第15話:正体を現した九尾。
一平太の顔を見た若旦那と嫁と付き添い女は狐につままれたような顔をしていた。
若旦那以外は自分らが狐なのに・・・。
「なんだい、なんだい・・・おまえさんら・・・」
訳がわからない若旦那が、すぐに反応した。
「ちょいとごめんなさいよ、ぶしつけはご容赦を若旦那」
「あっしらは、そちらにいらっしゃる若奥さんとお付きの方に用事があって
来たんでさあ」
「なんです、藪から棒に・・・」
そう言ったのは嫁のほうだった。
「単刀直入に言うんだが・・・高科藩のお侍、潰したのはあんたらだろ?」
「なにを言ってるんだか・・・無礼な」
そう言ったのは付き添い女だった。
「なんの証拠があってそんなことを・・・」
「こちとら目撃者がいるんだよ」
「あんたらとそっくりな女ふたりが高科藩の屋敷に入っていくところを
見てる人がいるんだぜ」
「あんたら、狐の妖怪だろ?」
「正体はバレてるんだぜ・・・観念しな・・・狐」
「私らが狐?・・・そんな証拠どこにあるんだよ」
「じゃ〜これでどうだい」
そう言うと一平太は裏庭のほうの障子を全開にした。
すぐに雲外鏡が姿を現し、月の光を鏡に反射して嫁と付き添い女を照らした。
雲外鏡に照らされて女ふたりは本当の姿を現した。
「ほら一平太さん、あのひとたち狐だよ」
嫁のほうは普通の化狐だったが、付き添い女のほうは尻尾は九本も生えていた。
「付き添い女のほうは九尾の狐です、一平太さん気をつけて」
「藤兵衛たちは、離れててくれ、巻き添いを食うといけねえ」
若旦那はあっけにとられて、クチをぽかんと開けたまま固まっていた。
藤兵衛は固まってる若旦那を引きづって廊下に逃れた。
「おのれら・・・雲外鏡なんか連れてきやがって」
そう言って付き添う女のほうは完全に九尾の狐の姿に変わった。
嫁のほうの狐は、こそこそと逃げようとした。
「おっとそうはいかねえ、、、」
そう言うと一平太は持っていた十手を嫁の狐に投げつけた。
それが見事の嫁の狐の頭に当たって狐は気絶した。
問題は九尾のほうだった。
九尾の狐は激怒して巨大化すると同時に呉服屋の屋根をぶちやぶって表に
飛び出した。
「逃げるか・・・」
九尾の狐は逃げ足だけは早く、市中から逃れて茶屋のある峠の上空あたりまで
逃げて行った。
「一平太さん、これに乗って」
そう言って小春は、太一郎狸からもらった葉っぱを懐から取り出した。
小春が呪文を唱えると葉っぱは、見る間に3人がゆうに乗れるくらいの大きさに
なった。
「おおおお、なんだこの葉っぱは?」
「こ、小春・・・準備がよすぎるだろう・・・いいんだけどな」
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます