何日君再來(いつの日か君また来る)
なぜだろう。外を歩けば、ほぼ100%他人に話しかけられる。100は大袈裟にしても、80くらいは余裕でいく。
日本だけだと思っていたら、海外に行った時もそうだった。いや、国内にいても外国人に話しかけられる。
大学生の時、1人新幹線で大阪に向かっていた。空いているのに隣に座って来た男性がいて、日本人かと思ったら中国人だった。
片言の日本語で挨拶して、自分は
暇だったし特に断る理由もないので了承した。基本は来るもの拒まず、去る者追わずである。
質問に対して、持っていたメモ帳に漢字と英語と平仮名を書きながら説明した。王さんは中国で刑務官をしているという。これまた特殊なことで、と思いながら話を聞く。日本へは京都観光に来たそうだ。
小1時間ばかり会話をした後、王さんが住所を聞いてきた。もうすぐクリスマスだから、本国に帰ったら言葉を教えてくれたお礼にグリーティングカードを贈りたいと言う。
私は来るもの拒まずを実践する人間である。そしてその頃には既に変人に慣れすぎて、大抵のことは秒でスルーする癖がついていた。
まあいいか。その時は独り暮らしをしていたので、なんとなく実家の住所を教えておいた。豪気な母と自由人の父はどんな事態にも柔軟に対応するだろうと思い、そのまますっかり忘れていた。
夏休み。実家に帰省すると、母が赤い封筒を持ってきた。入っていたのは王さんのグリーディングカード。8月のクリスマス。
カードには日本語で「今度家族であなたの家に遊びに行きたいです」と書いてあった。
なんでやねん。
返事は出さず、実家はすぐ別の場所に引っ越したので、その後どうなったのか知らない。
つづく
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