第22話 翼を探せ!
次の日の昼過ぎに、マキナさんを除く、ウィッチ・パーティのメンバーが、バイパス近くのファミレスに集まることになった。
買い物客や、暇を持て余した学生たちが集まって、店内は大変混んでいる。賑やかな音のおかげで周りに会話は聞こえそうにない。魅羅さんだけまだ来ていなかったけど、私たちは打ち合わせを始めた。
私から事情を聞いた千秋さんは、ため息まじりに口を開いた。
「まいったわ。襲われたのは翼ちゃんだけど、結局刺しちゃったのは、あの子でしょ」
「どう考えても正当防衛でしょ」
眠そうに目をこすりながら、エリカさんはぶっきら棒に返した。それに対して、千秋さんはかぶりを振る。
「やり過ぎよ。魅羅が押さえこんでいたんだから、刺す必要はなかった」
「あーもう、めんどくさいなあ。悪いのは男のほうじゃん」
エリカさんは苛立たしげに髪の毛をガリガリと掻く。
「あの、翼さんの自宅には誰か行ってるんでしょうか? 戻ってるかも」
とりあえず言ってみたけど、案の定、千秋さんはかぶりを振った。
「今朝、家の情報を知ってるマキナさんが、警察と一緒に訪ねてみたそうよ。だけど、いなかったって。相手が誰であろうと人を刺したんだもの、どこかに隠れてるんだと思う」
「じゃあ、どうすれば……」
「マキナさんは、彼女に任せろ、って」
千秋さんが顔を向けて示したほうから、ちょうど魅羅さんがやって来た。
彼女は、メンバーの中で一番あか抜けた格好をしている。ほどよく散りばめられたアクセサリに、黄色を基調とした明るい服装。外は暑いので、ヘソ出しのホットパンツスタイルだ。年齢は二〇代後半のはずだけど、現役高校生の私よりもずっと女子高校生っぽいファッションをしている。小柄な体と、幼い顔立ちなので、それでもよく似合ってる。
「ごめんね、遅くなって。さっきまで警察で話しとったんよ」
「来て早々で悪いけど、あなたにお願いしたいことがあるの」
「ええよ。ちーちゃんの頼みなら聞くよ」
「翼ちゃんの件、さすがにこのまま放っておくわけにはいかない」
千秋さんが言うには、刺された男は病院で治療を受けているが、重傷ではないので、早いうちに事情聴取が可能な状態になる。魅羅さんの証言もあるから、まったくの嘘はつけないにしても、男は、翼さんが不在なのをいいことに、彼女に不利な発言をすると思う。
だから、翼さんのためにも、彼女を早急に見つけ出す必要がある。
「どこにおるのかわからない翼ちゃんを、一刻も早く見つけろ、ゆうことやね」
「こういうのは、あなたが向いていると思うから」
「ほやけど、うちだけではしんどいわね。なっちゃんも借りてええ?」
「なっちゃんは……あまり今回の件には関わらせたくない」
「でも、しばらくお店には出さんほうがええと思うよ。店の周辺は警察が張っとるかもしれんから、へたすると、高校生のなっちゃんが通ってることまでバレるかも」
「だったらずっと家にいてもらったほうが……」
「それはなっちゃんがかわいそうやって。せっかく本人も望んで入ってきとるんやし、多少のリスクはあっても、パーティの仕事を体験させるのが筋やと思うよ」
「わかった。そうしたら、あとはなっちゃん次第だけど、どう?」
私としては文句はないので、首を縦に振った。
ただ、気になることがある。
「翼さんを見つけたとして……その後、どうするつもりですか?」
「警察に引き渡して、あとは向こうに任せるわ。私たちは司法関係者でもなければ、探偵でもないもの。ただ、うちの店のキャストが起こした事件なんだから、私たちができる範囲で、警察に協力する。それだけの話よ」
打ち合わせは終わりとなった。
とにかく私にできることは、しばらくお店には行かず、魅羅さんから連絡があり次第手伝いに行くことだけだった。
だけど、事態は、すでに大変な方向へと動き出していた。
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