初めての壁ドン

 OFGおじさん以来、幾度となく変態紳士に追い回されるようになった私は、自衛も含めて髪を短くし、少年のようにふるまうことが増えた。

 家族を着飾らせるのが好きな母にはブツブツ言われたが、元々スカートやふわふわした服装には興味がなかったのでいいのだ。


 だが忘れてはならない。世の中には多種多様な嗜好の人がいる。


 高校で演劇部に入った。なぜか部の代表で他校も集まる演劇合宿に行くことになった。県内の学校から集まった高校生たちと交流しながら演技の勉強をする。


 楽しかった。なんだかんだ言って人と交流するのは好きなのだ。


 女子校からやってきた先輩とも仲良くなった。合宿中、ずっと優しくしてくれて、色んな話をした。最終日、名残り惜しい気持ちで先輩と話していると、急に手を引っ張られて階段下に押し込まれた。


 そして壁ドン。


 彼女は私の髪を撫でながら囁くように話し、妖しい雰囲気を醸し出してくる。そんなつもりではなかった。小説などは読むが自分の恋愛にはあまり興味もないし、このままラブな展開に持ち込まれても困る。


 とりあえず落ち着こう。


 彼女を傷つけないように、遠回し且つ丁重にお断りをし、曖昧な笑みを浮かべてその場を逃れた。そして帰る準備をしながら、自分の性的嗜好はどっちなんだろうと考えていた。


 ま、どっちでもいいか。


つづく

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