第17話:満月の攻防。
「今だぜ、小春・・・弓を打て!!」
九尾の狐は雲外鏡に眩しい光を照らせれていながらも、邪魔になる吉右衛門狸を
睨みつけた。
吉右衛門狸は小春たちの弓に気を取られていて、ふいに九尾の目を見てしまった。
「くそっ、うかつだったわ・・・」
金縛りになった吉右衛門狸は
「あとは任せたぜ、小春」
そう言いながら、 地上に落ちていった。
「お兄ちゃん・・・」
「たしかに、お兄ちゃんって言ったよな・・・」
「そんなこといいから・・・矢を放ちますよ一平太さん!!」
「わ、分かった・・・いつでもいいぞ小春」
そう言うと一平太と小春は、力を合わせて三日月の弓を放った。
眩しくて目が眩んでいる九尾は、一平太と小春が放った弓矢に片目を射抜かれて、
もんどりうった。
「くそ〜貴様ら・・・・許さんぞ」
九尾は目に弓矢が刺さったまま、一平太と小春に向かって来た。
「おまえらも動けなくして、食い殺してやる・・・」
「もう弓矢はねえのか?小春・・・」
「弓矢は、あれ一本だよ、一平太さん」
「あいつ、俺たちに向かってくるぜ、今度こそ防ぎようがないかも」
またまた危機一髪。
またまた、その時だった。
突然現れたのは、吉右衛門狸より少し小ぶりな狸、太一郎狸だった。
すると一閃、なにかが、ずごい音を立てて空を切った・・・と思ったら
九尾の狐の首が、すっぱり両断されて宙に飛んだ。
なにが起きたか分からない九尾は、悲鳴をあげる間も無く口をパクパクさせながら
頭と体が二分されて、あっけなく地上に落ちていった。
「ざまあ見さらせ九尾め・・・」
「あ、太一郎兄さん・・・」
一太郎は右手に持っていたのは、長刀・・・殺生丸だった。
切っ先までゆうに三メートルはあろうかという長い刀。
普通の刀では九尾に傷を負わせることすらできないが、殺生丸なら狐の首を切り
落とすことなんか屁でもないのだ。
この長刀は、かなりの腕力も持ち主じゃないと振り切れない代物。
殺生丸はいつの時代から伝わるのかは分かっていないが小春の一家に昔から
伝わる宝刀なのだ。
「小春、終わったぜ」
「ありがとう太一郎兄さん」
一平太は、なにが起きたかすぐには把握できず、ぽかんと口を開けて見ていた。
九尾の狐は、みんなの力で倒すことができた。
地上に落ちた九尾は殺生丸に切られたせいで、石に変わっていた。
変わったというより、封印されたというほうが正しい。
九尾が封印されたせいで吉右衛門狸は金縛りから解放されていて一平太が
冷静を取り戻すころ、吉右衛門狸と太一郎狸は、すでに消えていなく
なっていた。
みんなのおかげで事件は解決して呉服屋にも平和が戻ってきた。
たぶらかされていた若旦那も正気をとりもどし病に伏せていた奥方も元気になった。
小春と一平太、それに小春の兄貴たち・・・そして雲外鏡。
これにて一件落着な活躍ぶりだった。
つづく。
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