第5話

「イヤァ――! ごめんなさい、ごめんなさい……カルロ! しっかりして」


 この惨劇は、私の浅はかな考えが引き起こした。

 私を労るように、力のない手で私の頬を撫でる、カルロの大きな手のひら。


「グッ……マリーナお嬢様にケガがなくてよかった……です」


「それはカルロが守ってくれたから――全て、私のせい!!」


 涙ながら叫んだ――誰か助けてと。その声は誰かに届いたのかな? 私の体から光が溢れてカルロを包んだのだ。


 その光は彼が負ったヤケドをキレイに治した。




 +




 この一年で何か覚えないと、まずはじめに魔石(魔結石)見たさに昼食後、こっそりと誰もいない厨房へと潜入をした。


(見た目は使っていた、家のキッチンが古くなった感じ?)


 ビンテージの食器棚、コンロが2つとオーブンもあった、流し台はないから外の井戸水で洗うのかな? コンロの摘みを回せば『簡単に火が出る』それを想像していたのだけど――摘みが見当たらなかった。


「どうやって火をつけるのかな?」


 コンロの上を触った途端、真っ赤な魔方陣が『ブワァーン』と音を出して浮かび上がり。私の身長の倍もある、炎が目の前で燃えあがり私に襲いかかる。


「きゃあ――!!」


「マリーナお嬢様!」 


 庭で休憩をしていたカルロが、私の悲鳴を聞きすぐに厨房に飛び込み、炎から私を身をていして守る。


「……グッ」


 小さく声をあげたカルロは、素早くコンロの炎を消し止めて、自分ではなく私を心配をした。


「マリーナお嬢様、大丈夫ですか?」


 私は震えながら頷く。


「――良かった」 


「カ、カルロは? カルロは大丈夫なの? 怪我はしていないの?」


「俺は大丈夫ですよ。お嬢様」


 震える私に笑顔を向けたのは、カルロの嘘だった。




 頬に小さなヤケドを負った私と、大丈夫だと言っていたカルロは服が破け、背中に大きな火傷の傷ができていた。カルロは火傷の傷に眉をひそめた。


「いゃぁぁーーっ誰がきて!」


 厨房で叫んだが誰も来ない。カルロの両親は近くの街まで買い出し、メイド達は離れた洗い場で洗濯をしていたのだ。


「カルロ、ごめん、ごめんなさい」


「大丈夫です、泣かないでお嬢様……」


 気を失うまで私の心配をしたカルロ、そんなカルロを抱きしめて「誰か助けて」と私は泣くしかなかった。


「誰かぁ、カルロを助けてぇ!!」


 その声に反応して私の体は金色に光り、カルロを包み込んだ。


 ――え、え? 何が起きているの?


 その、カルロを包んでいた光はキラキラ光り消えていき。背中に酷いヤケドを負った、カルロのヤケドが治っていた。


「……よかった」


 ホッとしたからか、私の体は力が抜けていった。

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