第14話
「え? トラ丸は神様に頼んでここに来たの」
《そうだ、マリにお礼が言いたかった》
屋敷の帰りテラスでお母様とお茶の後、部屋でトラ丸の話をベッドの上で話を聞いている。まあ、私にそのときの記憶がないのだけど、トラ丸が言うには――車に轢かれそうになった、トラ丸を私が助けたみたい。
「へぇ、私がトラ丸を助けたんだ」
《ああ、身をていして助けてくれた……ワシなんかを何故?》
それ聞いちゃうの?
「トラ丸がどう私のことを、思っていたのか知らないけど。私は友達だと思ってたから?」
《友達か、ワシは美味い飯をくれる人間だな》
「ハハ、そうなんだ……でも、なんで? トラ丸がここにいるの?」
私が助けたのなら、まだトラ丸は元気にあの世界で生きているはずだ。
《寿命だ。マリのおかげで野良猫でも楽しかった》
「寿命かぁ。楽しかった? ふふ、トラ丸にはたくさんの仲間がいたものね」
《ああ、いた》
でも、なんでトラ丸はここに来たのだろう?
元の世界で、新しい人生を生きていけばいいのに。
「私はトラ丸に会えて嬉しいけど。神様に頼んでまで聖獣になってよかったの?」
《ワシがどんな姿でもいい、マリにまた会いたいと願った。そうしたらこうなったまでだ》
私の会いたかったなんて、嬉しいことを言ってくれる!
「そっか、コレからよろしくね」
《よろしく頼む》
そのあと、私達はパレットが夕飯に呼びにくるまで、仲良く爆睡した。
「デリオン殿下がそんなことを言ったのか。僕の可愛いマリーナになんてことを言ってくれるんだ、あのバカは……出来が悪いだけじゃないんだな」
(お父様?)
家族で夕飯をとっている。お父様は庭園でのことは聞いておらず、お母様から話を聞いて静かに怒りを吐いた。
「まったくそうよね、いつまでもウチのマリーナを目の敵にしちゃって、自分が蒔いた種だって気付かない」
「ああ、気付いていれば謝るはずだ! それを気付かせない陛下と王妃にも問題がある。一人息子だから甘いのだな」
「甘いも甘い、もう激甘よ」
うーん。せっかく家族揃っての、食事は美味しく食べたいかな?
「お父様、お母様、私は今日のことすっかり忘れました。デリオン殿下のことなんか考えず、楽しく食べましょう」
それに賛成なのか、お母様の隣にいるジロウと、頭の上に乗っかるトラ丸も頷く。
「マリーナの言う通りだな。ところで聖獣を手に入れたそうだが……僕には見えないな」
お父様は聖獣が見えないと言った。聖獣が自ら姿を現さないと、魔力の低い者には見えないらしい。だから、庭園で姿を現したジロウにみんなは驚いたのだ。
あ、あの子は違うか。側にヒョウの聖獣がいたもの。
それにあの子が「願え」と言ったから、願いトラ丸が私のところに来てくれた。
一度はあなたが! って思ったけど、お礼は言いたいかも。
――また会えるかな?
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