第12話:雲外鏡(うんがいきょう)
「若旦那と嫁と付き添いの女がいないんじゃしかたねえ・・・とりあえず
出直してくるがよ・・・」
「若旦那と嫁とお付きの女が店にいる時に、あっしに知らせてくれねえか」
「それまでにやつらの正体を暴く方法を探しておくからよ」
とは言ったものの、正体を暴く方法・・・。
そんなもの簡単に言ってもあるわけがない。
おいそれとは嫁もお付きの女も正体を現すもんじゃないからだ。
何もできず一平太と小春はひとまず長屋に帰ってきた。
一平太はどうやって、やつらの正体を暴けばいいのか考えあぐねていた。
でも小春はその問題を解決する方法を知っていた。
妖怪の中に雲外鏡(うんがいきょう) と言う鏡の妖怪がいる。
照魔鏡は光を反射し物体を映す鏡の威力によって「魔性の正体を照らし出す」
雲外鏡はそのような役割に特化した妖怪なのだ。
雲外鏡はもっぱら夜、それも満月の夜活動することが多い。
日の光より、月の光の方が妖術を使うのに適しているからだ。
三日月の夜でも大丈夫だが、満月の方がベストと言えただろう。
雲外鏡が住んでいる場所は信州の山奥・・・人は分入っていけないような
深い森の中に住んでいた。
信州までは人の足で何日も歩くことになるが、一瞬で目的に飛べる小春には、
屁でもないことだった。
そのことを小春は一平太に話した。
一平太は目から鱗な話だった。
つくづく小春には関心するばかりだった。
そのことは一平太では、どうしようもなかったので小春に任せることにした。
ただ小春は一瞬でどこへでも飛べるからいいんだが、雲外鏡のところへ行けても
雲外鏡にはそんな特技はないから、帰りは徒歩ってことになる。
なるべく早く帰って来るからと、そう一平太に告げて小春は、信州へ旅立って
いった。
小春が言った通り、いつまで待っても小春と雲外鏡は帰ってこなかった。
その頃、小春は雲外鏡に会って、交渉中だった。
「ね、お願い、お世話になってる方の一大事なの」
「んなこと言ったってよ・・・俺はこの山で誰の干渉も受けないでゆっくり
暮らしたいんだよ」
「最近の妖怪って、待遇悪いしな・・・」
「私と一緒に来てくれません?」
「んん〜いくら小春ちゃんの頼みでもな〜」
「そうさな・・・腹一杯飯食わせてくれるなら行ってやってもいいけどな・・・」
「俺さ、この山に篭ってろくなもの食ってないんだよな・・・」
「分かりました、お腹いっぱいご飯食べさせて、おまけにメザシ3匹に
鶏の卵一個つけます」
「お、そうかい・・・それは御旺盛だな・・・なら行くか」
交渉成立です。
さっそく小春は兄の太一郎狸に連絡して、狸の葉っぱを持ってきて
くれるよう頼んだ。
雲外鏡が大あくびをしてる間に太一郎狸は、デカい葉っぱに乗って
小春の元にやってきた。
本当なら歩きだから、数日かかるところだが、狸の葉っぱは小さくも
大きくもなって、しかも魔法の絨毯みたいに空を自由に飛べるのだ。
小春は太一郎狸にお礼を言って葉っぱの後ろに雲外鏡を乗せて一平太の
待つ長屋に帰って行った。
太一郎狸も小春といっしょで、どこにでも瞬時に飛べるのだ。
帰る時、煙なんか使ってそれらしくカッコつけて帰っていった。
つづく。
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