後編



 ケイは雑木林方面を優先的に調べたかったが、一応近い場所から順番に見て回ろうと、砂浜海岸にやって来た。


 そして、それを見つけた。

 潮が引いて広くなった砂浜に、寄せては返す小波さざなみの音。小さな蟹が青白く濡れたうなじを這い、頬を伝って砂地へと下りて行く。


「あ……あ、相棒……あれ……あれって……」

「……」


 立ち尽くすケイ達の、三メートルほど前方。砂浜にうつ伏せで横たわっていたのは、恵美利だった。衣服の濡れ具合や絡みついた海草などの様子から見て、海から砂浜に打ち上げられたらしい。


「哲郎、旅館に連絡して、人を呼んで来てくれないか。それと、カメラを貸してくれ」

「え? と、撮るのか?」

「警察の鑑識向けに現場写真を撮っておく」

「ああ、そ、そうか」


 ケイの説明に「なるほど」と納得してカメラを預けた哲郎は、よたよたしながら旅館への道を戻って行く。砂に足を取られまくっているのは、動揺のせいもあるのだろう。


「足元に気をつけろよ?」

「う、うん」


 哲郎を見送り、恵美利の遺体に向き直ったケイは、順番に写真を取り始めた。周囲に足跡などは無く、他の漂着物も見当たらない。離れた位置からぐるりと移動して全景を収めたケイは、恵美利の遺体にゆっくり近づいた。

 一応、脈の確認も行ったが、やはり亡くなっているようだ。ぼんやりと目の見開かれた横顔は、石の彫刻のように冷え切っていた。

 なるべく触れないように気をつけながら、全身を撮影していく。首筋に虫に刺されたような小さな赤い痣があるくらいで、特に外傷は見当たらない。服も乱れておらず、指先は爪も綺麗なままだった。


(事故か、事件か……)


 色々考えているところへ、哲郎に通報を受けた旅館の人が駆けつけた。遺体を観察していたケイに、旅館の年配従業員が注意を促しながら走って来る。


「にいちゃん、触っちゃいかんよ!?」

「ええ、まだ触れてないですよ。脈は調べましたけど」


 カメラを手に遺体の傍で佇むケイに、若い男手従業員達が訝しそうな目を向けるも、警察に提出する現場写真を収めていた事を説明すると納得していた。

 地元で事故死した人を何人も見て来た経験を持つ年配従業員が、これは溺死だと死因を推定する。とりあえずここに置いておくとまた流されてしまうので、旅館まで運ぼうと担架が用意された。

 仰向けになっても、恵美利の遺体にはこれといった外傷は無かった。その事から、崖から落ちたわけではないと推測される。

 運ばれて行く恵美利。ケイは遺体を乗せた担架の後に続きながら、色々と考えを巡らせる。


(そういえば……今は潮が引いてるけど、今日の満潮は朝方で洞穴は水没していた? 洞穴の水没に巻き込まれた? それで、ここまで流されてきた?)


 しかし、前回はそんな事は起きなかった。昼食時に加奈と一緒に帰って来ていたのだ。なぜ、今回は途中で別行動を取ったのか。


(今日も、朝から一緒に行動しておけばよかったかな)


 ケイはそんな後悔を浮かべながら、旅館までの道程を歩いたのだった。



 旅館に戻ると、入り口の所で哲郎が待っていた。入って直ぐの休憩所には、食堂のおばちゃんと加奈の姿もあった。既に事情は聞いているらしく、加奈は青い顔で担架を見つめている。


「加奈ちゃん……」

「……」


 ケイが声を掛けると、加奈は静かに会釈した。そして、おばちゃんに支えられるようにしながら、恵美利の遺体が安置される別室へと、運ばれる担架の後に続いた。


 今は話を聞ける状況ではない。そう判断したケイは、隣で所在無さ下げに立っている哲郎に部屋へ戻るよう促す。


「これ、中身PCに移してくれないか。あと、画像の確認もさせて貰えると助かる」

「あ、ああ、そうだね。警察が来るまでに纏めといた方がいいかも」


 カメラを哲郎に返し、二人で部屋へと戻る。階段の上には不良カップルの姿があった。男の方は『何か事件が起きたらしい』という周囲の空気に、野次馬根性を出しているらしい。そわそわニヤニヤしながら何があったのか訊ねて来たので、ケイはツアー客の女の子が事故死した事を伝えた。


