第9話:呉服問屋にとついだ嫁と付き添いの女。
「一平太さん、あの花嫁、お武家さんのお屋敷にとついで来たお嫁さんと
同じ人だよ」
「あのお嫁さん、狐が化けてるって私が言った女」
「後ろに付き添ってる女の人・・・あの人、普通の狐じゃないよ」
「おまえ、見えるのか?」
「もしそれが本当なら、そりゃ呉服問屋、にとっちゃ一大事だけどよ・・・」
「でもよ、あの嫁連中が狐が化けてますって、どうやって藤右衛門に知らせる
んだよ」
「前にも言ったけど・・・そんなこと言った日にゃ俺たちが頭のおかしな
連中って思われて訴えられるぜ」
「なにかいい方法ないかしら・・・」
「このままだと着物屋さん、お武家さんちと同じことになっちゃうよ」
「なんとか助けてやりてえけどよ・・・」
「ことが起きねえと俺たちゃ動きようがねえぜ」
「あのお嫁さんと付き添いの女の人、私たち狐です、なんて正体あらわさないしね」
「なにか変わったことがないか時々見張ってるかな」
そこで一平太は、先に小春を長屋に帰らせておいて呉服問屋の藤兵衛に、
さりがなくなにかあったら知れせてくれるよう言っておくことにした。
「なにか?って何があるって言うんです?」
「あんたが話の分かる男だと思って話すんだがよ」
「つい先日あった高科藩の武家屋敷の一件、知ってるよな」
「へい、知っておりますが・・・」
「あの事件、武家のせがれが嫁をもらって、すぐに起きた奇怪な事件だからよ」
「どうも、あの事件の裏に嫁と付き添いの女が関わってるって話があるんだ」
一平太は、武家に嫁いだ嫁の仕業かどうか証拠もないのに適当なことを言った。
「あんたんとこも、若旦那が嫁をもらったところだろ?」
「怒らねえで聞いてほしんだけどよ・・・」
「うちの小春が言うには武家にとついだ嫁とあんたんちにとついだ嫁が同じ人
じゃないか言うんだよ・・・」
「あんたんとこの若旦那がどうこうって訳じゃねえんだがよ」
「失礼なんだが・・・あんたんちの嫁さんだが若旦那はどこで見初めたんでえ?」
「それは私がせがれを連れて行った茶会に来ていた娘をせがれが気に入ったんですよ、それで・・・ 」
「そうかい・・・めでたいことなのに迷惑だろうが、なにかあったらでいい・・・
変わったことがあったら俺に知らせてくんねえか?」
「疑っちゃ、あんたんちの嫁さんに失礼な話なんだが・・・何もなきゃそれで
いいんだ」
「失礼を承知で言ってる・・・よろしく頼むわ」
「はい、承知しました」
とりあえず、これで少しは進展はあれば、なんとかなるんじゃにないかと一平太は思った。
つづく。
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