第11話
バラが突風に揺れ、庭園内は一瞬だけ騒然としたが。ご令嬢、ご令息達に被害はなかったが。突風に煽られたデリオン殿下が椅子ごとひっくり返り、パラソルとテーブルが飛んだ。
「「デリオン殿下!!」」
周りは、デリオン殿下がひっくりかえり慌てている。だけどデリオン殿下、みんなにもケガはしていみたい。
《ジロウ、すごい風だったけど、みんなは大丈夫?》
《フン! お嬢安心していい。ボクの風は人にも自然にも害は与えない。ただのイタズラ風だ》
《イタズラ風? なんだか可愛いね》
殿下を心配して泣いている令嬢、周りに集まる貴族達。その中に私はいけないなぁ。
乙女ゲームとは違い。マリーナはデリオン殿下には嫌われている。これなら彼の婚約者にならずに済みそうだし、プレゼントの刺繍したハンカチも渡せなくていいや。
あのデリオン殿下の様子なら、私から貰っても捨てちゃいそうだし。
――可愛く出来たから、自分で使おうっと。
今日は王城と推しが見られたし、よしとしよう。次に会うのは学園でかな?
隣に座るジロウに。
《デリオン殿下への挨拶も終わったから、帰ろっか》
《ああ、帰ろう》
庭園を後にしようとした私の顔面に。
真っ白なモフモフがどこからか飛んできて、モフンとくっ付いた。
「きゃっ、なに?」
《お嬢?》
〈キュ――!〉
なに、なに、なに? この気持ちの良いフワフワで、モフモフなものは?
私の顔面が幸福に包まれているぅ、幸せ~。
癒される~。
《何? なぜ、こんなところに聖獣の卵が?》
《え? このフワフワ、モフモフが聖獣の卵?》
〈キュキュ、キュ――!〉
顔から剥がそうとしたら、鳴きながらモフモフは暴れた。
《うわっ! ジロウ、この子なんて言ってるの?》
《ん? 聖獣の卵はしゃべらない。ボクはお嬢と初めて話した》
《うそ? 私とが初めて? この子キュキュ、すごく鳴いてるよ!》
「キュキュ、キュキュ――!!」
それに、なんだかこの子怒っていない?
ジロウの突風で飛ばされたから?
〈キュキュ、キュキュ!!〉
《ジロウ、やっぱり、この子鳴いてる》
《お嬢、ボクには聞こえない》
――でも、この子は何処から来たの?
捕まえようとした私の手から逃げて、頭の上にモフンと乗ったとき。
「その子に君の魔力をあげて! なんでもいい、好きな形を思い浮かべて」
「わ、私の魔力をあげる? 好きな形?」
誰? だと。
声が聞こえた方を見ると。私の側に紺色の高級な服を着た、青みがかった白銀の髪と水色の瞳をした見知らぬ男の子がいた。
――え? 誰ぇ~?
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