第3話 弟も狙われていた

※マンションを出た後のDVDに

 映っていない場面です。


永山が護衛達とエントランスを出ると

「大将•••

 カミさん怒ってました?」

飛島がそっと現れた。

「お前が逃げた事に怒ってたぞ。

 向き合わないのは悪手だな。」

「そうは言っても怖いんですよ•••

 子供が生まれてから特に•••」

「まぁ母親の凄みだな•••

 だからと言って逃げ回っても

 解決せんだろ?」

「いやまぁ分かってるんですが中々なかなか•••」

そう言うと飛島は190㎝を超える体を

シュンと小さくする。

そこに角田が近付く

「大将。

 さっき【ぱわぁ亭】のオヤジさんから

 明子ちゃんにバイト代渡しそびれたって

 電話がありましたよ。」

「まぁ今から【ぱわぁ亭】戻るから

 預かっておいて次に会う時に

 渡しといてくれや。

 それはそうと明子ちゃんどうだった?」

「かなり優秀•有能ですね。

 誰に言われる事も無く動けるのが

 とても評価出来ますね。」

「そうだろう!

 昔から仕事は

 言われずに動くのが人間のじょう

 言われて動くのが人間のちゅう

 言われても動かないのが人間の

 と言うからな。

 まぁただ動けば良いという

 わけじゃないが明子ちゃんの

 働きぶりは凄かっただろう?」

「はい、すぐに仕事覚えて前から

 働いていたみたいな動きでしたね。

 あんな子、中々いませんよ。」

「そうだろう。

 だからスカウトしたんだよ。

 育てていけばトップにもなれる逸材よ。

 実家を継ぎたいと言うなら

 気持ちを尊重したいが•••

 親御さんは子供達には自由に

 生きて欲しいと言っていたからな。

 まぁ何にしてもこれからだな。」

「はい。

 これから楽しみですね。」

「それとな明子ちゃんには弟がいるだろ?」

「はい。

 まだ中学生だそうですが

 すでに他の子とは何か違いますね。」

「今日、明子ちゃんが車に乗る時に

 目に強い復讐心が宿ってただろ?

 ただあの目は俺に対してというより

 無力な自分への怒りだな。

 そういう人間は必ずぞ。

 。」

「本当ですね。

 世間で言うちから

 とんでもないエネルギーを

 持ってますからね。」

「ああ。

 怒り•憎しみ•悔しさ•悲しさ•劣等感

 そういったモノがないヤツは

 どれだけ才能や素質が有っても

 開花しないからな。」

「身に染みてます。」

「それと環境もだな。

 明子ちゃんや英明ひであき君のように

 金が無くて視野が狭くなってたり

 仕事や介護に追われて時間が無かったり

 イジメや虐待•パワハラ•モラハラで

 追い詰められてる人間が

 世の中には沢山いるからな。

 俺が手を差し伸べられたのは

 まだほんの一握り•••

 いや、一つまみもいかないんだろうな•••」

「それでも大将に拾っていただいて

 我々は本当に感謝していますよ。

 大将に声をかけて貰えなかったら

 命を絶っていた人間も多いでしょう。」

周りにいた人間全員が頷く。

「大将。

 俺らぁ地獄までお供しますぜ。」

とび、それじゃあ大将は地獄行きが

 決定してるじゃないか。」

「いやぁ俺は地獄行きだろう。

 も山ほど

 やってるからな。

 ただ地獄に行くのは俺だけで良いよ。

 地獄の入り口位まで付いて来てくれや。」

「大将•••」

「まぁそんな話はこれ位にして

 商店街に戻ろうや。

 明日は日曜日だろう。

 日頃の憂さを晴らそうぜ!」

「「「「「はい!!!!!」」」」」

そして全員は商店街に戻っていった。


シャッター商店街と化していた

この商店街を永山は様々な店を呼び

かなり賑わいを復活させていた。

新しく出来た飲み屋等は防音設備を

充実させ周りの店に配慮していた。

もっとも【ぱわぁ亭】などの元から

商店街にあった店の住人達は多少

うるさくても賑わいが戻るなら

それで良いという考えであった。

その為昼は商店街、夜は飲み屋街という

地域になっていた。


商店街の中の静かなBarにて

カウンターの永山を中心に

メンバーが座っていた。

角田が質問する。

「大将。

 英明君もウチにスカウトするんですか?」

「当たり前だ。

 あんな逸材放っとく訳無いだろう?」

「確かにそうですね。」

「まずは明子ちゃんを呼んで

 次は英明君だよ。

 明子ちゃんの住む部屋は一人では

 広すぎるからな。」

「御両親には伝えてるんですよね?」

「ああ。

 明子ちゃんの時もだが

 親を心配させたくないからな。

 ウチにスカウトしたいとは伝えている。

 今は中学三年生の受験生だが

 志望校は余裕らしいから

 今、呼んでも大丈夫だろう。」

今度は飛島が質問する。

「大将、何で明子ちゃんに

 本当の事話さなかったんすか?

 明子ちゃん完全に抱かれる覚悟で

 来てましたよ。

 可哀想に。」

「御両親は俺の事を知ってたみたいだが

 明子ちゃんは俺を知らないからな

 そんなヤツに

【絶対に何もしないから!】

 とか言われて信じるか?

 ゴチャゴチャ言うより

 現場を見せる方が分かり易いだろ?」

「確かに。」

「大将、今戻りました。」

店に桂木が入ってきた。

「おう!

 お疲れさん!

 明子ちゃんはどうだった?」

「部屋の大きさにビックリしてましたよ。」

「まぁいずれは英明君も

 住むだろうからな。

 たまに御両親が来ても大丈夫な

 広さのはずだ。

 けい

 お前明日予定あるか?」

「明日は特に無いですね。

 彼女も仕事ですし。」

「なら明子ちゃんと恵の買い物に

 付き合ってくれんか?」

「良いですよ。

 でも自分だけですか?」

「安心しろとびも一緒だ。」

「えっ!

 聞いて無いっすよ!」

「お前は一度恵とちゃんと話せ。

 良いな!」

「はい•••」

「他に明日行けるヤツいるか?

 休日手当出すし好きな飯食って良いぞ。」

「マジっすか!

 俺行きます!」

「俺も俺も!」

何人か手を挙げる。

「大将。

 明日もカメラ回すんですか?」

桂木の質問に

「当然だ。

 よろしく頼む。」

と返す。

「姉ちゃんが楽しくやってるのを

 見せて英明君にも興味を持って

 もらうんだよぉ。」

「何で特○の拓の言い方•••

 まぁ口説く前に安心させるのは

 大事ですよね。

 それにしても英明君に

 メッチャ惚れてますね。」

「昔の俺を見てるようでな•••

 何て言ったらおっさん臭いよな。」

「事実おっさんだから

 しょうがないっすよ。」

「飛!

 おっさんはなぁ自分で言うのは良いけど

 言われると傷付くんだぞ!

 俺は今ギリ30代のデリケートな

 時期なんだよ!」

「大将も傷付くんすね•••

 ビックリです。」

「まぁとにかく英明君はウチに

 スカウトするぞ!

 欲しいモノは筋を通して

 手に入れるのが俺のやり方さ。」

「じゃあ良いじゃないっすか。

 何でジャイ○ンの言い方•••」

そんな話をしながら夜は更けていった。

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