「砂浜に流れ着いてたのを見つけたんです」

「うぇーマジかよ、水死体かっ」


 その配慮の無い物言いに、哲郎は眉を顰めると、そのまま黙って部屋へ向かった。女の方は一瞬はっとしたような顔を向けて来たが、何だか複雑な表情を浮かべて視線を一階ホールに戻す。


(……?)


 ケイは、そんな彼女の様子に少し違和感を覚えた。これまで相方の男と、傍若無人な振舞いをしていた人物とは思えないような、憂いを帯びた雰囲気。


(そう言えば、前回の時も事件が起きた夜はやけに静かだったな……)


 動揺がハイテンションになって表れていた男とは対照的だったので、印象に残っている。見た目はケバイ系だが、根は良識を弁えた普通の感覚を持つ人なのかもしれない。ケイは彼女に対して、そんな風に思った。



 部屋に戻ると、哲郎がカメラを繋いだPCの前に陣取り、画像ファイルの転送を行っていた。専用フォルダを用意して、そこに恵美利の現場写真を纏めている。


「なんだあのドキュン男め」


 藪から棒に不良カップルの男を非難する哲郎。


「ああ、あれは動揺してるんだと思うぞ」


 基準がよく分からないプライドを守る為、自分を強く見せようと厳粛な場で不謹慎な言動を行う輩は珍しくない。ケイは憤懣やるかたない様子の哲郎にそう言って宥めながら、彼の隣に並んで座ると、纏められた画像をチェックする。


「……特に不審な所は見当たらないな」

「彼女、泳げなかったとか、だったのかな……」


 昨日今日に知りあったばかりとは言え、楽しくお喋りもした相手に降りかかった、突然の不幸。哲郎はすっかり消沈している。


「明日の朝には警察が来るらしいから、詳しい事が分かるのはそれからだろう」


 もっとも、少し親しくなった程度の関係でしかない自分達に、事故の詳しい内容が語られるとも思えないが。ケイはそう言って、画像のチェックを終えた。



 夕方前。ケイと哲郎は、まだ少し早い時間だったが、夕食を取りに食堂へと繰り出す。


「あ」


 食堂には、一人ぽつんと座っている加奈の姿があった。哲郎が食堂の入り口から踏み出せず躊躇してしまっている。ケイは哲郎を促しつつ、そのまま加奈の居るテーブルへと向かう。


「加奈ちゃん」

「……曽野見、さん」


「大丈夫?」

「はい……」


 加奈は「部屋に一人で居るのが辛いから」と、食堂まで下りて来ていたらしい。恵美利の事故について、一人で先に帰って来た事を悔やんでいる様子だった。


 ケイが加奈と話している間に、哲郎が食堂のおばちゃんとお茶を持って来てくれた。食堂のおばちゃんは『その子の事よろしくね』と言いたげな目配せをして、厨房へ戻って行く。

 前回の時と同様、おばちゃんは加奈達とはあまり会話もしていなかったので、自分では彼女の力になれないと思ったようだ。傍について慰める役回りを、少しでも親しくしていたケイと哲郎に任せたらしい。


