第2話 DVDの続き•••

その後も焼肉屋さんには沢山の人が

集まって来ていた。

「店に収まりきらないから今日は

 商店街の飲食店全部貸しきるぞ!

 おい!

 他の店にもそう伝えてくれや!」

「はい!」

「行ってきます!」

「おい!

 大将が言ってるぞ!

 歩けるヤツは全員動け!」

永山さんの号令で一気に動きだす。

「他のラーメン屋や蕎麦屋•寿司屋

 居酒屋•Bar•スナックどこでも

 大丈夫ですので

 好きな所に入って下さいや!

 会計はこっちで持ちますから!」

永山さんの言葉に

「ありがとうございます!」

「肉はたっぷり食ったから

 次は寿司食おうぜ!」

「シメにラーメン食べてぇ!」

「はしご酒だ!」

とまた大盛り上がりしている。


画面の中から姉ちゃんがいなくなってた。

撮影している人が探すと姉ちゃんは

厨房で皿洗いをしていた。

「明子さん何してるんですか?」

撮影している人が声を掛ける。

この人は若い男性みたいだ。

「お二人が大変そうだったので

 お手伝いしてます。」

「いやぁーありがとうよお嬢ちゃん!

 若いのに気が利くねぇ!」

「バイト代出すからね!」

「バイト代なんてそんな•••」

そして撮影者さんを見て

「ながや•••鉄さんていつも

 こうなんですか?」

「いつもこんな感じだね。」

そう言って永山さんの方を撮影する。

永山さんは年配の御夫婦に頭を下げられて

「そんなの良いですから!」

と言っていた。

再び姉ちゃんが映る。

「あの夫婦の子供さんは俺達の同僚

 なんだけどさ過去にイジメにあって

 引きこもっていたんだよ。

 そこに大将が声を掛けてウチで

 働けるようにしたんだ。

 ここにいるのはそんなヤツ

 ばっかりだよ。」

桂木かつらぎさんでしたよね?

 あなたもそうなんですか?」

「ああ俺も明子さんと似たような境遇で

 実家の商売がヤバい時に

 大将に救ってもらったんだよ。

 銀行のヤツらは景気が良い時は

 「金借りませんか?」とか言っといて

 景気が悪いと融資を打ち切りやがる。

 ウチの場合は貸し剥がしされてさ

 合法だからって納得いかないよね。

 それで皆が頭を抱えてる所に

 大将が現れたんだよ。

 明子さんもそうでしょ?」

「はい。

 助けてもらいました。」

「大将はさ昔話の神様みたいな

 人なんだよ。

 真面目に頑張って

 それでも報われない

 人の所に現れて救ってくれる•••

 本当に神様だよ。

 •••ただ昔話の神様と同じで

 自分の欲の為なら

 何でもするような人間には

 

 そこは気を付けてね。」

「は、はい!

 気を付けます!」

「まぁ明子さんは大丈夫だとは

 思うけどね。」


そんな話をしていると

「鉄っちゃーん!」

と呼ぶ声がして、カメラがそちらを向くと

60代位の渋い男性がいた。

「会長!

 今日はゴルフじゃなかったんですか?」

「鉄っちゃんから連絡があったから

 すぐに戻って来たよ!」

「そんな•••

 御自宅の近くにきたから

 挨拶をしようと思っただけ

 だったんですが•••」

「その気持ちが嬉しくってさ

 会いたくて戻って来ちゃった。」

「何だかスイマセンね。

 さぁ奥の部屋にどうぞ!

 護衛の方達も!」

「ウチのもんがいるとお客さんが

 怖がるんじゃないかい?」

「会長の所の人達なら大丈夫ですよ。

 皆知ってますから。」

「そうかい?

 じゃあ、お言葉に甘えて。

 おい。

 外の若い衆呼んできてくれ。」

隣にいた強面の男性に声をかけると

「分かりました。」

と言って外に出て行った。

そして店の中に堅気かたぎとは思えない

男性達が入ってきた。

「さぁ皆さんも好きに飲み食いして

 下さいや!」

「「「「「ありがとうございます!!!!!」」」」」

「鉄っちゃんいつも悪いねウチのもんまで。」

「会長の所にはいつもお世話に

 なってますから、この位はさせて下さい。

 にいる人達も呼んで大丈夫ですよ。」

「お世話になってるのはこっちだよ•••

 いつもシノギ回して貰ってさ。」

「いやぁ回すのはばかり

 ですからね•••

 組織がデカくなるとそういう仕事も

 多くなりまして•••」

「ウチらはそれが本業だからね。

 何も気にしなくて大丈夫。

 ただでさえ暴対法で厳しい所に

 この不況だよ•••

 組員食わせていくのも大変でね•••

 鉄っちゃんには感謝しかないよ。

 今日のゴルフも付き合いで渋々さ。

 連絡くれて助かったよ。」

「まぁまぁ不景気な話は

 この位にしましょう!

