無人島に住みたい

 スルースキルを磨きまくった私だが、時々それにも疲れて、無性に無人島に住みたいと思うことがある。


 無人島は個人でも買える不動産だ。調べたら、インフラ整備費と維持費はかかるが購入は不可能ではない。自給自足が出来るスキルを身に着けておこうと、知識を蓄え、作れるものはとりあえず自分で作る。


 とはいえ、Am〇zonやコンビニの便利さに慣れてしまった軟弱者。人間自体が嫌いな訳でもない。酒場に行けなくなるのも地味に辛い。酒に関するイベントに出かけては、珍しい酒を探す人間である。


 以前、日本酒のイベントで、とある女性と相席になった。そのまま意気投合し、連絡先を交換した。以来、10年の付き合いになる。

 優れた経営者でもある彼女が、新しい居酒屋を出す時も協力した。暖簾や店のロゴを作り、料理の提案と監修もした。時々頼まれて厨房に入り、常連さんにお酒を奢ってもらいながら料理の手伝いもする。


 なんでもやっておくものだ。いつか役に立つ。


 様々な人間ドラマに触れられるその場所は、どこか実家の空気にも似ている。夜ごと交わされるくだらない会話と、時々真剣な議論。


 多分、そういうものが原体験としてあるから、無人島を夢見ながらも行かないのだろうなと思う。


つづく

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