第17話 洞窟内の攻防
五人が警戒して洞窟内を進むと、天井が高い大きな洞穴に出た。
これまでの通路とは違い、広々としたエリアが広がっていた。
森の地下にこんな場所があるなんて……
ロジェは、あちこちに岩石が転がっている空間を眺めながら、敵の気配を警戒した。
魔素の濃さに、顔をしかめたメロ呟く。
「この洞窟にこんな広い場所があるなんて……それにしても、魔素が濃いですね……」
バルドも辺りを警戒して声を掛ける。
「……魔素が濃すぎて、『探索』が使えない……魔物の気配が分からないぞ……みんな、気を付けろ……」
慎重に警戒を強めながら、広い洞穴をゆっくりと確実に進む。
突然、レイナルドが前方を指差した。
「あれを見ろ……」
そこには、岩に
血を流し、意識が無いようだった。
ミレーラが駆け寄ろうとするのを、ロジェが止める。
「……罠だ」
不気味な笑い声を出しながら、後方から杖を持ち、ローブを
「キヒャヒャヒャヒャ」
身を隠し潜んでいた武装したゴブリン共が、周囲の横穴から五人を囲むように現れる。
レイナルドが叫ぶ。
「気をつけろ、あれは、ウィザード・スケルトンだ」
「ヒャーッヒャヒャ」
ウィザード・スケルトンが杖を構え魔法を唱えると、洞穴内の床から、大量の骸骨【スケルトン】が現れた。
ロジェはミレーラを守るように剣を構えた。
「ミレーラ、俺から離れるなよ……どうやら俺達は、救助者をエサに待ち伏せされていたようだ……」
五人は背中合わせで中央に固まる。
ウィザード・スケルトンから黒い光が放たれた。
「マジックシールド」
メロが杖を構えると光の壁が出現し、黒い光を防ぐ。
ミレーラが魔法を唱えると、五人が光に包まれた。
「プロテクション……皆さんに防御力強化の魔法を掛けました」
レイナルドは、ウィザード・スケルトンに向かって走り出した。
「ウィザード・スケルトンは私が相手をする。お前達は、敵を殲滅しつつ、救助者に向かってくれ」
行く手を阻もうと現れる骸骨を、次々になぎ倒しながら一直線に杖を構える髑髏に向かう。
「よーし、やってやるぜ。フル・アースブレイド」
バルドの魔法を唱えると、いくつもの岩の刃がズドンズドンと地面から飛び出し、魔物達を貫いて行く。
岩陰から襲い掛かるゴブリンとスケルトンに、ロジェが剣を振るい、次々と切り伏せる。力を込めた剣からは、斬撃が発生し、道を作るように魔物を切り裂いていく。
「一気にあの岩まで進むぞ」
ロジェの掛け声と共に、男が捕まっている岩まで魔物を殲滅しながら、真直ぐに進む四人。
しかし、岩に近づけば近づくほど、一向の前に大量のスケルトンが出現する。
ロジェはミレーラを守りながら、迫りくるスケルトンを破壊し続けた。
「……キリが無いな……」
「キヒャヒャヒャヒャ」
その頃、不気味に笑うウィザード・スケルトンとレイナルドは相対していた。
ウィザード・スケルトンが杖を振るうと大量のスケルトンが現れ、一斉にレイナルドへ飛び掛かる。
レイナルドが魔法を唱える。
「……トルネード」
周囲が竜巻に覆われ、スケルトンが巻き込まれると、竜巻内で発生した風の刃により、粉々に粉砕されていった。
次の瞬間、レイナルドは間合いを詰めてウィザード・スケルトンに斬りかかる。
――だが、ウィザード・スケルトンの後方に発生した黒い霧から、突如、巨大な骸骨の腕が現れ、レイナルドの攻撃は防がれた。
「変わった魔法だな……その杖の力か……」
「キヒャヒャヒャヒャ」
ウィザード・スケルトンはさらに不気味に笑っている。
巨大な腕は、さらに四本に増え、レイナルド目掛け、あらゆる角度から攻撃を仕掛けた。
ドカンドカンと巨大な腕が地面に振り下ろされるたびに、衝撃が走る。
レイナルドは猛攻を避けながら、隙を見て、ウィザード・スケルトンに攻撃を加えるが、ガキンという音と共に、巨大な腕に防がれ続けた。
「キヒャヒャヒャヒャ」
不気味に笑うウィザード・スケルトン。
「固い腕だ……このままでは、厳しいな……フラッシュ」
レイナルドの魔法が辺りを照らすと、ウィザード・スケルトンは眩い光にたじろぎ、後退する。
その隙にレイナルドは、自身の目の前に輝く空間を出現させると、装備中の剣を入れ大剣を取り出した。巨大な大剣を構えるレイナルド。
レイナルドを目掛けてウィザード・スケルトンの腕が振り下ろされる。
振り下ろされた腕を紙一重で躱すと、打ち下ろされた腕、目掛けて掛け大剣を振るった。
「ぅぉぉぉぉぉぉぉ」
声を上げたレイナルドが力いっぱい大剣を振る。
「「ボカン」」
鈍い音を上げ、大剣が腕に当たると、まるで破裂するかのように、強力な攻撃が巨大なウィザード・スケルトン腕を粉々に吹き飛ばした。
さらに、上方より巨大な腕が振り下ろされる。
「その攻撃は見切っている」
レイナルドは大剣を腕目掛けて振り上げると、巨大な腕を二つに切り裂いた。
ウィザード・スケルトンを睨むレイナルド。
「さて、残りはあと二つだ」
ウィザード・スケルトンが、後退するように空中に浮かぶ。
「逃がさんぞ。フェアリーグレス」
レイナルドが緑色の光に包まれると、ウィザード・スケルトン目掛け、空中を駆け上がり、頭上から大剣を振り下ろした。
巨大な両腕でガードし、防がれたかに見えた。
……が、振り下ろされた大剣は両腕ごとウィザード・スケルトンを両断した。
レイナルドは着地をして大剣を地面に刺し、ふぅーと息を吐いた。
「……相変わらず、重い剣だ……」
ウィザード・スケルトンが消えたことで、周辺のスケルトンは、動きを止め、崩れていった。
(あいつらは、無事か?)
レイナルドが岩へと向かう一向に目をやると、スケルトンの猛攻に耐え切った四人が、救助者に近づいて行くのが見えた。
――と同時に、巨大な影が上方から落下していくのを
大きな地響きと
「なんだ今のは、何が起きた……くそっ」
レイナルドは四人がいる方向へ急いだ。
マジックシールド=光魔法 初級……魔法防御の盾を出現させる
プロテクション=光魔法 初級……防御力を強化する
トルネード=風魔法 上級……対象周辺に竜巻を発生(内部は風の刃が吹き荒れる)
フェアリーグレス=風魔法 上級……一定時間、空を駆けることが出来る
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