第6話

 目が覚めると私はベッドに寝ていた。


「イテテ――」


 頬のヤケドはあの光では治らなかったらしい、だとしたら? カルロのヤケドも? 私はいても立ってもいられず、ベッドを抜け出しカルロの元へ走った。


 厨房にいるのかと覗いたが誰もいない、マサさんとトモさんいないなんて……もしかしてカルロのケガは酷いの?


「カルロ――何処にいるのよ」

「マリーナお嬢様?」


 彼はいつもの様に庭のベンチで本を読んでいた。


「動いても平気なの? ヤケドは?」

「あれは、お嬢様が治してくれたでしょう?」


 あの光は夢じゃなかった、でも私の頬のヤケドは治っていない。カルロは嘘を言っている? 彼ならありうるかもしれない――だって、自分のケガより私を心配したもの!


「カルロ、服を脱いで!」

「え、ええ?」

「早く、本当に治ったのか見せなさい!」


 ベンチに座るカルロの服を引っ張った。あまりにも必死すぎる私の表情と態度を見て、笑ってカルロはヤケドを負った背中を見せてくれた。


「ほんとうだ、治ってる」


 カルロの背中はキレイに治っていた。ソッと触るとくすぐったいのか、カルロは「おやめください」と笑った。


「よかった、本当によかった。カルロ、ごめんね――私のせいで、ごめんなさい」


「そうですね、もう2度と厨房に1人で入るなんて、しないでください。俺のケガはキレイに治りましたが……マリーナお嬢様の頬のケガは治っていないのですから」


 眉をひそめて、カルロは頬のヤケドに優しく触れた。


「うん、1人じゃ入らない」


「約束ですよ。あ、旦那様と奥様に報告が言っているので……覚悟してください」


「え、お父様とお母様に!」


 ――完璧に怒られる。


 



 夕方、屋敷に帰られたお母様にカルロと執務室へと呼ばれた。お母様は黒いマントをつけたまま、執務机に座っていた。その隣には前に見たドーベルマンに似た犬もいた。


「失礼します、お母様」

「失礼します、奥様」


「そこに腰掛けなさい」


「「はい」」


 入ってすぐ、部屋の温度が低いことに気付いた。まさか氷属性のお母様の魔法? ああ、お母様が怒っていらっしゃるのだとすぐに分かった。


「ごめんなさい、お母様」


「謝るのは後にしなさい。所で、マリーナ。あなた勝手に厨房に入って、コンロを触ったってほんと?」


「はい、触りました」

「そう、その頬のヤケドはその時にできたのね」


「はい」


 お母様は頬のヤケドを見て「ふうっ」と、ため息を吐いた。その様子を見ていたドーベルマンの犬は"ククッ"っと笑い《お嬢が悪い》と低くいい声で話した。


 ――ワンちゃんの言う通り。


「そうです、全て私が悪い! そこのワンちゃんが言う様にお母様私が悪いのです――カルロはそんな私を庇い大ヤケドを負いました。私は、とんでもないことをいたしました……」


 ポロポロ涙が流れる。あのとき光で彼のヤケドが治らなければ、一歩間違えればカルロは大ヤケドで――



「うわぁ――――ん!」



「マリーナ?」

「マリーナお嬢様」


《おいおい》


 私は大泣きした。

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