 肉が来ましたよ!

 あれ!?明子ちゃん!?」

「お待たせしました。

 お肉お持ちしました。」

姉ちゃんは当たり前のように働いていた。


その後も会長さんは帰られたが

ドンチャン騒ぎは続き

「まだ続きそうだから一旦、

 明子ちゃんを送ろうか。」

という永山さんの言葉の後

場面が切り替わり高級そうなマンションの

前に永山さんと姉ちゃん達がいた。

「今日からここで生活してね。

 荷物はもう部屋にあるから

 今日はゆっくり休んでよ。」

「ありがとうございます。」

中に入っていくと綺麗な女性が立っていた。

「兄さんお帰りなさい。」

「おう。

 ただいまめぐみ

 この子が話をしていた明子ちゃんだ。

 色々面倒見てやってくれや。」

「分かりました。

 •••ウチの人はどこです?」

「さっきまでいたんだけどな。

 怖くなって逃げたんじゃないのか?」

「まったくあの人は•••」

「俺はまた商店街に戻るから

 後はよろしく。

 けい

 撮影頼むぞ。

 じゃあ明子ちゃんおやすみ。」

「おやすみなさい。」

そして永山さんは戻っていった。

「それじゃあ部屋に行きましょう。

 あ、その前に自己紹介を

 私は飛島とびしまめぐみと申します。

 永山ながやま 鉄大てつたの妹で飛島 振一しんいちの妻です。

 よろしくお願いします。」

西条さいじょう明子あきこです。

 よろしくお願いします。」

お互いに頭を下げる。

「じゃあお部屋に行きましょう。

 疲れたでしょう?」

恵さんはそう言いながら部屋に

案内してくれる。

エレベーターの中で

「こ、高級そうなマンションですね•••」

「そうね家賃はかなり高いと思うけど

 兄さんの所有だから分からないわね。」

「このマンションが全部

 鉄さんの物なんですか?」

「そうよ。

 だから住んでる人達も皆身内よ。

 だから安心して大丈夫よ。」

「俺もここに住んでるよ。」

桂木かつらぎさんもですか。」

「【ぱわぁ亭】にいた大部分がここに

 住んでるよ。

 家賃•光熱費•維持費何も要らない

 夢の生活だよ。」

「や、やっぱり鉄さん凄いんですね•••」

「大将はこれも福利厚生の一つだって

 言ってるよ。

 この御時世に給料以外もちゃんと

 してくれる職場は本当に

 ありがたいよ。

 まぁ給料もメッチャ良いけどね。

 もう明子さんもその仲間だよ。」

「が、頑張ります!」

「無理はしなくても大丈夫よ。

 まずは生活に慣れる所から

 始めましょうね。

 •••着いたわ。」

エレベーターを降りて綺麗な廊下を歩き

部屋まで着くと

「指紋認証と顔認証は登録してあるから

 ちょっとやってみて。」

「はい。

 引っ越しが決まった時に

 登録してあるはずですから•••

 •••きました。」

「さ、入って。

 今日からこの部屋が明子ちゃんの

 部屋だから。」

「凄い•••

 こんな広い所に私一人ですか?

 部屋沢山有りますよ?」

「そうよ。

 この部屋は全部好きに使って良いから。

 家族が泊まりに来ても大丈夫でしょ?」

「ありがとうございます•••

 さっき家族に会いたい時は好きに

 会いに行って良いよって鉄さんに

 言われました。

 待遇が良すぎてまだ夢を見てる

 みたいです•••」

「今日はゆっくり休んでね。

 続きはまた明日。

 そこのベッドを使ってね。

 私の部屋は隣だから目が覚めたら

 来てね。

 御飯食べながら話しましょう。

 それじゃあおやすみなさい。」

「おやすみ、明子さん。」

「おやすみなさい。」

そうして二人は姉ちゃんを残して

部屋を出る。

「それじゃあ恵さん

 自分も大将の所に戻りますので

 カメラお願いします。

 それではおやすみなさい。」

「お疲れ様。

 おやすみなさい。」

カメラを受け取った恵さんが

「これで一日目は終わりです。」

と言ってDVDが終わった。

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