「恵美利のご家族には?」

「旅館の方が、連絡してくれました……明日、警察の方と一緒に来るそうです」

「そっか」


 ゆったりと湯気の上がるお茶を前に、ほとんど会話も無く並び座る三人。無理に会話をする必要もないと、ケイはただ静かに加奈の傍らに寄り添い、哲郎もそれに倣った。

 食堂の壁に設置されている時計は16時40分頃を指している。秒針の音がやけに大きく聞こえる。そんな食堂の静寂を破るように、無粋な声が響いてきた。


「おーい、サロンから酒持って来いよ酒、リエもやるだろ?」

「んー、あたしは今はいいよ」


 不良カップルが夕食を取りに下りて来たようだ。彼等はいつものテーブルの端に陣取ると、男は女にサロンから酒を持って来させて、小さいグラスでちびちびやりはじめた。

 ケイは、あからさまに不機嫌になる哲郎を宥めつつ、食堂内を見渡す。厨房では、おばちゃんが配膳の準備を始めている様子が窺えた。


(歳の差カップルが来てないな……)


 朝方、旅館前の小道を散歩する歳の差カップルを見送った時に感じた、一抹の不安を思い出す。厨房の流し台の音と、不良カップルのぼしょぼしょ喋る声が響く食堂で、ケイは嫌な予感を覚えながら、一定のリズムを刻む時計の秒針を眺めていた。


 やがて時刻は17:00を回った。歳の差カップルはまだ食堂に現れない。厨房のおばちゃんが内線電話で誰かと話している。その表情が驚きから困惑に変わったのを見て、ますます嫌な予感を募らせたケイはおもむろに席を立った。


「相棒?」

「ちょっと、おばちゃんと話してくる」


 戸惑う哲郎にこの場を任せ、厨房の入り口に向かったケイは、おばちゃんが電話を終えるのを待って声を掛けた。


「杵島さんと城崎さんが、まだ来て無いみたいなんですけど……何かありましたか?」

「曽野見さん、いやそれがね、今内線で連絡があったんだけどね」


 おばちゃんは声を潜めるように口元で手をパタパタさせながら、旅館の男手従業員が雑木林で大変なものを見つけたらしいと、連絡の内容を教えてくれた。


 恵美利の件で警察が来るので、その事を知らせておくべく手の空いた従業員がツアー客全員に連絡を取って回っていたのだが、夕方になっても歳の差カップルの所在が掴めなかった。

 部屋には帰っておらず、朝方に雑木林へ向かう姿が目撃されていたので、道に迷っているのではないかと探しに出かけた従業員が、奥まった場所で二人の遺体をみつけたのだという。


「なんかね……心中じゃないかって話でねー」


 おばちゃんはそう言うと「まだ他のお客さん達にはナイショよー?」と人差し指を立てる。その時、食堂から苛立つような声が響いて来た。


「おーい、イイから先に食おうぜ」


 不良カップルの男が、酌に使っていたグラスを御つまみのナッツでチンチン叩く。

 夕食はツアー客全員で、という決まりだったが、実質、今食堂にいる者で全員揃った状態になっていた。おばちゃんや厨房の人達は、とりあえずこのまま夕食をとってもらう事にしたようだ。

 ケイは加奈と哲郎の待つテーブルに戻りながら、内心で疑問を浮かべていた。歳の差カップルの心中は、恵美利と男性の浮気による突発的な事件ではなかったのか? と。


(恵美利の事故は、本当に事故なのか……?)


 外傷は見当たらなかったと思うが、詳しく調べたわけではない。とりあえず席に戻ったケイは、夕食をとりながら加奈に恵美利の行動について聞いてみる事にした。


「加奈ちゃん、恵美利と一緒に行動していた時、彼女が他に誰か親しくしていた男性って知らないかな?」

「え? 男性、ですか……? さあ……」


 加奈は覚えが無いといった感じで首を傾げた。質問の意図を測りかねている様子だ。ケイは、まさかとは思うが念の為に、不良カップルの男と話したりはしていないかとも訊ねる。


「あの人達とは話した事無いです……それに、恵美利はあまり男の人と親しくなりませんから」


 恵美利は人と打ち解けるのは早いけれど、根は真面目で通しているので、男の友人はいても深い関係になる事は無く、クラスメイトからも男っ気が無いと言われていると、加奈は答えた。


(……あれ?) 


