第8話 公爵家に伝わる秘密

 オレ自身が死ぬかと思うほどにハードだった。途中で出した食料なんかも食べ切れない分は、その場で廃棄っていうか、そばに村があったら、そのまま無条件で進呈していったほどだ。


 朝から夜まで、ただひたすらに駆ける。


 馬もバテたみたいだけど、ともかく駆けた。一日100キロペースと言うのは、記録的。舗装はまだまだだけど、小さな川でも橋を架けてあるのが無茶苦茶助かった。


 道路開通計画の恩恵を、まさが自分が受けるとは思わなかったよ。どれだけ頑張ったとしても、道路がちゃんとしてなかったら、絶対に不可能だったのは事実だ。


 そして、単体の早馬ならともかく、これだけの大所帯が移動できたのはすごいこと。食糧などの補給物資と荷物を最低限にしたからこそできたんだろう。槍の類は後から送ることにしたくらいだもん。


 剣を持っているのも少数派。まあ、たとえ丸腰でも500頭の騎馬部隊にちょっかいを出そうという命知らずなんて、いるわけがないもんね。


 それでも一割くらいの馬が潰れた。途中で「後発組」として人と馬を分けざるを得なかった。


 なんとかシンまでたどりついたのは8割を超えたんだから、恐るべきモチベーションと馬の資質だよね。


 到着した時、ほとんどが息も絶え絶えになった仲間達に休憩を命じたら、ガーネット騎士団の人達が世話を焼きに現れてくれた。


 さすが、仲間。元はと言えば、ガーネット騎士団の一員だっただけに、そっちはお任せだよ。


 アテナは「君の家なんだから大丈夫だ」と説き伏せて、幼い頃から傅いて来た専属メイドに引き渡した。とにかく風呂と休息をさせないと、オレ以上に堪えているはずだからね。


 そして、オレもお屋敷に入ったんだ。


 ずいぶんと懐かしく感じるのが不思議だ。


 ここは領都・シンにある公爵家の本屋敷だけに建物が豪壮であると同時に、きちんと前線としての「城」の機能を持っている。


 騎士団や兵が慌ただしく出入りし、城壁の点検や補修に走り回っている慌ただしさを見せていた。戦時に備えた井戸がいくつもフタを開け清掃が始まっているのは、おそらく「籠城」が頭にあるからだろう。


「本来、ここを支える『出城』の役割を果たす支城はいくつもあるみたいだけど、ぜんぶ北と西に向いているんだもんね、そりゃまぁ、当然と言えば当然だよ」


 東から来るであろう「敵」は計算外。領境を睨んだ川に砦を作っているという話を聞いたけど、それが「王国の敵となってしまうかもしれない」という事態の深刻さを物語っている。

 

 この、公邸の奥まった一室でバッカニアーズ様とアポローニアーズ様は、必死になって情勢を探り、手紙を書き続けてきたそうだ。


 本来ならご当主様の判断が欲しいところけど、降伏させたばかりのアマンダ王国から当分帰れそうもない。さすがに西の大国を降伏させたあとのドタバタは公爵本人以外にはできない仕事でもある。それを放置して戻ってきたら、この後の不安要素が大きすぎるからね。


 ガーネット家よりもサスティナブル王国のことを考えるエルメス様が、途中で放り出してくるわけが無いんだよ。


 既に一報は入れたが、最低半年、おそらく1年は動けないというのがアポロニアーズ様の読み。オレも、その読みは正しいと思う。だから今はここにいるメンバーでやって行くしかない。


 なんて考える前に、そのまま「専属メイド」を名乗るユキとカナにお風呂に拉致されてしまった。いや、なぜ、ガーネット家にオレ専用のメイドがいるのかはわからないけど、とにかく有無を言わせないお姉さん達だ。


「ふふふ。ショウ様、さすがです! 大丈夫ですからね!」

「アテナ様にお教えしたのも私達ですからね! あ、でも、二人とも殿方との経験は無いので、お時間のあるときは、ぜひともお命じくださいね」


「あ、で、でも、あの、もう」

「いいんですよ」

「殿方は無理しないでくださいね」


 二人の楽しげな声がハモった時が限界だった。


「「ほら、これで!」」

「あの! そ、それは、もう、やめっ、あっ、ああっ!」


 あっと言う間の暴発。

 

 ふたりに「すごぉい。いーっぱい」と喜ばれてしまった。


 そりゃさ、この五日間、ただ走るだけだったせいもあるよ? 思春期だからしょうがないじゃん!


