シンゴ

 シンゴという友達がいた。インド人である。


 本名は「アリ」なんちゃらという長い名前だったが、彼の親戚・友人ほとんどがアリ。とても紛らわしかったので、テキトーに名前をつけた。理由はタレントの柳〇慎吾氏に似ていたからである。すまん。


 騒がしい実家、豪傑母・陽キャ姉・自由すぎる父の三つ巴の闘い、頻繁に出没する変態紳士、創作活動などに嫌気がさし、衝動的にインドに旅立った。

 前述のお嬢様を含め、友人を5人ほど誘ってみたが、ついてきたのは1人だけだった。今思うとついてきたあの人、すごいね。彼に関してはまた色々あるが、それは置いておこう。


 何事も秒でスルー、人間じんかん万事ばんじ塞翁さいおうが馬、日和見主義の私は、とてもインドに馴染んだ。


No problem


 1ヶ月の旅の間、よく聞かれた魔法の言葉。宗教でガチガチの戒律に縛られているかと思いきや、かなりのフリーダム。全ては神々の思し召しなのだ。


 現地で知り合ったガイド兼運転手のシンゴ。彼の親戚に騙されて、カシミール地方で死にそうな目に遭ったり、招かれたシンゴの家で頭皮がズル剝けそうなくらい辛いカレーを食べさせられたのは良き思い出である。


 当時20代後半だったシンゴには18歳の許嫁がいた。親が結婚を決めることが多いインドでは当たり前のことらしい。綺麗な許嫁の写真を見せてくれたので「セクシーだね」と言ったら、なぜか烈火のごとく怒り出した。

 お互い英語の会話があやふやだったので、誤解があったのかもしれない。よく聞いてみると、どうやらシンゴは「セクシー」を春を売る女性のことだと思ったらしい。


 シンゴったら。


 色々誤解やすれ違いはあったが、私たちは旅の間、仲良くやっていた。帰国する前にはシンゴに会いに行き、一緒に写真を撮った。「日本で流行っているポーズを教えてくれ」と言われたので、「お〇松くん」のイ〇ミのポーズを教えた。


 あなたがもしインドを旅して、シェーのポーズで写真を撮る現地人がいたら、それはシンゴである。


 鳥尾巻がよろしくと言っていたと伝えてほしい。


つづく

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