第27話 家庭の事情
まず、状況を整理したい。
僕の家に急に現れた霜月真里菜さん。彼女はなんと彩音の姉だという。だけど、その苗字は霜月ってことは……?
うん? どういうことなんだ?
「えーっと、二人とも、まずは説明してほしいんだけど……」
二人をソファに座らせて、僕は説明を求める。
「ごめんごめん、説明するね? まず、マリナお姉ちゃんは、私のお姉ちゃん……正真正銘血のつながった姉妹なんだ。でも、お姉ちゃんは、離婚したお父さんのほうについていったの」
「なるほど……そういうことか……」
霜月は彩音のお父さんの姓だ。
マリナさんはお父さんのほうについていき、彩音はお母さんについていったということか。
でも、どうしてなんだろう。
「マリナお姉ちゃんは、実はお母さんとは折り合いが悪くてね……それで、お母さんが新婚旅行にいってるこのタイミングで来たの」
「え? そうなの?」
あんなにやさしそうなお母さんなのにな。
「マリナお姉ちゃん、昔から歌手になりたくって、学校もいかずに音楽ばっかやってたの……。お父さんは放任主義だから、なにも言わなかったんだけど、お母さんはね、お姉ちゃんの夢に反対してる……っていうか……」
彩音がそう説明する。
そっから、説明をマリナさんが引きついだ。
「別にね、お母さんと仲悪いってわけじゃないよ? お母さんが心配して勉強しろとかっていってくれてたのもわかってる。だけど、私は自分の夢を追うことを選んだ。それで、東京で仕事してる父さんの家に転がり込んだんだ。それを無断で出ていったこと、お母さんはまだ怒ってるみたい……」
「そうなんだ……」
たしかに、そういう話はよくあることなのかもしれない。
だけど、マリナさんはもうすでに歌手としてそこそこ結果を出している、それなら、お母さんも認めてくれるだろうと思うんだけど……。
「でも、マリナさんはもう有名人じゃないですか! この機会にお母さんと会って、話し合えば……! お母さんも認めてくれるんじゃ……?」
「いやいや……有名人じゃないよまだまだ……。いまはまだバイトもしてるし、お父さんにも支援してもらってる。正直、まだまだ歌だけで食べていけるわけじゃない。かなり不安定な仕事だしね……。まだお母さんに自信をもって顔向けできるほどじゃないかな……」
彩音も、マリナさんとお母さんの不和を気にしているようで、母親と会うことをすすめる。
「そうだよ、弟くんの言う通りだよ! このままお母さんと話し合いして帰ったらいいのに。きっと、今のお姉ちゃんを見ればお母さんも許してくれるよ! もう大人なんだしさ!」
「うーん、彩音はそういうけど……。こればっかりは難しいかな……。お母さん、私には普通の道を歩んでほしかったみたいだし……」
「そっか……、ごめんね無理言って。でも、私は……昔みたいにまた仲のいい家族に戻ってほしいな……。だって、家族なんだから……」
「うん、彩音の気持ちはわかってる。ありがとうね。今日は泊めてもらって」
あれ、そういえば、マリナさんはなんで今回うちに来たんだろう。
しかも忙しいはずなのに、泊りでって……。
別にただ僕や彩音に会いに来たってだけじゃなさそうだ。
「マリナさん、東京でなにかあったんですか?」
「うん……実は……父親とももめちゃってね……」
「えぇ……!? それ、大変なことなんじゃ……!?」
「うんまあね……。だから、行く場所なくって……。それで、ちょうど彩音や新しい弟くんの顔もみたかったから、ここに来たってわけよ」
「そうだったんだ……」
なんだか、マリナさんの話をきいて、彩音が家族というものに固執する理由が少しわかったかもしれない。彩音は家族というものをすごく大事にしていて、それが壊れることをなによりも恐れている。
そんな彩音の性格を形作ったのは、マリナさんやお母さんの確執があったことが原因じゃないだろうか。
父親とももめたという話をきいて、彩音の顔はさらに暗くなる。
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。きっと、時間がたてばなにもかもうまくいくよ。だからそんなに落ち込まないで」
「うん、ありがとう、弟くん……」
僕は落ちこんだ彩音の頭をなでて、なぐさめる。
そんな僕らをみて、マリナさんはニヤニヤした顔つきになる。
「なになに~? 二人ともずいぶん仲がいいな~私もまぜろ! この!」
「うわ……!?」
マリナさんは僕と彩音を強引にハグすると、その大きな胸を押し付けて、ぎゅ~って抱きしめてきた。
き、気絶する~。
彩音とマリナさんのいい匂いに包まれて、僕は理性がどこかにいきそうだった。
これからしばらく、また騒がしい日々が続きそうだ……。
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