record_010 encounter(2)
「どうしたの?」
今回は直ぐにEZ136が応じた。
「ごめん、直接話したほうが早いと思って」
「ううん。丁度よかったわ。これを見て」
EZ110の使用端末のもとへ、DDt40も含め三者は集まった。其処には無数のウインドウが開かれ、最も上に一枚の映像ウィンドウが表示されている。ヘッダーには地点9997小区画と記されている。区間
EZ136はその中に、ぼやけた人影を認めて、顔を顰めた。
「暴走者?それとも……」
「判らない。でも、誰かが追われてるみたいなのは確かだわ」
「暴走してる奴ってあんまりひとりだけを追い回したりしないもんな」
DDt40の言葉に、EZ110は頷く。カメラに映し出された人影は、まるで意思を持ったように追い、追われているのだ。今は互いに手の届くほどの距離ではないが、きっとそのうち追い付くであろう。あまりに
EZ136は端末から視線を逸らし、凛とした声を鳴らす。
「今すぐ地点8869へ急行するわ。監視官ふたりはこの人影を追跡して、動きがあったら逐一報告してちょうだい」
「オッケー」
「わかったわ」
監視官ふたりが応じると、EZ136とEZ333は駆け足で退室した。螺旋の
急いで現地へ飛んで行く彼らの姿が視えなくなると、EZ110は
「無理!オンラインにしたい!」
「故障ならいいけど、ウイルス感染だったりしたら……」
EZ110が
「ちょっと止めてくれよお。そんなんだったら、全区画危ないじゃん」
「きっと思い過ごしよ。今までだって、共通系がウイルス感染したりしたことないじゃない」
EZ110 は努めて苦笑した。あまり悪い方向に考えるものではない――だが、その不安は完全に解消されることはなく、ずっとEZ110の胸を燻った。その様子を察してか、DDt40は白い歯を見せて笑い、EZ110の背を強く叩いて云った。
「この追いかけっこしてる奴らの監視と併せて、他のカメラも確認しよーよ。私たちに出来るのは、巡回くらいなんだから」
「そうね……」
EZ110は苦笑すると、他のカメラ画像の捜索も同時に確認し始めた。丁度他のウィンドウを開いてしまっめいたために心付かなかった。人影の映るウィンドウ上で起きた出来事に。人影の片方が大刀型簡易刑執行
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EZ136はバイクの速度を最大限に上げて、EZ333 と共に路を
EZ333がEZ136へ並行してバイクを走らせると、声を張って告げる。
「あと少しで目的地だ!」
両者とも急カーブを曲がり、目的地点へ這入った。煙が一層濃くなり、視界が酷く悪い。EZ136とEZ333両名はバイクから降りると、バイクを路端へ停めて
煙を払いながら、周囲に警戒しながら両者は進んだ。時おり路に転がる市民のうめき声がするが、EZ110の云っていた「追われている
EZ333は顔を歪めながら、悪態付くように言葉を落とす。
「煙が酷いな」
「そうね」
その上、先程の揺れの影響か建築物や機材の破片で足場が悪い。EZ136 は誤って地に転がる
「サーティス、御前は地味に危なっかしい」
「ごめんなさい……」
EZ136は頬を掻きながら、姿勢を正す。EZ333は呆れた風に眉根を寄せ、彼女の腕から手を離そうとした。その瞬間。
劈くような叫び声が轟いた。とても、正気とは思えぬ甲高い声である。悲鳴というよりは単純に「叫んでいるだけ」のような音。それと同時に、ズガンッという激しい銃声が鳴り響いた。その音にEZ136とEZ333は互いに見合い、息を呑んだ。それは、刑執行
両者は急ぎ音の鳴らされた方角へ
「はあ!?」
それは暴走した
EZ136は〈カムイ〉を握り直すや、彼らの中へと飛び込んだ。ひとり、またひとりと薙いで穿ち、その動きを止めてゆく。更に突き進んで、彼らの行く手を追う。進んでいくうちに、白んだ視界の中で一瞬、燃えるような赤い髪を見た。それはEZ136と同じ執行官を表す髪色である。
(まさか、生き残り!?)
EZ136は周囲の
「……れ、……か……」
「……れ、か……聞こえ……るか……」
「誰か、私の声が聞こえるか」
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