 あっさりと、お風呂でしちゃったけど「私達は口が硬いので。ご安心を」というわけの分からないドヤ顔をされてしまった。


 解せぬ……


 ともかく、風呂上がりのスポドリを飲み干すと、案内されたのは貴賓室。


 バッカニアーズ様とアポロニアーズ様が待ち構えていた。


「よくぞこんなにも早く。予想よりも1週間も早かったおかげで、いろんな意味で助かりました」


 そんな風に満面の笑みで迎えてくれた二人は、情報を共有しようとしてくれたんだ。


「サスティナブル王国のは3回に分けて出されているんだ」


 バッカニアーズ様は説明を始めた。


「第2王子がノーマン様とリンデロン様を味方に付けて王家の転覆を謀り、ジョージ・ロワイヤル様の暗殺を謀った」


 これが、最初に出された急報だとバッカニアーズ様は「密書」を見せてくれた。そこには「王はご無事で王宮にいらっしゃる」とも書いてある。


 ん? 謀反を起こされて抹殺されるはずの王が、王宮に無事でいる? それって、普通に考えれば「謀反失敗」だよね? ノーマン様とリンデロン様が反乱を起こしたとしたら、果たして無事でいられる?


 そんなことを考えているオレに「次の日に出されたのがこっちだ」と紙を見せながら説明を続けてくれた。


「近衛騎士団は王の命を受けて、第1王子と第3王子を王都から落とすことに成功し、同時に両公爵を捕縛した」

「えっと、謀反は失敗って形ですよね?」


 「?」を10個くらい付けたいよ。仮に二人が謀反を企てたら、王子なんて逃がすわけないじゃん。そんな甘い人とは思えない。


 バッカニアーズ様は皮肉な笑いを浮かべて「なぜか、この時点で謀反が失敗してないんだよ、不思議だね」と笑って見せてから「三つ目がこれだ」と次の紙を提示しながら要点を喋ってくれた。


「都から落ち延びた第1王子と第3王子が力を合わせ、ロウヒー侯爵家の助けを借りて王都の事態を掌握した。御三家は互いに協力して陰謀を企んだとみられ、現在はガーネット家の討伐も視野に入れている」


 あまりにもオカシナことだらけの「公式声明」だ。ツッコミどころが多すぎるよ。


「バッカニアーズ様、暗殺を謀られたはずの王は、今、どうなっているんです?」

「バッカスと呼んでくれ。コイツはアポロンでいい。それで、国王は暗殺を謀られたショックで王宮の奥で伏せっておられる。そのため第1王子が摂政として任じられて、この事態の収拾に当たるんだそうだ」


 皮肉な微苦笑を浮かべている。そこにアポロニアーズ様が付け足してきた。


「謀反を起こした御三家全ての家から娘を結婚相手としている誰かさんは、現在、陰謀の首謀者の一人としてご指名を受けているぞ。大逆罪だな」

「え! じゃあ、父上や家族達は」


 家族やメリッサたちが、国家転覆を謀る大逆罪の身内として捕らえられている! 大逆罪は家族もろとも無条件で死刑が最低ラインだよ。


 腰を浮かしかけたオレにバッカスが手で制してきた。


「それなんだがな…… むしろ本気で尋ねたかったのだが、この事態を君は予想してたのか?」

「え?」

「おや、さっきの反応と言い、やっぱり、その感じだと本当に意外だと思ってるみたいだな」


 バッカス様とアポロン様が顔を見合わせて笑顔。どっちかというと、ホッとした顔だ。


「あのぉ、いったい、どういう?」


 バッカス様が答えた。


「いや、君がもしこの事態を予想していたのなら、あまりにも凄すぎて、神の領域だと思ったんだ。そんなのありえないって」

兄貴バッカスは、こう言ってるけど、ホントは予想していたに違いないって、さっきまで言っていってたんだからな? しかも、オレよりも強硬だったし」

「すまない。実は予想していたとしか思えないんだ。だって君の家族は妻妃どころか、専属メイドまで全員がオレンジ領に戻っていたんだぞ。だから、今のところ、捕まったとの情報は無いんだ。普通ならありえないだろ、夫がいないのに、子どものいない妻妃が夫の領地に遊びに行く? 聞いたことが無い話だ」

「ウチの領に遊びにいってたんですね? 全員が?」

「間にある王都が通信途絶状態になっているんで、オレンジ領内の今現在はわからないし、なぜ、ご家族が領に行っていたのかも分からない。そのあたりの事情も理由もぜんぜんわからないが、現実に王都のカーマイン家には使用人しかいなかったし、捕まえた大罪人としての名前は今のところ一人も出て来てない。これはハッキリしているんだ」


