record_008 ruined city(4)
エントランスでEZ136はEZ333と共に、
「ふむ。これはもう少し軽量化の余地がありますね……」
その傍ら、EZ022はEHbb0がオフライン情報収集
EZ136はふと、EZ333が同時に二体も黒服の骸を担いで二階へと上がって行くのを見て、顔を引き攣らせた。G5の市民の多くは非力だ。彼らの主な業務は頭脳を用いたもの。それゆえか、彼らの身體は肉体労働をするように出来ていない。例外は戦闘に特化した
「あんた、重くないわけ?」
「ふたりくらいなら問題ない。というより、その言葉をそのままお前に返したい」
彼の視線の先で、EZ136はけろりとした様相で四、五人も肩に乗せている。EZ333ならば立ち上がることも叶わぬであろう。
「私は執行官だもの。その代わり、数式とかよく理解からないのだけれど。お陰でトゥトゥには馬鹿だの阿呆だの言われるわ」
深々と息を吐く。多くの市民は頭脳労働型。だがその中にも優劣は生じており、ランクの高いものは
EZ136の言葉に、EZ333は一瞬語を詰まらせ、低く声を押し鳴らす。
「……さして俺も変わらんな」
「あんたは医務官じゃない」
「数式とは無縁だ。器具を使うだけだから」
G5 の医務官は研究者ではない。決められた手順に則って、与えられた選択肢の中で治療行為を選択し治療器具を操作する。EZ136は「確かに」と語を溢すと、彼の両肩に乗せられた市民へと視線を遷す。
「でも、その腕力はいらなくない?」
「いや、これでもかなり筋力がいる役職だぞ?」
「え、何?殴る蹴るが必要な場面があるの?」
「ああ」
EZ333の台詞に、EZ136は後退る。EZ333は両肩に市民を乗せたまま肩を竦めて見せ、溜息混じりに語を継ぐ。
「暴れる患者や逃げ回る患者がいるんだよ」
「はあ?拳で語り合わないといけない患者なんているわけ?」
「
ああ、なるほど。脳筋には脳筋ということか。EZ136は冷たい汗を額に伝わらせながら、「ハハハ」と空笑いをして「なんかごめん」と呟く。EZ333は
「お前は頼むから大人しく治療させてくれよ」
「大人しくしなかったら?」
「腹か頸に一発見舞って黙らせる。執行官含め、大抵のやつはこれでいける」
それは気絶させているだけではないのだろうか。等という語は喉の奥に仕舞い込み、EZ136は小さく返した。
「気を付けまーす……」
「そうしてくれると非常に助かる。殴った後に数倍返しを試みる面倒な輩もいるんだ」
「それは、うん。確かにやりそう」
EZ136は多量の冷や汗を掻きながらも、EZ333に続いて
「お前は誰よりも骨が折れそうだ。トゥトゥに医療用拘束具と防御壁でも開発してもらうかな……」
あ、駄目だ。これは何が何でも迎え撃つ
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一方で、分析官両名は専用情報保存
EHbb0は携帯用キーボードを叩くぼさぼさ頭の
「しかし、現場に出張りたがる
「そうですかー?へへへ……これはやり甲斐がありますねえ。ぐへへ」
奇妙な嗤い声を上げ始めた男に、EHbb0は僅かに後退る。彼が変人であることは有名であるが、実物を見るのは初めてである。どうせ色々と尾ひれが付いた噂だろうと踏んでいたのだが、どうやら事実らしい。
「矢っ張り。怪我でもしているのか分からないけれど、どれも〈スイレン〉の弾痕があるわね。あと、一部は刀痕もある。武器は最低ふたつ携帯しているみたい。……あと」
「あと?」
EHbb0は小首を傾げる。D7100は
「刀痕の位置がやけに低いものがある」
「は?執行官はサーティス除いてひとりでしょう?男型ってなんかやけに皆背が高いじゃない。この開発者だってそうだし」
「素体は男か女、もしくは
にやにやと嗤うEZ022にEHbb0は眉を顰め、「素体?」と尋ねる。それは知らない用語だ。EZ022は一寸口を噤むと、ケラケラと嗤い、
「なんでもないでーす」
と誤魔化した。まったくもって意味のわからない男だ。相手をしていたら疲弊しそうだ。EHbb0は顔を歪めて閉口していたが、深々と嘆息を溢して言葉を返した。
「怪我の所為じゃない?例えば負傷した腹を抱えて応戦してるとか」
「そうなると、本当に早く見付けてあげないと……弱っているとウイルス感染し易い」
「もう何処かで死んじゃってるかもよー?寧ろ、暴れ回ってる方が怖いかも……。私たちじゃ太刀打ちできないじゃん」
それは最もである。戦闘に特化した執行官に敵うのは、執行官のみ。それも優劣があるので、女型で若いEZ136は不利になる可能性がある。分析官両名は厭な沈黙に包まれたが、忘れることにして作業へと戻った。
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