第8話
特別な存在――それって、ゲームに出てくる聖獣?
魔法大国クエルノで王族と、一部の貴族だけが持てない聖獣。
ゲームの最終場面で、ヒロインはウサギの聖獣を隠しキャラ――クエルノ国の第二王子ヴォルフ・クエルノ様に貰う。その条件は攻略対象を全て終えて、ヴォルフ王子との好感度がMAXの場合ときのみ。
「私の可愛いお姫様にプレゼント、大切にしてくれよ」
「うん、大切にする」
ヒロインとヴォルフ王子のシーンはよかったなぁ。
《……お嬢、手が止まってる》
「ごめん! ジロウ、ここも撫でていい?」
《好きに撫でてくれ》
ジロウの頭、耳、背中を撫でた。ここでふと前世で会ったあの子を思い出す。友達がいない私の唯一の友達だった、といっても、あの子はジロウのように撫でさせてくれなかった。
毎回、エサはすごい勢いで食べてたけど、向こうでお腹を空かせず、元気にやってるかな?
「ジロウ、気持ちいい?」
《なかなかよいぞ、気持ちよい》
「よかった」
しばらくしてお母様がご飯を持って戻ると、私とジロウは仲良く、ソファーで寝ていたそうだ。
「あらあら、2人とも仲良しで妬けてしまうわ」
その夜。屋敷に戻ったお父様にもお母様に話を聞いて、今日の事で「危ないから2度とするな」と注意を受けた。
「ケガがなくてよかった」
本気で怒ってくれるお父様の姿に、マリーナは乱暴者だから……両親にも嫌われているのかと思ったのだけど。もしかすると両親は違うのかもしれない。
(甘えてもいいのかな?)
「ごめんなさい、お父様、お母様」
カルロの大ヤケドを治した金色の光については「今後も調べなくてはならないわね」と、お母様は言った。
翌朝、いつもより早起きをして両親と食事を取った。お母様の聖獣ジロウもいて楽しい家族での食事。その食事が始まって1週間経つ頃。
「そうだわ、マリーナ。王都まで、気をつけて来るのですよ」
「今日はマリーナを悪くいう輩もいる。そんな輩は気にしなくていい、嫌だったらすぐに帰りなさい」
「え? 私を悪く言う人? ……あっ、今日はデリオン殿下の誕生会の日(しまった忘れていた)……わかりました、お父様、お母様」
毎日が楽しくて――誕生会のことを忘れていた。
でもよかった、髪型とドレスはメイドのパレットと選んである、それを身に着けていけばいい。
馬車で王城に向かうお父様と、ジロウに乗り飛んで行くお母様を見送った。
「さて誕生会は午後からか、しっかり準備しないとね!」
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