第10話:三日月の弓と殺生丸。

小春は今度の敵「狐」は手強いと思って一平太と自分だけじゃ

心もとないと思って、兄の吉右衛門狸と太一郎狸に相談しに言った。


「あ〜だからよ、人間となんか関わらねえほうがよかったんだよ」

「な、こういう、やっかいなことに巻き込まれるだろ? 」

「小春・・・おまえは好奇心旺盛だからな・・・」


吉右衛門が言った。


「ぽんぽこ山でノンビリ過ごしてればよかったんだよ」


そう言ったのは太一郎狸だった。


「その花嫁のほうは、ただのバケ狐みたいだが、付き添い女のほうは

九尾の狐なんだろ?・・・」


と吉右衛門狸。


「って思う・・・尻尾が九本くらい生えてたから・・・」


「めちゃ厄介だな」


太一郎狸がそう言った。


「俺はガキの頃、一度九尾と戦ってるからな・・・」

「こっちも怪我したし・・・結局倒せなかったんだわ」


吉右衛門だぬきは昔、九尾の狐と戦った経験があったようだ。


「しかも九尾を倒すには、三日月の弓と殺生丸がいるしな」


「それはまあ、俺が揃えるとして・・・」


弓と刀は太一郎狸が揃えることになった。


「まあ、しょうがねえな・・・可愛い妹の頼みだからよ」

「何か動きがあったら、俺たちが出張って行ってやるよ」


小春はこころ強い味方を得て一平太のところに帰った。


それからしばらくしてだ。

呉服問屋の藤兵衛が一平太の長屋を訪ねてきた。


どうやら最近、若旦那と嫁が散在しつくして収拾がつかなくなってると、

そう言う話だった 。


「やっぱり旦那が言った通り、嫁をもらった矢先、この不始末です 」

「せがれは嫁のいいなりだし・・・弱ったものです」


「そうかい・・・やっぱりな・・・」

「俺が出張っていっちゃまずいかい?」


「いえいえ、問題を解決していただけるんなら願ってもないことです 」


そう言う訳で、一平太と小春は呉服問屋に行くことになったわけだが・・・


小春にはひとつ、心配なことがあった。

狐の正体を暴いたことによって、狐の逆恨みで自分が狸だとバラされは

しないかと言うこと。


どちらにしても兄、ふたりが出張ってきたら、どうなるか分かったもん

じゃなかった。

そうなったらきっと小春が狸だって、一平太にバレるだろう。

でも、兄ふたりの力がなければ、敵を倒すのは難しいことも分かっていた。


(一平太さんと私だけじゃ、力不足だもんね・・・)


つづく。

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