 バッカス様が断言すると、アポロン様が「だからこそ、疑われる理由にされてるんだけどね」と付け加えてきた。


「義父が反乱を起こすと知っていたから、事前に家族を避難させていた、だとさ」


 にこやかな顔の半分はマジな質問になってる。


「いやぁ~ さすがに、それはないですよ。そもそも、なんで、みんながウチの領に行ってたのかすらわからないんですから」

「ひょっとしたら、メロディアス様がリンデロン様辺りから、なんか言われたのかもしれない。不確かな情報だが、王都から出るときに公爵家の馬車も使われていたとか、両家の騎士団が護衛についたという噂もあるからね」

「え…… 」


 何かを言われた? う~ん、だけど、みんなから貰った手紙には、そんなことはひと言も書かれてなかったよ。そもそも公爵家の馬車だとか、騎士団? 何それ、って感じだよね。

 

 えっと、え~っと……


「あ! そう言えば、メリッサ…… メリディアーニからの手紙に『一度、カーマイン領をみんなで訪問したい』って書いてありました。それのことかな?」

「う~ん。だとすると宰相としてノーマン様が予想して、娘に忠告していた? でも、それだと自身が捕縛されたのがわからない。おそらく王宮に出仕したところを捕らえられたらしいからね」

 

 を企む人間が手勢も連れずにノコノコと「出仕」するはずが無いのは、わかりきったことだ。


 そこでバッカス様は、アポロン様と顔を見合わせてから身を乗り出したんだ。


「どうだろう? このまま弑逆を企てた大罪人として、捕まるつもりかい?」

「まさか」


 オレは、即座に否定した。そんな気持ちはゼロだ。ちなみに、今現在で王族に対する忠誠心とか言うのもゼロというか、マイナスになってるよ。


「じゃあ、反撃する気はある?」


 言葉は軽かったけど、バッカス様の目は真剣だ。


「当然です。手を貸してください」


「「良かったぁ~」」


 二人が安堵の表情を浮かべたんだ。


「あの?」


 バッカス様とアポロン様は、サッと椅子から降りて片膝をついたんだ。騎士の忠誠のポーズだ。


「あの! えっと!」


 焦るオレを、バッカス様が真剣に見つめたまま言った。


「閣下はガーネット家の印章をお館様から託されていらっしゃる御身でございます」


 アポロン様が「さらに」と言葉を付け足してきた。


「王国史に残るような偉大なコンクエストアマンダ王国征服を成し遂げられた、今後の伝説となるような現代の英雄でもあります」


「「どうぞ、我らを、そしてガーネット家をお使いいただき、この国に再びの平和と安寧をお導きください」」


 これを「はい、わかりました」と簡単にOKできるほど度胸はないよ。だって、公爵家を配下としろってことだよ?


 そして「敵」は、大陸イチの王国であり、母国でもあるんだ。


「あ、そ、それは、その」


 正直「ちょっと考えさせて」と言いたかった。そこにノックと同時に現れたのが黒髪の美女とやたらと威厳のある老人だ。


 ティーチテリエー様だった。えっと、こっちのジイちゃんは?


 優雅で、それでいて一片もスキの無いカーテシーと、貴族式の礼。


 オレも慌てて礼を返した。


 ティーチテリエー様が一歩前に出てきた。


「夫がいない間、ガーネット家の最終決定権は、私に託されております」


 ティーチテリエー様の表情を見れば、次に何を言われるか、わかった気がしたんだ。


「私、ティーチテリエーは当主・エルメスの代理としてここに申し述べます。ガーネット家は、ただいまより、サスティナブル王国の祖法に則り、の非道を正す選択をすると宣言いたします。そして、そのためにも当主エルメスがこの館に戻るまで、ショウ・ライアン=カーマイン閣下を主として仰ぐことをお約束いたします」


