。なんだか体全体がだるい。

ちょうどその時メリンダがやってきた。

「そろそろお勉強の時間ですよ…って!お嬢様どうされたのですか!?

お顔が真っ青ですよ」

「魔法の本を読んでたのだけど、ちょっと疲れちゃって。

体がだるいの。」

そういうと、あれよあれよと言う間にベッドに寝かされた。

「ちょっと失礼します」というとメリンダは私の首元に手を当て、体温を測ると「すぐ戻ります」と言って出ていった。

面目ない…

戻ってきたメリンダの手には、カップとティーポット。

さぁ飲んで下さいと言われて飲んだのは、スパイス香るあまーいチャイだった。

シナモンの香りに癒され、体の芯まで温まる。

2杯ほど飲んでホッと一息つけば、徐々に気力が戻ってきた。

「ありがとう。メリンダ。

もう大丈夫だわ」

「顔色もだいぶ良くなられたようで、よかったです。

魔力を少し使いすぎたみたいですね。

今日はお勉強お休みにして、大事をとってベッドで休んで下さい。」

「もう大丈夫なのに。

心配かけてごめんなさい。

でも、1日でも休んでしまうとまた元の怠け者の私になってしまいそうで怖いのよ。

だから今から1時間はちゃんと休む。

それから残り30分は勉強していい?」

メリンダはしっかり休んで欲しかったみたいだけど、1時間はしっかり休むことと顔色が良くなったことを考慮して、最終的に30分勉強することを認めてくれた。

「でもいいですか。

お嬢様のスキルはライブラリアンです。

読書は魔力を使ってなさそうですが、お嬢様はスキルの力で読んでいるのですから、読書をする度確実に魔力は消費しているのです。

無理をすればまた倒れますからね!」

そう言い残して、メリンダは出て行った。

そういえば、最初に魔力切れを起こしたのは本の読み過ぎだった。

3日寝込んだんだったなぁ。

今回は2、30分ほどで意識は戻った。

魔力がゼロになったわけではないから回復が早かったのだろうか。

それとも魔力の回復スピードが早くなったのかな…

どうやったら回復スピードって速くなるんだろう?

いやもっと言えば、どうやったら魔力が増えるんだろう?

魔力で本が読めるなら、魔力が多ければ多いほどたくさん読めるはず。

増やしたいなぁ。

そもそも増えるものなのかなぁ?

そんなことをつらつら考えているうちに私の瞼は閉じていき、夢の世界に旅立った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る