第8話:武家屋敷の嫁入り。

小春の活躍、第二弾のはじまりはじまり。



高科藩、武家屋敷の御曹司が嫁をもらうことになった。


白無垢の花嫁を見た人たちは、みんな声をそろえて色白で絶世な美人の花嫁さん

だと噂した。


だが、その嫁が来てから、武家屋敷は少しずつ、衰退の危機に瀕して行った。

嫁の金遣いの荒さとバカ息子の博打の借金が増えて、身を持ち崩していった

のだった。


昔は真面目な御曹司で、誰にでも優しくて近所でも評判の息子だったらしい。

嫁を貰ってから、すべてが変わった。


小春はたまたま、偶然に武家屋敷に花嫁さんが入って行くのを見ることができた。

野次馬の中で、その花嫁が妖狐が化けた花嫁だと見抜いたのは小春だけだった。


どんなに綺麗に化けても神通力のある小春は騙せない。


小春から見たら、花嫁は妖狐にしか見えないのだ。

狐と言えば、狸とはライバルであり友達でもあったりする。

問題は、その花嫁に付き添ってる女のほうだった。

年増で綺麗だけど冷たそうな女で、この女がクセものだった。


狐の中でも何千年と生きながらえている妖狐は気軽に付き合いができるような

代物ではなかった。


妖狐は、ふだん仙山に住んでいて人間界に降りてくることは滅多にない。

なにかの事情があって人に関わっているんだろう・・・そう小春は思った。


これは一大事と長屋に帰ると、小春はそのことを一平太に話した。


一平太は、その話を半信半疑で聞いていたが小春の言うことだし無視は

できないと思った。

以前、一度妖怪を自分の目で見てるから一平太は妖怪を信じるようになっていた。


「でもよ、人んちの家の問題だからな・・・」


「それに嫁の正体が狐だって・・・誰も信じないだろ?それにそうだって証拠も

ないしな? 」

「あの嫁は狐ですって吹聴して回っても、頭のおかしなやつだって思われ

かねえからな?・・・ 」


「でも、このままなら武家屋敷のみなさん、最後は何もかも奪われて呪い殺される

かもしれませんよ 」


「そうさな・・・あちらさんから助けてくれって頼まれでもしたら足を運んでも

いいけどな・・・ 」


「ただ、嫁が怪しいからって言っても、反対に逆ギレされたら見も蓋もねえだろ?」


一平太はあまり侍とは関わり合いになりたくなさそうだった。


で、結局、武家屋敷は見る間に一家離散した。


家族全員、干からびた状態で遺体で発見された。

殺された家族の中に嫁の姿と付き添いの女だけが行方知れずだった。


小春は武家屋敷の人たちを救うことができなかったことを悔やんだ。

でも、相手は妖狐、下手すると小春の正体も相手に分かってしまうかもしれない。


そんなことにでもなったら自分が狸だって一平太さんにバレてしまうかもしれない。

そのことを小春は恐れた。


それからしばらくして、以前小春の着物のことで世話になった

呉服問屋の藤右衛門ちの若旦那が嫁をもらうって話が持ち上がった。

小春はまた、花嫁さんが見たくて呉服問屋まで嫌がる一平太を誘って出かけた。


そこで小春は驚いた。


なんと呉服問屋にとついで来た花嫁は、なんと武家屋敷に嫁にやってきた女と

そっくりだったからだ・・・。

しかも例の冷たそうな女も花嫁に付き添ってきていた。


小春は、その嫁と付き添いの女が、やはり妖狐が化けたものだとすぐに見破った。


つづく。


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