第16話:吉右衛門狸参上。
「そんなことより、早く乗って」
「九尾を追いかけましょ」
なんだか訳が分からないまま一平太と雲外鏡はデカい葉っぱに乗った。
一番前に小春が乗って葉っぱを操縦した・・・操縦と言ってもハンドルや舵が
あるわけじゃない。
なんで操縦できるかって言うと、そこは小春の神通力。
葉っぱは一気に宙に舞い上がった。
「おいかけますよ・・・一平太さん、
「落ちないように私につかまっててくださいね」
そう言うと三人を乗せた葉っぱ九尾の狐を追いかけて行った。
「あいつ逃げてるぜ・・・無理に追いかけなくてもいいんじゃねえか?」
「ここで逃したら、またどこかで悪事を働きますよ・・・いいんですか?」
「あ、それは言えるな・・・よかねえな」
狐は本来空を飛ぶ生き物じゃないから、宙を飛ぶのが苦手なのだ。
逃げる相手より狸の葉っぱのほうが早かったので、すぐに九尾の狐に追いついた。
「けっ・・・しつこいね・・・」
「めんどうだ・・・ここで決着をつけてやるわ・・・」
そう言うと九尾の尻尾から、いきなり何百本もの剣が現れたかと思うと
一斉に小春たちのほうを向いた。
「おいおい、まじか・・・あんなの避けようがねえじゃねんかよ」
一平太はまじでビビった。
「あんなことが、できるなんて私も知りませんでした」
何百本の剣が小春たちのほうに向かってものすごい速さで飛んできた。
まさに危機一髪。
その時だった。
小春たちの前に、なにか大きなものが、立ちはだかった。
「またせたな、小春」
そう言って、現れたのは吉右衛門狸だった。
「お兄ちゃん・・・」
一平太は自分の目を疑った。
そこにいたのは馬鹿でかい狸だったからだ。
「今、小春・・・お兄ちゃんって言ったか?」
小春が狸にお兄ちゃんと言ったので、一平太は今度は耳を疑った。
「一平太の旦那・・・挨拶してる暇はねえ」
そう言うと吉右衛門狸は、自分の金タマを持って振り回した。
狸の金タマは自由自在に小さくも大きくもできるのだ。
その金タマを両手で抱えると九尾の狐が放った剣を一斉になぎ払った。
狸の金タマの皮は固くてしなやか・・・刀の刃など通じないのだ。
剣はバラバラと地面に落ちて行った。
「そんなものは俺の金タマに通用するかよ」
「小春・・・三日月の弓を持ってきてやったぜ」
吉右衛門はそう言うと、肩に背負っていた三日月の弓を小春に渡した」
「小春、あいつの目を見るな、金縛りにあうぞ」
「俺があいつの盾になってるから今のうちに弓をかまえろ」
「分かった」
「え〜い、こしゃくな田舎狸が・・・食い殺してやる」
吉右衛門狸から弓を受け取った小春は九尾の狐に向かって弓を構えた・・・
だが弓は重く女の力で弾くには力不足だった。
九尾の狐は身を翻して吉右衛門めがけてするどい歯をむき出しにして大口を
開けて襲ってきた。
「一平太さん手伝って・・・私一人の力じゃ弓矢が弾けない」
そう言われた一平太は小春と力を合わせて一緒に弓を目一杯引くと雲外鏡に言った。
「うんちゃん、使って悪いな・・・月の光をあいつに照らしてくれ」
そう言われた雲外鏡は、待ってましたとばかりに九尾の狐に向かって満月の光を
照らした。
光を照らされた九尾は、あまりの眩しさに一瞬、動きを止めた。
つづく。
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