第26話 嫉妬
【サイド:とも】
私の名前は家永ともこ。
地味でさえない普通の女子高生だ。
メガネをかけていて、そばかす顔で、正直あまり可愛いとは、自分では思えない。
けどそんな私を唯一可愛いといってくれたことのある男子がいる。
成瀬神、私の家の隣に住む、かわいらしい男の子だ。
私は別に、シンくんのことが好きとか、そういうんじゃない。
だってどうせシンくんは女の子に興味なんかないだろうしね。
シンくんが女の子に興味あるところみたことない。
それに私なんか特に女の子らしいところなんてない。
唯一私に女性らしい魅力があるとしたら、それはこの無駄に膨らんだ邪魔なだけで使い道のない大きな胸だけだ。
シンくんとは恋愛とかそういうんじゃないけど、中のいい友達だった。
シンくんとは小さいころから仲良かったし、幼馴染で、唯一無二の親友だった。
それはもう男とか女とか関係ない。
シンくんには他に女の子の友達もいないみたいだし、私だけのシンくんだと思っていた。
毎日学校に登下校も一緒にしていた。
けどある日、そんなシンくんの家に、家族が増えた。
同じクラスの霜月彩音さんが、シンくんの姉になったのだ。
最初はそんなの興味なかったけど、でも二人はめちゃくちゃ仲がいいみたいだ。
私は正直嫉妬した。
ずっとシンくんと仲いいのは私だけだったのに、急に現れたよくわからない女にシンくんをとられるなんて。
シンくんはいつもは女の子になんか興味ない感じだったけど、彩音の前ではデレデレして、鼻の下を伸ばして、正直ムカつく。
しかも、姉と弟でなんて、おかしいでしょ。
シンくんが性欲を出すなんて、そんなの嫌だ。
私だけが知ってる私だけのシンくんが好きだったのに。
私にとって、彩音はライバルでもあり、嫉妬の対象でもある。
よくわからない女がシンくんに色目を使うのは、許せなかった。
私のシンくんを返してほしい。
私は下校したさいに、彩音に話をもちかけた。
二人だけで話がしたいといい、シンくんを先に帰らせる。
「……それで、二人で話ってなにかな……?」
彩音は人当たりのいい笑顔で話しかけてくる。
まるで私のことなんて最初からライバルとして眼中にないかのように。
そういうところがさらにムカつく。
「ねえ、二人って姉弟なのに、手つないだりしてるでしょ……?」
「うん、そうだけど……? それがなに……?」
「私……それって変だと思う。だって同じ年の、しかも姉弟になったばかりの男女がだよ……!? 手つないで下校とかおかしいって! しかも二人は一緒に暮らしてるんでしょ……!? 親もいない一つ屋根の下で……! そんなの、間違いがあったらどうすんの……!?」
「おかしくないよ……! だって、家族なんだもん! 家族なんだから、それくらいするよ!」
「でも……気持ち悪いよ……! なんだか二人を見ていると、姉弟っていうより、恋人みたい……! いつもべたべたしちゃってさ。なんなのもう!」
ほんとうは、こんなに強い言葉で非難するつもりはなかった。
だけど話しているうちにこちらもヒートアップしてしまう。
いうつもりのなかったことまでいってしまう。
だって、この女ムカつくんだもん。
「私、きいたんだからね、昨日……。知ってる? うちのお風呂と、そっちの家のお風呂、ちょうど壁をへだてた向こう側なの。だから、昨日きこえてきたんだよ。二人が一緒にお風呂入ってるとこ……! おかしいよ! 高校生の男女が一緒にお風呂ってさ! 気持ち悪い!」
「なに……それ……。私と弟くんが恋人になったらいけないっていうの……? 一緒にお風呂入るのもだめなの? 家族なのに……? 私と弟くんがイチャイチャしてたらだめなの……? 私、弟くんといっぱいいちゃいちゃしたいよ!」
「え……? そりゃあ、当たり前でしょ……。姉弟なんだから、恋人になるってへんだよ! お風呂に入るのもへん……! もしかして、シンくんのこと、そういう目で見てるの……? もしかしてなにかえっちなことしてたの……!?」
だとしたら、気持ち悪い。
昨日二人がいっしょにお風呂に入ってたのは、なんとなく声がきこえてきていたから知っていた。
けど、その中でなにをしていたか、詳しいことはよくきこえなかった。
けど、そんなの知りたくない。
二人がなにしてたかなんて。
「あ、わかった」
「え……?」
「あなた……弟くんのこと好きなんでしょ」
「え……? ち、ちが……」
「それで、嫉妬してるんだね。わかったよ」
「ち、ちがうっていってるでしょ……!」
「でも、弟くんはあげないよ? 私、もう決めたんだから、お姉ちゃん彼女になるって」
「なにそれ……お姉ちゃん彼女って……」
ほんと、気持ち悪い……。
「嫉妬するのもいいけど。弟くんが愛してくれているのは私だから。負けないよ。あなたが弟くんをどうしようとするのも自由だけど、でも私と戦うなら、本気できてね。私、絶対に家族を手放す気、ないから……」
そういうと、彩音は家の中に入っていった。
冷静になって、自分の言ったことを思い返す。
私、醜い嫉妬なんかして、最低だ……。
でも、どうしても許せない、理解できない。
彩音がシンくんに近づくのが、とても嫌だ。
だったら、勝つしかない。
彩音からシンくんを奪い取るしかない。
シンくんをとりかえして、目を覚まさせてあげるんだ……!
あんな頭のおかしな姉に、洗脳されているだけ。
シンくんは……私のものだ……!
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