第14話:いざ、呉服問屋へ。
「さて、俺もサボってばっかりいたんじゃいけねえやな・・・」
「ちょっと番屋に顔を出して、戻ってくるから」
「その間に藤兵衛から知らせがあったら、そいつ、鏡の妖怪つれて番屋に来てくれ」
「そいつなんて言ったら可哀想ですよ」
「え?名前があるのか妖怪に・・・」
「うんちゃんですよ、うんちゃん」
「うんちゃんて・・・それ小春がつけただろ・・・まあイイけどよ」
「じゃ〜な、ひとっ走りいってくらあ」
そう言って一平太は番屋に出かけて行った。
「さて・・・俺はどうしたらいいのかな?」
と目を覚ました雲外鏡が言った。
「もう少し待っていただけたらご活躍の場を設けますから・・・しんぼうしんぼう」
「そういや、今夜は満月だな・・・妖怪がいっぱい出てくるな」
「満月ですね・・・出ますかね妖怪?」
「でるよ・・・満月だからな・・・」
.一平太が長屋に帰ってきた頃は日が西に傾きかけていた。
「けえったぜ、小春」
「お帰り、一平太さん・・・呉服屋さんはまだ・・・」
小春がそう言った時、家の戸を開けてひとりの町人・・・小僧が入ってきた。
「こちらは岡っ引きの一平太さんのお住まいでしょうか?」
「そうだけど・・・あんたは?」
「私、呉服問屋の丁稚、
「実は当、呉服問屋の藤兵衛よりの使いでやって参りました」
「分かってるよ・・・紀之介さんとやら藤兵衛さんに言われて俺を呼びに
来たんだろ?」
紀之介はそうだと言うようにうなずいた。
「紀之介さん、あい分かったぜ」
「これから店に馳せ参じるから、おまえさん先に店に戻って藤兵衛に、
俺が今から行くから、何もしないで待ってるように言っといてくれ」
「では、よろしくお願いします」
紀之介はお辞儀だけして、そそくさと帰って行った。
「利発そうな丁稚さんだな・・・」
「可愛いですね・・・」
「さてと・・・そんじゃ、うんちゃんを連れて藤兵衛んちに乗り込むか」
一平太と小春は雲外鏡を連れて家を出た。
3人が呉服問屋に着く頃には空には雲ひとつなく月は夜空に煌々と光を放っていた。
道中、雲外鏡がいたおかげで提灯はいらなかった。
「ほっほ〜便利なもんだぜ・・・うんちゃん」
呉服問屋にはすぐに着いた。
「ごめんよ」
呉服問屋の表入り口の戸はもう閉まっていたが勝手口は鍵もかかっておらず、
すんなり店の中に入れた。
すると少し、やつれた藤兵衛がよろよろ出てきた。
「あ〜旦那、今嫁も付き添い女もおりますので、どうそ上に上がってください」
「ささ、どうぞこちらです」
藤兵衛にいざなわれるまま、3人は座敷に案内された。
座敷の障子を開けると、そこに藤兵衛の若旦那と嫁と付き添う女がいて、
三人でなにかいいことでもあったのか宴会もどきなことをやっていた。
つづく。
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