 ケイはその言葉に違和感を覚える。しばし言葉に詰まるケイに、加奈は訝しむような視線を向けると、静かに席を立った。


「あの……気分が優れないので、休んでいいですか」

「ああ、ごめん」


 軽く会釈して食堂を後にする加奈の背中を見送るケイは、内心で疑問を浮かべる。


(男癖が悪いんじゃなかったっけ? 前回と言ってる事が違う……恵美利の名誉の為に黙ってる? いやしかし――)


「相棒~、今のは良くないよ……」

「ああ、そうだな。気をつける」


 親しい友人を亡くしたばかりの相手に根掘り葉掘り聞くのはどうかという哲郎の指摘に、ケイも同意して反省して見せた。



 その後、夕食の時間も終わって日が暮れた頃。旅館の玄関ホールがにわかに騒がしくなった。歳の差カップルの心中の件で、確認に出掛けていた従業員達が戻って来たのだ。

 遺体を運ぶか、現場保存しておくかとういう相談を始めている。ケイは従業員のおじさん達が現場から戻って来るのを知っていたので、予め玄関ホールの休憩所で待っていた。

 哲郎もケイに付き合ってこの場に居る。哲郎は「部屋で一人でいるのも息が詰まるから」と言っていたが、実は先程の加奈の事で、ケイに非難めいた言葉を投げかけたのを気にしてるが故の付き合いであった。ケイの様子が何となくおかしいのを誤認している。


 おじさん達の話し声に耳を傾けると、やはり女性は首を吊り、男性は刺されて死んでいるようだ。騒ぎを聞きつけて休憩所に顔を出していた不良カップルの男が、呆然とした表情で呟く。


「マジかよ……どうなってんだよ、これ……」


(ああ、まったくだ)


 動揺している不良男の零した言葉に、ケイは密かに同意した。



「哲郎、部屋に戻ろう」

「え、ああ、うん……」


 今この場で得られる必要な情報を確認したケイは、哲郎を促して部屋へと戻る。哲郎は、少しだが親しく話した相手が事故死。交流は無かったが、同じツアーのカップルが心中。立て続けに不幸が起きてショックを受けているようだ。


 部屋に戻ってきた哲郎は、修羅場スレ向けに今日の出来事を纏め始めた。何かしていないと気が滅入るといった様子だ。

 必然的に会話も少なく、ケイは奥のソファーに身を沈めて色々と考察を深めていた。


(何かおかしい……)


 洞穴。事故。心中。加奈に感じた違和感。前回、彼女に刺されたのは、洞穴前の道だった。


(まさか、加奈が?)


 暗い窓の外を注意深く眺めながらそんな事を考えていたケイは、洞穴方面に例の青白い光が浮かび上がったのを見た。今回は初めから注視していたので、よりはっきりと見る事が出来た。やはりカメラのフラッシュのような、僅かに瞬く閃光のようだった。


 ソファーから立ち上がったケイは、上着を手に部屋の扉へと向かう。


「相棒?」

「ちょっと出て来る。それと哲郎、警察が来るまで恵美利の画像ファイルは隠しておいてくれ。他の誰にも見せないようにな。後、絶対一人で行動するなよ? 加奈ちゃんが相手でもだ」

「え? な、なんだよそれ」


 困惑する哲郎に、念の為だと言って納得させると、光の正体を調べに部屋を出た。加奈達が宿泊していた隣の部屋を見ると、扉の下の隙間に明かりは見えない。

 既に眠っているのか、明かりを点けていないだけなのか。ケイは足音を立てないよう、そっと廊下を移動する。その隣にある不良カップルの部屋も静かだ。さらに隣の歳の差カップルの部屋は言わずもがな。玄関ホールの休憩所も、今は静まり返っている。


 外から旅館の窓を見上げて見たが、やはりこの時間に部屋の電気が灯っているのは、ケイと哲郎が泊まる201号室だけのようだった。


 ふぅっと一息、深呼吸して気持ちを整えたケイは、海岸沿いの夜道を駆け足気味に歩き出した。砂浜海岸に下りられる一帯を通り抜け、やがて目印となる電柱の街灯が見えてくる。

 洞穴方面に向かう道と、洞穴の上の崖に続く分かれ道だ。呼吸を整え、一度後ろを振り返ったケイは、誰も居ない事を確認して再び歩き出す。

 すると、街灯の下を不良カップルの女が歩いて来るのを見つけた。前回と同様、ケイの姿を認めた彼女は、一瞬息を呑むように立ち竦む。


「こんばんは」

「え? あ、うん、こんばんは……」


「こんな時間にどうしたんですか?」

「え……あっ、い、今、人をっ 人を呼びにいこうとしてたの! 彼が崖から落ちちゃってっ、途中にしがみついてて!」


 ケイの問いかけで我に返ったかのように、彼女は酷く取り乱しながらそう訴える。


「ちょっと来て!」


 そう言って走り出した彼女は、崖上に続く坂道を上り始めた。ケイは前回、彼女が洞穴方面から歩いて来ていたような気がしたが、とにかく後を追う事にした。一応、後ろを確認、加奈は来ていない。



「セイジ! 人を呼んで来たからっ」


 洞穴の上の崖の端で、四つん這いになっている彼女は、崖から身を乗り出すようにして声を掛けている。


(男の名前は"セイジ"っていうのか。この人は"リエ"って呼ばれてたな)


 ケイは"リエ"の隣に並んで崖下を窺うが、真っ暗で何も見えない。風と波飛沫の音が響く中、ケイがどの辺りに"セイジ"さんが居るのか尋ねようとしたその時――


 バチバチッ


「ッ!?」


 青白い閃光と共に、ケイの脇腹から全身に衝撃が走った。ぐらりと揺らぐ身体を両腕で支えながら脇腹に視線を向ければ、テレビのリモコンにも似た黒い箱状の物体が押し当てられている。先端には短い金属の突起。


(スタンガン? 光の正体はこれか?)


 ケイは直感的にそう悟った。スタンガンを握り締めている両手は、微かに震えているのが分かる。その腕を伝うように視線を上げて、持ち主の顔を見上げると、必死の形相の彼女からもう一撃。

 今度こそ完全にケイの身体から力が抜ける。崖から落ちる最後の瞬間、ケイが見た光景は――


「ごめん、ごめんなさい……」


 スタンガンを握り締めて、震えながら泣いている"リエ"の姿だった。


 意識が遠のく。


 石神様の響きが木霊する。


 やがて混濁した意識が覚醒を始め、白くぼやけていた視界に、色と輪郭が戻る。樹木の枝葉に縁取られた水色の朝空と、まだらに浮かぶ灰色の雲を見上げながら、落ち葉の匂いに包まれた。


(どういう事だ……?)


 そして、頭上から現れる加奈の心配そうな顔。


「あの、大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない」


 ケイはそう言って身体を起こした。急に起き上がられて驚いた加奈が「きゃっ」と後ずさると、その腕を掴んだ恵美利が加奈を庇うようにしながらケイに警戒の視線を向ける。


 既に痛みの感覚など無い脇腹を少し押さえながら立ち上がったケイは、そんな二人に声を掛けた。


「俺は曽野見そのみ ケイ。とりあえず、旅館に戻ろうか」

「え、あ……み、御堂みどう 加奈かな、です」

「ちょっ、加奈、こんな怪しい人に名乗る事なんてないんだってばっ」


 突然名乗られたので思わず名乗り返してしまった加奈に、恵美利が慌てて割って入る。そんな"仲の良い二人"の姿を見て、ケイは少し吹き出すように笑うと、旅館に向かって歩き出した。


(恵美利をどうにかするだけじゃダメだ。根本的に全体の流れを把握しないと、悲劇は避けられない)


 今度は不良カップルと歳の差カップルとも接近して、彼等の事情なども知る必要がある。ケイはそんな事を思いながら、旅館の扉を潜るのだった。


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