第44話
(ソ、ソフィア……? う、うそだよ……ね……?)
ソフィアの体は全身が石化してしまっていた。私の声はソフィアにはもう届いていなかった。
(そ、そんな……だって……)
私は膝から地面に崩れ落ちた。私は間に合わなかったんだ。でも私はその事実を認める事が出来なかった。
(だ、だって……だってそんな……だ、だって……ソフィアは勇者パーティの一員なんだよ……?)
そう……ソフィアは今から8年後の世界ではちゃんと生きていた。ソフィアは8年後の世界では勇者パーティの一員として魔王軍と戦う魔法使いの女の子だった。
だから……本来ならこんな所でソフィアが死ぬわけないはずなのに……それなのに……それじゃあ……つまり……ソフィアがこんな所で死んでしまったのは……。
(……私の……せいだ……)
あの時私がソフィアを助けに行かなければ……きっと周りの兵士がソフィアを助けたはずなんだ。だって私が何もしなかった世界線ではソフィアはちゃんと生きて勇者パーティの一員になっていたんだから……。
私は自責の念に駆られてしまい……全身が石化してしまったソフィアを抱きしめながら私はうずくまった。涙もどんどんと溢れてきた。
(ごめん……ごめん……本当に……ごめん、なさい……)
私はソフィアに向かって泣きながらひたすら謝った。
(……もっと早く私が駆けつける事が出来てたら……)
そんな自責の念で私の頭の中は一杯だった。私はソフィアを救う事が出来なかった。
その時ふと自分の腕にハメられている腕輪を見た……それは口封じの腕輪だ。私が今喋る事が出来ない理由はこの腕輪のせいだった。
(……この腕輪のせいで……)
もしあの時……この腕輪を無理矢理にでも壊していれば……ソフィアと意思疎通が取れていれば……こんな事にはなっていなかった……ソフィアを救える道はあったんだ……私が……私が……!
(
私は自分の腕にハメられている腕輪に目掛けて非常に強力な毒魔法を唱えていった。今更こんな事をしてももう遅い……でも私を罰する痛みがないと……もう私は立ち上がれそうにもなかった。
―― じゅわぁああ……っ……!
腕輪には非常に強力な毒がどんどんと回っていき、みるみるうちに腕輪がボロボロに腐食されていってるのが目に見えてわかった。しかし……。
(ぐっ……がっ……ぁ……!)
当たり前だけど、私の腕にもポタポタと強酸性の毒が零れ落ちていった。8年後の私ならばある程度の毒耐性は持っていたけど……今の私はただの12歳の子供だ。
だから今の私には毒に対する耐性なんて皆無だ。私の腕は自分の毒に侵されどんどんと皮膚が爛れていっていたし、尋常じゃない程の激痛が私の身体に走った。
(ぐっ……ぁ……!)
でも私はその痛みをひたすら我慢した。この痛みは私にとっての罰なのだ。だから私はひたすらとその毒に対する痛みを我慢していった。
―― ぱき……ぱき……!
それから少しすると、ようやく私にハメられていた腕輪から亀裂音が鳴り響いていった。なので私は激痛に耐えつつそのボロボロになった腕輪を思いっきり引っ張り無理矢理腕から外してみせた。
―― ばきんっ!!
「ぐぁああああ……はぁ……はぁ……っ……! う、うぁ……」
無理矢理外した腕輪を遠くに投げ飛ばしたが、しかし私はそのまま自分の腕を押さえつけながらうずくまった。
腕輪を外してようやく喋れるようになったというのに……一番最初に出した言葉は激痛に対するうめき声となってしまった。
そして私は地面にうずくまりながらも、もう一度自分の腕を確認してみた。私の腕は赤黒く変色しており、皮膚もぐじゅぐじゅに爛れてしまっていた。このままではすぐに自分の腕は腐り落ちてしまう事になる。
「はぁ……はぁ……
なので私は腕を抑えながら解毒魔法を唱えていった。これで私の身体に毒素が巡り回ってしまうのを防ぐことが出来る。
まぁそうは言ってもこの腕の傷や皮膚の爛れまでは治す事は出来ない。あくまでも解毒魔法であって、治癒魔法ではないのだから……。
「はぁ……はぁ……つぅ……」
私は激痛に耐えながらも立ち上がった。いやそれにしてもまさか自分自身に毒魔法を使う日が来るなんて思いもしなかった。あぁ、解毒魔法を覚えておいて本当に良かった……って、あれ……?
「はぁ……はぁ……解毒、魔法?」
その時、私はとある事を閃いた。これなら……もしかしたら……。
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