第11話 休み時間2
「もー、男子って馬鹿ばっか。彩音のこと、そういう目でみないでくれる?」
「ってーな、高橋。なにすんだよ」
僕はさっきぶりの高橋さんに「あ、高橋さん」とあいさつする。
エロい話を男子だけでしようと思っていたところに、女子がやってきて、不満そうな溝口くん。
溝口くんは「でもよぉ」と切り出した。
「実際のところよぉ、血のつながってない男女が一つ屋根の下ってのはどうなんだ? なにか間違いがあったらどうすんだよ。成瀬も女みてえな可愛い顔してっけどよぉ、中身は一応男だろ?」
また可愛いとか言われた。てか男からも可愛いく見えるのか、僕……!?
一応ってなんだよ……。
僕はれっきとした男だ。
溝口くんの疑問に、高橋さんが余計なことを言う。
高橋さんはめっちゃニヤニヤして言う。
「私みちゃったんだよね~。さっそく二人で手つないで登校してたよね。もしかして、もう付き合ってたりするの……? ねえ、実際のところ、二人はどこまで進んでるの?」
はぁ……マジで余計なこと言わないでくれ。
高橋さんの一言に、男子たちがもりあがる。
「うおおおマジか! 意外とやるじゃねえか成瀬! 見直したぞ!」
「くそーいいなぁ、女子の手とか俺握ったことねえよ……」
「ついに成瀬も彼女もちかーうらやましいなー」
どう否定しようかと迷っていると、そこに現れたのは他でもない彩音だった。
彩音は信じられないくらい冷たい声で、
「え……? シンくんは彼氏じゃないよ。なにいってんの」
と否定した。
いやそこまで否定しなくても……。
事実だけど、ちょいショック?
彩音の珍しくドスのきいた声に、周りも驚いて、ちょっと引いている。
「お、おう……そうか。悪かったな」
溝口くん、素直に謝る。
彩音は、今度はあっけらかんとした口調でいう。
「姉弟が付き合うはずないじゃん! だって、家族なんだよ?」
「いや、それはまあ、そうだけど……でも二人は血繋がってないんだし、そういうことになる可能性もあるだろ……?」
「いや、ないって、絶対。あり得ないよ、そんなこと」
溝口くんの疑問に、彩音は全力否定……。
そんなに否定されると、俄然ショックだ。
いや、僕もなにも彩音と付き合いたいとか、付き合えるとか思っていたわけじゃない。
もちろんもともと彩音のことは好きだったけど、こうして家族になった以上、付き合うってのもたしかにおかしな話だろう。
それに、もともと僕は彩音と釣り合うとも思ってないし、付き合いたいなんて思っちゃいなかった。
けれども、そこまで否定しなくてもな……。
「じゃあ、だったらなんで手なんかつないでたんだよ?」
「だって、弟君のことがだぁいすきだからだよ! 仲のいい姉弟が一緒に手を繋いで登校するのって、なにか変かな?」
「いやべつに、変ではないけど……」
そんなふうに大好きとか言われると、ちょっと照れるな。
でも、彩音の僕に対する大好きは、あくまで弟として、なんだろうな。
僕のことは弟としては見れるけど、彼氏にはできない、そういうことなんだろう。
それって、喜べばいいのか、悲しめばいいのか、どう感じればいいのかわからない。
彩音の中で、僕っていったいなんなんだろう。
「てか、なんでそんなに成瀬のことが好きなんだよ。家族になったばかりなんだろ?」
「でも、前からシンくんのことは好きだったよ?」
「それって、男としてってことか?」
「うーん、こんな可愛い子が弟ならなーって感じかな」
「ふーん、よくわかんねえな。でもま、お前らが幸せそうなら、それでOKです」
溝口くんから名言が出たところで、休み時間は終了した。
はぁ……やっと解放された。
でも彩音の考えは僕もよくわからないや。
急に僕を誘惑したりからかってきたりしたと思ったら、僕のことはあくまで弟だっていうんだもんな。
あれは彩音なりに僕と仲良くなろうとした結果なのかもしれないな。
まあもともと関わりのなかった彩音と、ここまで仲良くなれただけでも、僕としては幸福と思うべきなのかもな。
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