第23話 揺れる気持ち


【サイド彩音】




 朝起きて、朝ごはんを作ってくると、弟くんが降りてくる。

 こういう何気ない日常が幸せだな。

 家族っていう感じがして、とてもいい。

 やっぱり家族っていいな。


 弟くんは、私の顔を見るなりとんでもないことをいう。


「おはよう、お姉ちゃん」

「あ、うん。おはよう、弟くん」

「なんか、今日も可愛いね。お姉ちゃん」

「ふぇ……!? う、うん……あ、ありがとう……えへへ……」


 うぇぇ……!?

 なんかいきなり可愛いって言われて、照れてしまう。

 なんか昨日から、弟くんちょっとダイタン?


「お姉ちゃん、今日もご飯つくってくれたんだね。ありがとう。大好きだよ、お姉ちゃん」

「ふぇ……!? う、うん……。私も弟くんのこと大好きだよ。もう……朝からなにいってるの……」


 面と向かって大好きなんか言われると、さすがに照れる。

 これまでは私が一方的に弟くんに大好きっていうだけだったけど、自分が言われると照れちゃう。

 弟くんもようやく、私のことお姉ちゃんとして認めてくれたってことかな。

 弟くんと一緒にお風呂に入ったり、寝たりして、ようやくちゃんと本当尾家族になれたって気がするね。


 ご飯を食べて家から出ると、弟くんがいきなり手を繋いできた。

 私はびっくりして、思わず手を跳ねのけてしまう。

 不意に手を握られたから、びっくりした。

 今までは弟と手を繋いでもなんともなかったのに、なぜかちょっとどきっとしてしまって、自分に驚いたのだ。


 今までなら手くらいなんともなかった。

 だけど、さっき手が触れた瞬間、私の中でなにか熱いものが沸き上がってきて、瞬時に顔が赤くなった。

 これ、なんなの……!?


「え……? どうしたの? お姉ちゃん」

「あ、いや……なんでもないの。いこ」

「うん」


 私が手をはねのけちゃったせいで少し寂しそうな顔をする弟くん。

 ごめんね、ほんとは照れちゃっただけなの~。

 私はぎゅっと弟くんの手を握り返した。


 学校についてからも、なぜか弟くんの顔がまもともに見れない。

 なんか照れくさくって、顔を背けてしまう。

 うぅ~昨日までは平気だったのに。

 弟くんがあんなこと言うからだよ~。


『じゃ、じゃあぼくと恋人同士になるっていうのは? 僕、本当に彩音のことが好きなんだ……! それは、家族としてだけじゃない。家族になる前から好きなんだ……!』


 昨日弟くんがベッドで言った言葉を思い返す。

 家族になる前から好きだったって、それっていつから?

 最初から、弟くんは私のことが好きだったってこと?

 私たちって、元々両想いだったの?


 だったら、もしかしたら、私たちが家族にならなかったら、どっちかが告白して、恋人になったりしてたのかな……。

 弟くんが恋人……それって、どんなのだろう。

 ちょっと想像すると照れる。

 そんな想像してしまったから、余計に弟くんの顔が見れない。


 恋人になったら、当然、キスやエッチな事のその先も……するんだよね……?

 弟くんとそういうこと、しちゃうのかな……?

 恋人って、そういうことするんだよね……?

 うぅ……そんなの、恥ずかしくてできないよ。

 想像するだけでも恥ずかしい……。


 ちょっと待って、私、今まで弟くんにいろいろエッチなことしてきたよね。

 それって、家族だったら平気だけど、もし恋人だったら?

 恋人と一緒にお風呂入ったり、寝たりするのなんて、そんなの恥ずかしくてできない。

 今度から弟くんとお風呂に入るとき、どういう顔したらいいの~!?

 家族だからできたことが、異性として意識しちゃうと、恥ずかしくてできない。


 だめだめ、弟くんはあくまで可愛い弟くんなんだから。

 異性としてこれ以上意識しないようにしないと……!

 弟くんを異性として見るなんて、お姉ちゃんとして失格だよね。

 そんなの、家族に欲情する変態お姉ちゃんだっていわれちゃうよ。

 なんかさっきから弟くんとエッチな想像ばかりしちゃう。

 学校でこんなこと考えてたら、ほんとうに変態だ。 


 ふと、授業中に、弟くんがどうしてるか、気になって弟くんのほうを見てしまう。

 すると、弟くんは私のほうを見て、にこっと笑いかけてくる。

 もう……! 可愛いな……!

 私は照れてしまって、思わず顔を逸らす。

 だめだ、なんか弟くんのこと、変に意識してしまう~。

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