第33話 亮殺害犯人

 

 ここで1つ分かったことがある。

 沙織の父は直樹だと言われていたが、父亮の兄茂の子である事が確定された。

 

 一体どういう事?


「両親の血液型に対して子供の血液型が合わない?」

 1989年10月に誕生した沙織の事で担当医に食い下がった茂。


 それは…1990年9月の事だ。「両親のいずれかがAB型の場合O型の子どもは生まれることはない」といわれているが、肺炎で入院した沙織の血液型がO型と記載されていた事にいら立ちを隠せない茂。


 茂がAB型なのでO型の子どもは生まれることはない筈なのに、沙織はO型だった。怒りに任せて担当医に食い下がったが、それがきっかけでDNA鑑定を依頼する事ととなった。すると茂の子供では無いとの結論に至った。だが、1990年頃のDNA鑑定は正確性に掛けていた。


 一歳未満の乳児の場合、成人に比べてその抗体の数が1/3程度しかない為、一歳未満の幼児は血液型の正しい判定が難しい為、その後大人になってから、健康診断などで「実は別の血液型だった」ということも珍しくない。


 

 一方の沙織の両親直樹夫婦は何故改めてDNA鑑定を行ったのか?

 実は…直樹夫婦には妹蘭が誕生していた。だが、姉の沙織は直樹ではなく茂に瓜二つとなっていた。それに不信感を抱いた直樹は確実に自分の娘に跡を継がせたい。当然妹は紛れもなく直樹の娘である。

 

 こうして沙織15歳の時に改めてDNA鑑定が行われた。すると直樹の子供ではない事が確定した。


     ★☆


 1977年5月某日早朝名古屋市の公園や民家の敷地内で見付かったバラバラ遺体神崎亮殺害犯は一体誰なのか?


 それではもう一度事件の概要を詳しく説明して置こう。

 5月某日早朝名古屋市熱田区の公園内で、人間の頭部らしきものが清掃員によって発見された。その遺体の一部は、のこぎりで切断された男性のバラバラ遺体だった。

 何とも惨い事に、発見された場所は転々としていて、攪乱させる為なのか、頭部を名古屋市熱田区の公園に、上半身は熱田区の公園の森の路上に、下半身は名古屋市金山の民家の敷地に、左腕と右手首はミキサーで砕いて海に流したようだ。

 

 

 ベテラン刑事寅さんと新米刑事田代が今日も犯人の手がかりを血眼になって追っている。すると…重要な手掛かりを得ることが出来た。


 先ずは遺体が発見された熱田区の、ありとあらゆる住人に裏を取った結果スナック「スワン」の従業員から証言を得ることが出来た。その女は名古屋市にある古びたアパ-トの住人で30過ぎの女だった。


「5月某日の朝方3時頃だと思います。スナックが深夜2時に終わり帰宅した時に、隣りの部屋から”ドスン” ”ガタン”と音がしたと思うと……今度はうめき声が微かに聞こえて、暫くすると……チェンソ-のような音が聞こえた」という証言だ。


 さらに詳しく捜査を進めると同じく5月某日の朝5時頃新聞配達員が、隣のマンションの新聞受けに新聞を配っていると、黒い車カロ-ラにキャリーバックを押し込む30代前半の男性を見たとの情報を得ることが出来た。確かにアパ-トの住人の証言で、スナック勤務の女の隣に住むその男は、黒のカロ-ラに乗っていた事が分かった。



 ”トントン“ ”トントン”

 すると中から目付きの鋭い30代前半くらいの男がにょっきり顔を出した。

「警察の者だが、5月某日発見されたバラバラ遺体神崎亮殺害事件について調べているが、近所の住人の証言で、バラバラ遺体が発見された日の深夜この部屋から異様なうめき声と、何かを切り刻むチェンソ-のような音がしたと聞いたもので……詳しい話を聞かせて貰いたい」


 するとその男が咄嗟にドアを閉めようとした。だが、隙を与えず足をドアに挟んだので閉める事は出来ない。すると今度は部屋に一目散に逃げ込みベランダ伝いに逃げ出した。刑事2人は追って、追って、やっとの事で挟み撃ちにして捕まえた。


 こうして取り調べが始まった。

 検察官が、警察が提出した捜査書類とともに容疑者の取調べを始めた。


「先ず、あの日の夜から朝にかけてのあなたの行動を聞かせて下さい」


「……僕は……あの日……女の所に行っていて、家にはおりませんでした」


「その話は担当刑事から聞いたが、確認の為その女に追及したところ『一緒にいた』と徹底的にしらを切り通すので『偽証罪で捕まっても良いのか?』と、問い質したら口車を合わせて欲しいと頼まれ、致し方なく噓の証言をしたと泣きながら証言した。いつまでも噓が通用すると思ったら大間違いだ。あの日の夜から朝までの行動を詳しく話して貰おう。お前さんが、稲盛組の組員川田だって事は調べが付いている」


「ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭……実は…ウウウッ……頼まれたのです。その相手は「ネグリジェサロン」時代の知り合いで、名前は西口涼子と言っていましたが、こんな水商売の世界の事、多分偽名だと思います。その時僕は、その店のチーフとして働いておりました。その頼みというのは、夫の暴力が酷いので殺して欲しいと言う内容でした。犯行がバレない様にする為に、遺体の一部をわざと人目につきやすい場所へ晒すことによって、異常性を演出して欲しいと言うので、バラバラにして転々と人目に付きやすい場所に捨てたのですウウウッ(´;ω;`)ウゥゥ …」


「その女というのは……この女じゃないか?」

 そう言って検察官が提示したのは神崎美枝子の写真だった。


「嗚呼……そう言えば……この女です。すっかり上品な奥様風ですが、この顔……間違いありません」


     ★☆


「オイ!神崎美恵子、やっぱり貴様の犯行だったのだな。どうして大恋愛の末結婚した夫を殺害したんだ言って見ろ!」


「ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭夫の暴力に堪り兼ねて……ウウウッ( ノД`)シクシク…仕方なく殺害しましたワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」


 マンションの住人の証言や息子直樹の証言などから同情の声も圧倒的だったが、そして…情状酌量の声も上がったが、判決は次の様なものだった。


 夫を殺害して殺人罪に問われた美枝子だったが、名古屋地裁は懲役5年を言い渡した。

 日常的に暴力を振るわれていた事は誠に気の毒だが、ハッキリとした隠蔽工作が分かった以上、バラバラ遺体殺人事件は異常者の犯行に見せ掛けた事件を隠蔽する目的であり、世間に大きな不安と恐怖を与えた。情状酌量の余地なしとの判決を受けた。



 ※ネグリジェサロン:おさわり専門の業態に、(フェラチオ)サービスを取り入れた風俗店。



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