record_004 slight sleep(3)
大型スクリーン上に全区画の
「先ほども説明した通り現在、当該地区の警報は停止させております」
凛とした女の声だ。長い白髪をきちんと団子に結っている様子からも、彼女のしっかりとした性質が読み取れる。B4050補佐官は
それは、何とも悲惨な光景であった。幾人ものの
「ウイルスの集団感染……?」
B4050補佐官は静かに
「おそらくそうだと考えられます。既にEZ136。貴女にもその一部に対処してもらいましたが、おそらく今朝から騒ぎになっている新型ウイルスの感染者ではないかと考えられます」
それは新型ウイルスに関する、分析室からの報告書だ。其処には
度々こういった報告が上がり、ワクチンが開発されるまでの
朝からEZ136が対処していた処分対象者も同様の判断がくだされ、刑執行に至ったのだ。だが、緊急要請のあった処分対象者はすべて刑執行が完了している。動画のように、感染爆発など起きていない。EZ136は困惑し、言葉を返した。
「なんで900ナンバーの地区だけこんなことになっているの?他の区画みたいに地道に対処していれば……」
「900ナンバーの初期感染者の多くが、
さらに新たな動画が表示された。其処には、
「明朝より、
B4050局長が云い終えると、会議室で着席していた全局員が一斉に立ち上がり、敬礼した。EZ136もまた同様に挙手の敬礼をし、「
視界の左端には幾つかの新たなウィンドウが開かれ、先程のB4050局長の云っていた指令書が表示される。EZ136の担当地区はr998a1区やr999a1区に最も近い、r997a1区とr996a1区だ。担当
EZ136の横で、EZ110も心付いたらしい。EZ136の方を見ると、にこやかに「よろしくね」と微笑んだ。EZ136も微笑み返すと、指令書に記されたr997a1区の担当者の一覧を上から下に眺めた。その中に、担当
「担当
記されていた名はEZ
「そうみたいね。それに、作戦に協力する
EZ110の言葉に、EZ136は顔を引き攣らせた。それは先程の
「え、嘘。本当だ。トゥトゥまで……」
「そうみたい。言っちゃあれだけど……同窓会みたいでちょっと嬉しい」
「ひとりいないけどね」
きっぱりとEZ136は云い切ると、EZ110は残念そうに苦笑した。
「そうね。ナインエイトもいれば、
通常はひとつのナンバーに対して数千人はおり、すべての同ナンバーの者の名や顔を記憶するのは難しい。されど、その理由は不明だが、EZナンバーの
「ナインエイトって何処に所属したんだっけ?
「私も知らないの。「移送」がほら、ナインエイトだけ半年ずれちゃったから……」
「ま、あいつのことだから元気にやってるわよ」
「そうね」
「さ、急いで向かいましょう。どうせ、しばらく休息はなしよ」
EZ136は指令書のウィンドウを閉じるや、すっくと立ち上がる。EZ110は「そうね」と苦々しく笑うと続いて立ち上がる。
周囲では同僚同士で担当地区を尋ね合っている。その配属がどうあれ、彼らは突然の惨事に胸を痛め、不安で顔を曇らせ、そして励まし合っている。EZ136とEZ110の両名は席を離れ、任務の支度をすべく急ぎ会議室から退室した。
――与えられた指令は大きく分けて三種。先ずは危険地帯に残された
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