 スカートの中で両膝をついた姿勢で、スッと、左手が伸ばされてきた。


 両膝をつくのは女性騎士が忠誠を誓うという、伝説の(女性騎士そのものが存在しないからね)ポーズだ。


 もう、ここでオレの選択肢など無かった。それに、ここでオレが謙譲の美徳を発揮して拒否っても、良いことなんて一つもないものね。


 腹をくくるしかないんだ。


 その美しい手を取ると薬指に口づけた。


「ガーネット家のお命、確かにお預かりする」


 お互いの命まで預けあうという盟約である。


 振り返ると、オレは剣を抜き放って、バッカス様…… バッカニアーズの左肩に剣の腹を乗せた。


「バッカニアーズ・ロード=ギリアス」

「はい」

「そなたの命と忠誠、確かにお預かりする。以後、全てを捧げよ」

「心より」


 続けて、剣を当てる。


「アポロニアーズ・ロード=ギリアス」

「はい」

「そなたの命と忠誠、確かにお預かりする。以後、全てを捧げよ」

「心より」


 剣を、パチンと鞘に収めると、三人は、オレと頷き合ってから立ち上がる。


「ただいまから、エルメス様が戻られる、あるいは王国の秩序を取り戻す日まで、私は主君あるじとして振る舞おう」

「「「御意」」」


「今度は私の番だね」


 短くかり詰めた白い髪の老人は「ノーブル・クラヴト=ステンレスです」と名乗ったんだ。


「あぁ、おっ、祖父様?」


 メリッサが大好きだと言っている、優しいおじいちゃんだ。老公とも呼ばれてる人だ。


「メリーを蕩けさせた男に、ようやくお目にかかれましたな」

「すみません。もっと早くご挨拶にうかがうはずが」

「いやいや。話はずっと聞いていたし、たまに戻ってくると、この頃はずっと君の、いや、閣下のことばかり惚気おって困っておりましたぞ」

 

 と笑顔で握手を求められた。


「手の者からの知らせでいち早く都を脱出しましてね。そして、逃げる先を考える上で、ここに来るしか考えられなかった」

「それは、いったい?」


 距離から言えば、自領に戻るか、スコット家もあり得たはずだ。


「いち早く、婿殿に会えるとしたら、ここになるからね。選択肢として、ここ以外は考えられなかったんだよ」

「私に会うため、ですか?」

「その通りだ。それが最善だと思ったし、その通りだった」


 シワだらけの温かい手だった。柔和な目をしているけど、そこには単なる「好々爺」ではない歴戦の古武士のような雰囲気がありありと現れている。


「当主のステンレスと、そして嫡男となる予定のアレックスも、次男のベークドサムも消息不明である以上、シュメルガー家として私が名代になっていると言わせていただく」


 げっ、義兄達もヤバいの?


「大丈夫。簡単に死ぬヤツではないからね」


 オレの心を読んだのか、優しくそう言い聞かせてきたノーブル様は、いきなり片膝をついたんだ。


「私、ノーブル・クラヴト=ステンレスは当主の代理としてここに申し述べます。シュメルガー家は、ただいまより、サスティナブル王国の祖法に則り、の非道を正す選択をすると宣言いたします。そして、そのためにも当主ノーマンが戻るまで、ショウ・ライアン=カーマイン閣下を主として仰ぐことをお約束いたします」


 もう、頭はパニックだけど、引っ込みはつかないよ!


 差し出される左手を取るとシワの入った薬指に口づけた。


「シュメルガー家のお命、確かにお預かりする」


 再び、お互いの命まで預けあうという盟約を宣言した後、全員に椅子に座ることを求めたんだ。


「今のお言葉の中に、サスティナブル王国のと言う言葉があったのですが…… あったが、少なくとも私が学んだ歴史の中に、それに該当するようなものはなかったはず」


 二人が顔を見合わせると、ノーブルさんは説明を譲ったらしい。 


 ティーチテリエーさんが説明してくれた。


「ご存じなくて当然ですわ。これは王族と公爵・御三家の当主、そして、家を預かる者にだけ伝わる建国以来の秘密ですもの」

「秘密?」


 そこにバッカスが口を挟んだ。


「我々も、今度のことでお館様が出発する直前に教えられたことです」


 つまり、エルメス様は出発前に自分の命が危ういと読んでいたと言うことか? 


 オレの無言の問いに一つ頷いてから、バッカスが続けた。


「一言一句変えずに暗唱させられました。それは次の通りです」


《歴史上、愚かな道に絶対踏み込まぬと言える王家は存在しない。いつかデモクラシーが生まれるその日まで、三公爵家の真の役目は過ちに踏み込んだ王家を正すこと。正せぬ時は、三公爵家の合意の元で次の王を選ぶべし》


 バッカスが暗唱を終えると、ノーブルさんとティーチテリエーさんが同意するように頷いている。


「これが、建国王と三賢の合意だそうです。今も、この言葉は玉座の裏にはめ込まれた碑に古代文字で書かれていて、王は王太子を、公爵家は嫡男を決めたとき、が揃って確認するという儀式を密かに行っています」


