第7話
今日も朝から掃除です。
しかしこの掃除がなかなか重労働。
掃除機のない掃除ってこんなに大変なんだ。
特にちりとりと雑巾ね。
片手でちりとり持って、もう片方で大きな箒持って、ゴミを集めるけど、小さい塵はなかなか取りきれなくて苦労する。
雑巾掛けは言わずもがな。
結構な運動量だし、膝をついて雑巾掛けすると膝が痛い。
メリンダからは「膝が黒ずんでしまうから雑巾掛けだけはもうおやめ下さい」と言われてる。
たしかに膝が黒ずんだ貴族令嬢はいないかも。
うーんと考えて閃いた。
アレがあればいいんだわ!
「メリンダ。欲しいものがあるの。
こういう柄が長くて、先に板がついてるものってあるかな?」
「…見たことありませんが。
何に使うものなのでしょう?」
「掃除に使いたいなって…」
「お掃除に?」
「雑巾を下に挟んで、こうやってすいーっと動かせば、屈まなくても水拭きできると思わない?」
「なるほど。
見たことないので、道具屋で作ってもらうのはどうでしょう?」
「!作りたい!
あ、でもどれだけお金かかるのかしら」
「聞いてみないと分かりませんが、それほど複雑な仕事ではなさそうですし、20ペルくらいあればできるのではないでしょうか。
それに、お嬢様は6歳になられてまだ何も購入されていませんから、お嬢様予算から買えると思いますよ」
「やった!
じゃあさっそく頼みに行きたいわ。」
「でも良いのですか!?
お洋服やお菓子に使わなくても…掃除用品で。」
「いいのよ。
ライブラリアンになったから、本は買わなくて良くなったし」
「……少々お待ちください。」
そう言ってメリンダが出ていった。
しばらくすると執事のオズモンドがやってきた。
「お嬢様。掃除用品が欲しいとのことなのですが…」
「そうなの。こういうものを作りたいの。
こうしたら膝をつかなくても水拭きできるでしょ?」
「…なるほど。
では、そちらは館の維持費から出しますね。
お嬢様はもう6歳ですから、今年から冬の社交もございます。
そちらに向けて、お洋服の準備などもございますので、お嬢様予算は取っておきましょう」
「わかったわ。
でもいいの?私が欲しいものなのに」
「掃除用品ですからね。館維持のためのものです。
その代わりお嬢様の部屋だけでなく、館中で使いますから」
とにっこり。
「では、早速道具屋を呼びましょう。」
え!呼ぶの!?
その翌日には青い顔して道具屋がすっ飛んできて、そのさらに1週間後にはフロアワイパーが完成し、そのさらに1週間後には追加発注したワイパーが館に届き、すっかり掃除用品として定着することをテルミスはまだ知らない。
オズモンドがお父様に報告し、すぐさまテルミス名義で特許取得に動いていることも、販売計画を立てていることも…まだまだ知らない。
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