第43話
湖を出てすぐに私は目を凝らした。微かにだけど地面に赤色の液体がポタポタと溢れていた。
(これはおそらく……ソフィアの血だ……)
なので私はその血を目印にして森の中を駆け抜けて行った。そしてソフィアの血を辿って行くと私はとある川辺に到着した。そこは先日私がアイシャと遭遇しかけた川辺だった。
(あ、あれは……!)
そしてその川辺には石像で出来た魔物がいた。あれは
(い、いた……! でも……えっ!?)
そしてそのガーゴイルの目の前にはソフィアが立っていた。どうやらソフィアはガーゴイルに襲われそうになっている最中のようだった。
でもそれだけじゃない……ソフィアの体には異常な事が起きていた。
(そ、ソフィアの身体が……石化している?)
ソフィアの体は下から上半身の胸の辺りまでが石になっていた。これはどう考えても石化技を食らってしまったという事だ。
そしてこんな石化技を使える魔族なんて限られている……そんなのはもちろんアイシャしかいない。つまりさっきまでアイシャはここにいたという事だ。
(という事は今もまだアイシャはこの近くにいるかもしれないけど……)
でもそんな事を考えている時間はもう私には残ってない。何故ならソフィアの近くにいるガーゴイルは口を大きく開けてソフィアの頭を嚙み砕こうとする寸前なんだから。だから私は全力疾走でソフィアの元に駆けつけた。そして……。
(
私は心の中で肉体強化を唱え、そして目の前のガーゴイルを全力で殴りつけた。
―― ドォンッ!
するとガーゴイルは大きな音を立ててそのまま遠くへと吹っ飛んでいった。
(ま、間に合った……)
ソフィアが襲われるギリギリの所で何とか間に合う事が出来た。殴り飛ばす時にガーゴイルの叫び声が聞こえた気がしたけど、でも私はそんなの気にせずソフィアの方を見た。
「な……なん、で……?」
ソフィアは私の事を見てそう一言だけ呟いていた。まだ意識はあるようだけど……でもソフィアの体は今も進行形でどんどんと石化していっている。
(ま、まずい……!)
私は急いで石化しているソフィアを抱きあげた。
「ぅ、うわっ……ぁ……?」
ソフィアはいきなり抱き上げられてビックリしたような声を出した。でも石化の影響なのか、ソフィアはぼーっとしていて、自分自身の状況がよくわかってないような感じだった。
そんなソフィアの様子を見て私は酷く焦った。
(ま、まずい……早く街に向かわないと……!)
今のこの時点でさえ危険な状態なのに、このままだと近い内にソフィアの全身が石になってしまう。そうなってしまったら……このままだとソフィアの命が……。
(ソフィアの体を治すために早く街にいかないと……ソフィアが……!)
今もこの近くに他の魔族やアイシャがいるかもしれないのだが、でもそんな事を考えている時間はもうない……。
なので私はもう一度自分自身を奮い立たせていき、そしてこの川に沿って森の中を全速力で駆けだした。
◇◇◇◇
(はぁ、はぁ……)
私はソフィアを抱きかかえながら川沿いをひたすら走り続けた。でもソフィアの石化は既に首元まで進行していた。
「ぁ……ぅぁ……」
ソフィアの目は虚ろになり、呂律は回らず、声もどんどんと弱々しくなっていた。ソフィアの息はまだあると言っても……これではもう時間の問題だ。
(早く、早く、早く!!)
私は休むことなく無我夢中で森の中を駆け抜けていった。私は走って走って、走り続けて……。
(はぁ、はぁ……)
休む事なく走って、走って、走り続けて……そしてついに私は森を抜ける事が出来た。
森を抜けるとそこには青々とした草原が広がっていた。そしてその風景は生前の私には見覚えがあった。これはまさしくゴア地方の風景だった。
(はぁ、はぁ……ナイン地方を、抜けれた……!)
これで私達はようやく魔族が占拠しているナイン地方を抜ける事が出来たんだ。そしてもう既に夜は明けていた。森を抜けた時にはもう朝日が差し込んでいた。
(はぁ、はぁ……ゴア地方に……はぁ、はぁ……入ったんだ……あ、あれは……!)
そして私達から少し離れた場所に外壁で囲われた建物が見えた。あの外壁も私には見覚えがあった。あれはまさしく……。
(ヤウスだ……!)
そこはゴア地方で一番大きい都市である“防衛都市ヤウス”の外壁だった。あそこまで行く事が出来ればきっとソフィアは助かる……! だから……だからあと少しの辛抱で助かるんだ……!
(はぁ、はぁ……もうすぐだよ……! もうすぐ助かるんだよソフィ……ア……?)
でも……ソフィアの反応は……もう無かった……。
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