 そこに微苦笑のアポロンが付け足してきた。


「もっとも、この『デモクラシー』というのが何なのかというのが今ひとつわかってないのは困っています。各家に残った文献によれば「民が政治を選ぶことだ」と書いてあるのですが、そんなことが可能とも思えず、研究が止まったままなのです」


 ふう~ ヤバい、一国の建国の秘密まで知っちゃったワケかぁ~


 絶対王政の決定的な弱点は「血筋で選ばれた王様が最悪な人物であっても、それを正す方法が無い」ってことだった。それを、御三家という装置で訂正できるようにしておいたというわけか。


 しかも「デモクラシー」って言葉を入れてる。


『前々から思ってたけど、どうにも、この国を作った時の「三賢」って、前世からの転移者っぽいよなぁ。しかも多分に厨二病のニオイがプンプンすんだよね』


 オレは、緊張しすぎて胃から何かが出てきそうだったんで、くだらないことでも何でも、とにかく言葉にして誤魔化そうとしたんだ。


「ははは。この分だと、王宮のどこかにエクスカリバーが眠っていても、ぜんぜん不思議じゃないですねぇ」


 全員が真っ青になってオレを見つめている。


 ん? え? オレ、何か、悪いことを言いました?


「ショウ様、その言葉、どこでお知りに?」


 ノーブルさんの声が固い。


「え? マジでエクスカリバーってあるんですか? 岩に刺さってるやつ?」


 あっと小さな声を上げてティーチテリエー様がした。ノーブル様も、他の二人も慌てて続いた。


「「「心から! 心から、おみとしてお仕え申し上げます」」」

 

 え~っと。


 あるんだ?


 なんか、その剣を引き抜いて見せないとダメってことだろうなぁ。抜けるのか?


 と、ともかく、そんな先のことより、体制を整える方が先だ。


「とにかく座ってください。まず、戦力の計算をします。スコット家の力も必要です。使いを出してブラスコッティ様を最速で連れてきてもらって。それに、王都の騎士団に何とか連絡を付けたいですね」

「わかりました。では、こちらに」


 そういってバッカスが案内してくれた場所は会議室。


 そこには、騎士団を始め主な家臣達がズラリと揃って、オレが現れた途端に、全員が起立して迎えてきた。


 戸口の横にいたアテナは男装のまま、さりげなく、いつものポジションに付くと小さく微笑みかけてくれる。


 ティーチテリエーさんが、澄んだ声を響かせた。


「私、ティーチテリエーと、シュメルガー家の当主代行でいらっしゃるノーブル・クラヴト=ステンレス様は、たったいま、こちらにいらっしゃるショウ・ライアン=カーマイン閣下に忠誠を誓い、許された。異議のある者は、今、申し出なさい」


 シーン


「では、問います。あなたたちの決意は」


 と声をさらに張り上げたんだ。


「「「「「「「ショウ・ライアン=カーマイン閣下に命をお捧げいたします。」」」」」」」

 

 こうして、オレはシュメルガー・ガーネット両家に対しての「インペリウム指揮命令権」を手に入れたんだ。


「最初にやるべきは、3つ。現状把握、敵情確認、味方の解放です。壁に地図を貼って領内の兵の配置を確認して報告、記入のこと。手の者からの情報も合わせて敵の情報も書き込んでください。そして、シュメルガーとスコットの両騎士団は、王都の隊舎に閉じ込められ、謹慎中とのこと。これに脱出させ、戦力化します。これを最初の基本行動とする。一同、かかれ!」 

「「「「「「はい」」」」」」


 カーマイン家がどうなっているのかは気になるけど、ともかく、王都を何とかしないとどうにもならない。ノーブル様に頼んだら裏が使えるらしいんで、シュメルガーの手の者を使って探ってきて貰うのは頼んだけど、最終的に「王子連合軍」をなんとかしないと行き場がなくなるのは目に見えてる。


 みんな、待っててくれよ。


 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 

作者より

 やっぱりあったか「エクスカリバー」笑笑


 メリッサ達がカーマイン家に「遊びに行った」のは、実にラッキーでした。さすがメリッサちゃん。ちなみにミィルも、既に呼び寄せられています。本当は王都で待ちたかったミィルですが、奥様の意向に逆らうわけにはいきませんでした。それが幸いでした。


 ともかく、2公爵家から認められて、仮とはいえ「主君」となった以上、負けられませんよ、みんなのために。


 なお、王子達は誰も「王太子」になってないので、この「秘儀」を知りません。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 











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